「Hounds of Love= 邦題 : 愛のかたち」は異才ケイト・ブッシュの1985年の五枚目のアルバムです。
前作1982年リリースの「ザ・ドリーミング」はケイト・ブッシュが2年というかなり時間をかけて気合いを入れて作ったものだったのですが、売り上げが伸びず非商業的で実験的な作品と評されていました。
彼女のコメントとして
「私が耳にしたのは主に『非商業的』というレッテルでした。マスコミやレコード会社がつけたレッテルです。でも、非商業的なレコードがいきなりチャート3位にランクインするなんて、皮肉なことだと思います。」
— ケイト・ブッシュ (1984)
要するに「全英アルバムチャートで3位まで行ったのに『非商業的=売れてない』なんて言ってる批評家ってなんかおかしくね?」ということです。
ただ三枚目の「ネヴァー・フォー・エバー」が全英1位を取っているので、次にリリースした「ザ・ドリーミング」もその余波で割と自然に、ある程度は売れるものです。
昔から感じていることがあります。
イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」の次の「ザ・ロング・ラン」とかスティーヴ・ウインウッドの「バック・イン・ザ・ハイ・ライフ」の後の「ロール・ウィズ・イット」などなどがリリースされた時のことです。
期待値が上がりきっているため「なんか内容の割に売れすぎ、これ絶対前作を超えてないでしょ」なんて感じることがままありました。
(もちろん基本好きなバンドですのでそんなに悪い内容とは思いまませんが)
ケイト・ブッシュに戻りまして、その問題作「ザ・ドリーミング」の後の「ハウンズ・オブ・ラヴ」はまた桁違いのものになります。
イギリスではリリースされるとすぐにマドンナの「ライク・ア・ヴァージン」を蹴落として1位まで駆け上がります。
リードシングルとしてリリースされた「Runnning Up That Hill = 邦題 : 神秘の丘」は全英シングルチャートで3位まで上がり、アルバムに勢いを付けることに成功しました。
アメリカでもケイトにしては唯一トップ40に入るヒットとなりました。
最初、ケイトは「神秘の丘」を「A Deal with God」というタイトルにしようと思っていましたがレコード会社が「それ、デリケートなタイトルすぎ」と難色を示したそうです。
確かにこの時代は神と対等な感じのタイトルは、信心深い欧米の人たちから反感を買いそうです。
今では立派にサブタイトルとなっています。
この「神秘の丘」のパワーはすごいものがあり、時代を超えてたびたび復活することになりました。
1985年のリリース時のみならず、その後2012年にはロンドン・オリンピックの閉会式で使用され再度チャートの6位まで上昇することになります。
さらに2022年の5月、Netflicksのドラマ「ストレンジャー・シングス」のシーズン4で使用されると、イギリスとアメリカでSpotifiでストリーミング再生が最も再生された曲となりました。
イギリスでは「嵐が丘」以来2曲目のNo1ヒットとなったのでした。
彼女の音楽はいかにタイムレスなものであるかを象徴しているようです。
そう考えれば攻めたタイトルでなくて良かったのかもしれません。
今回のアルバムのレコーディングは今までと違いました。
前作でスタジオを長期間抑えて費用がかさんだこともあり、今回は自宅近くにプライベートスタジオを建設して自分のペースで制作できる環境を作ったのです。
1983年の夏、スタジオにLinnDrum(リンドラム : プリンスなどもメインで使用していた有名なドラム・マシン)とFairlight CMI(フェアライトCMI : デジタルシンセサイザー、サンプラー、DAW)で基礎的な部分を作り始めます。
11月にはいくつかの最終バージョンを24トラックテープレコーダーに転送しました。こう書くといかにも1980年代っぽい感じがします。
PCコントロールのプロ・ツールズなどが出現する前の話です。
合わせて1984年の春にアイルランドで行われたレコーディングセッションを追加して、アルバムのオーバーダビングとミキシングに1年間を費やし、1985年の6月に完成することができました。
個人的にはこのオタク的な作業を延々、嬉々として楽しんでいる完璧主義のケイト・ブッシュが目に浮かぶようです。
アルバムは2つの組曲として構成されており、LPレコードでいうところのA面はトラック1からトラック5までで「Hounds of Love」とし、B面はトラック6から12で「The Nineth Wave」と副題のついた組曲となっています。
リリース当時はイギリスでは概ね好意的であったものの賛否両論に真っ二つに分かれました。
(うん、確かに産業ロックが吹き荒れていたアメリカで受ける音楽とは違うと思います)
イギリスとアメリカにおける評価は次のようなものでした。
<イギリス>
「ドラマチックで感動的、そして奔放で恥じらいのない美しいロマンティック」
ーロニー・ランドール(Sounds誌ジャーナリスト)ー
「大成功であり「ケイトが前作で失った地位を取り戻した」
ーロビン・スミス(レコード・ミラー誌)ー
「『Hounds of Love 』は「『The Dreaming 』で示されたスキルの明らかな進歩」でありブッシュが10代でEMIと契約したことで、同社の企業イメージに染まってしまったという考えを軽蔑し、むしろシステムを自分の目的のために利用できたのだと言える。私たちのケイトは天才で、この国が生んだ最も稀有なソロアーティストです。
彼女は懐疑論者をも自分の曲に合わせて踊らせるのです。」
ージェーン・ソラナス(NME誌)ー
ブッシュは「情熱を犠牲にすることなくコントロールできることを学んだ」ものの、「彼女を圧倒する過度に凝ったアレンジメントがいくつかある」ただし、ナインス・ウェーブ組曲は「混乱しすぎていて、演奏があまりにも骨が折れ、ぎこちないため、完全な作品として真の重みを持つことができない」
ーコリン・アーウィン(メロディ・メイカー)ー
<一方アメリカでは>
「クラシック、オペラ、部族音楽、ひねりの効いたポップスタイルの痕跡を残しながら、ケイトは音楽構造や内面表現の境界を気にしない音楽を作り出している」
「彼女の折衷主義は母国では歓迎され評価されているが、ここでは彼女の才能は無視されている。これは、冒険的で生まれつき演劇的なアーティストにとって本当に残念な状況だ」
ースティーヴ・マッテオ(Spin誌)ー
「やや気取った、計算された女性アートロック」
「ケイト・ブッシュは楽器のテクスチャーの真の達人になった」
ージョン・ロックウェル(ニューヨーク・タイムズ紙)ー
「『Hounds of Love 』は目を見張るほど素晴らしいが、同時に退屈でもある」
「オーケストレーションは技術の限界まで膨らんでいる一方で、彼女はしばしば曲をエキゾチックな要素で飾りすぎている …
ブッシュが並外れた才能を持っていることは疑いようもないが、ロック界のもう一人の永遠の子供であるジョナサン・リッチマンと同様に、子供は見ていればよく、口出しすべきではないと考える人々には、彼女のビジョンは愚かに映るだろう」
ーロブ・タネンバウム(音楽評論家)ー
その後の評価の変遷です。
2014年になると
Hounds of Love』をブッシュの「認められた傑作 …新奇な時代の冷たい楽器編成で作られたプログレッシブ・ポップの仮面劇」
ーニック・コールマン(インデペンデント紙に掲載された記事)ー
「アート・ポップの古典」
ーSpin誌ー
このアルバムはシンセポップとプログレッシブ・ロックから影響を受けているが、どちらのスタイルとも完全に異なっている」
ーバリー・ウォルターズ(音楽誌ピッチフォーク)ー
2025年
「40年後、『Hounds of Love 』の真の力は、そのサウンドを使って、私たちの夢の世界がどんな音なのかを神経学的に映像化しようという誘いにある。」
ーチャールズ・スウィッツァー(文化批評誌ポップマターズ)ー
評価
音楽雑誌Qのアンケート
1998年
史上最高のアルバム48位
2000年
「史上最高の英国アルバム100選」で20位
2002年
「女性アーティストによる史上最高のアルバム」で3位
2006年
「80年代のベストアルバム40選」で4位
2006年 NME誌
史上最高の英国アルバム41位
2008年、アトランタ・ジャーナル・コンスティテューション紙
「1978年から1988年の間にリリースされたアルバムの中で、時代を超えて影響力があり、今日でも楽しめるアルバムとして、このアルバムをリストアップする際に考慮に入れるべきだ。」
2012年 スラント・マガジン
「1980年代のベストアルバム」リストでこのアルバムを10位
2013年 NME誌
「史上最高のアルバム500枚」リストで「Hounds of Love」48位
2018年 全米公共ラジオ(NPR)の一般投票
女性アーティストによる史上最高のアルバム150枚のリストで4位
2018年 ピッチフォーク誌
「1980年代のベストアルバム200枚」リストでこのアルバムを4位
2020年 ローリング・ストーン誌
「史上最高のアルバム500枚」リストでHounds of Loveを68位
2024年 Apple Music
「 Apple Music 100ベストアルバム」リストで50位。
これを見てわかる通り、年々忘れ去られるどころか知名度と共にに絶大な評価となってきています。
ケイト・ブッシュは元々ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアに見出されたこともあり、プログレッシヴ・ロックの視点でも語られます。
しかし、アルバムの構成はプログレ的とはいえ女性ならではの視点での内容が多く、特にこのアルバムは「ポスト・プログレッシヴ・ロック」と言われようになりました。
考えてみればハードロック、メタル系と違って女性のプログレッシヴ・ロック・ミュージシャンと言われてもそう簡単に思い浮かぶ人がいません。
そういう意味では「プログレッシヴ・ロック」とは男向けの音楽とも言えるかもしれませんね。
素直に言っておきますと、実は発売当時は買っては見たもののそんなにいいとは思わなかったのです。
でもケイト・ブッシュは気になる存在で、必ずアルバムがリリースされると買っていました。
音楽以前に変わっていく存在自体が気になる人なのでした。
ケイト・ブッシュのこのアルバムは、デビュー作と2作目は普通にポップな感じで聴けるのですが、サードアルバム以降はある意味集中力が必要となります。
そこで初めて彼女ならではの深淵なる世界が味わえるのです。
それは他の誰にもないセンスを持って時代にも業界にも迎合せず、ひたすら信じる己の道を貫き通した芸術家だけが表現できる世界だと思います。
アルバム「ハウンズ・オブ・ラヴ」のご紹介です。
曲目
*参考までに「youtube」音源をリンクさせていただきます。
1, Running Up that Hill (A Deal with God) 神秘雨の丘
1992年、BBCラジオのリスナーの質問(多分)にケイト本人がこう答えています。以降もこの時のインタビューによる本人の解説です。
こちらから引用させていただきました。
「曲で何を伝えたいかというアイデアがあって、実際にデルにドラムパターンを書いてくれるよう頼んだら、彼はドラムマシンで素晴らしいパターンを書いてくれたんです。
それで、その上にフェアライトを重ねただけで、ドラムが曲の土台になって、それがかなり重要な役割を果たしました。
[…] 本当は、男と女は男と女だからお互いを理解できないんだ、と言いたかったんです。
もしお互いの役割を入れ替えることができたら、しばらくの間お互いの立場に立つことができたら、きっと二人ともすごく驚くと思うんです!そして、それはより深い理解につながると思うんです。
そして、それができる唯一の方法は…ほら、悪魔と取引することだと思ったんです。
それで、「いや、神様と取引したらどうだろう!」と思ったんです。
だって、ある意味、神様に取引を頼むという考えの方がずっと力強いですからね。
ほら、私にとっては今でも「Deal With God」というタイトルなんです。
しかし、このタイトルを維持すれば、宗教的な国では上演されないだろうと言われました。
イタリアでも、フランスでも、オーストラリアでも上演されないだろう、
アイルランドでも上演されないだろう、そしてタイトルに「神」という言葉が入っているというだけで、一般的に上演禁止になるかもしれない、と」
リリースから37年後、ブッシュは自身のウェブサイトへの投稿でこの曲が再び注目を集めていることに触れ、次のように書いています。
「Netflixで、大人気でスリリングな新シリーズ『ストレンジャー・シングス』の第1部が 配信開始されたことをご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
劇中で使用されている楽曲「Running Up That Hill」は、番組を愛する若いファンたちによって新たな命を吹き込まれています。私もこの番組が大好きです!そのおかげで、「Running Up That Hill」は世界中でチャートインし、イギリスのチャートでは8位にランクインしました。
本当にワクワクしますね!この曲を応援してくださった皆様、本当にありがとうございます。
7月に配信されるシリーズの続きが待ち遠しいです。
ケイトより。
(実はわたくし、まだ見てませんが、Netflicksで確認しようと思います)
2, Hounds of Love 愛のかたち
<ケイト・ブッシュのコメント>
「これもまた自宅で書いた曲で、初期の作品です。
この曲は、私たちのお気に入りの古い白黒映画『ナイト・オブ・ザ・デーモン』に影響を受けています。
この映画は、木々に現れる悪魔の話です。
曲の冒頭の「木々の中にいる、やってくる」という歌詞は、実はその映画から引用したものです。
歌っているのは、モーリス・デーモンという人です」
3, The Big Sky 大空
<ケイト・ブッシュのコメント>
「ビッグ・スカイ」の作曲は本当に大変でした。
最終的にどんな形にしたいかは分かっていたのですが、なかなかそこにたどり着けなかったんです!3つの異なるバージョンを作り、最終的には今の形になったのですが、本当に良かったと思っています。
【曲が流れる】
「それはまさに…ほら、子供の頃によくやっていたことなんだけど、どこかに出かけて、座って空を見上げるんです。
雲をじっと見ていると、いろいろな形に見えてきて、恐竜や城が見えることもあります。
このアルバムを作っていた頃は田舎に住んでいて、キーボードとか機材は谷を見下ろす部屋に置いてあって、丘を登ってこちらに向かってくる雲を眺めていたんです。
このアルバムには天候に関する要素がたくさん入っています。
田舎は当時大きなインスピレーション源だったし、常に変化していて、都会とは全く違う視点なんだ。都会では建物の上の空がほとんど見えないこともありますからね。」
「このアルバムに関しては、ほとんどの曲がピアノではなくフェアライトやシンセサイザーで作曲されたと言えるでしょう。
これは、以前のアルバムで全ての曲をピアノで作曲していたこととは大きく異なる点です。
音には独特の個性があります。音を聴くと、その音自体に独自の性質があり、悲しい音だったり、楽しい音だったり、あるいは…といった感じになります。
そして、その音はすぐにイメージを呼び起こし、それが曲作りのアイデアにつながることもあります。
ですから、インスピレーションを得て方向性を見つけるためには、あらゆる要素が重要になるのです。
そして、今の時代、音は人々にとってまさに金塊のようなものだと思います。良い音は芸術的に非常に価値があるのです。[笑]
シンセサイザーの音は、時に冷たさを生み出すことが多いのですが、曲が孤独だったり、悲しかったり、暗かったりする場合、機械的な冷たさ、つまり非常に独特な冷たさが求められることがあります。
一方、アコースティック楽器を使うと、通常は非常に温かみのある人間的な存在感、親密で、本当にそこに存在する、息づくような音が得られます。
それは、無機質で冷たい機械的な音ではありません。
そして、伝えたい内容に応じて、どちらも非常に使い分けられると私は感じています」
4, Mother Stands for Comfort 母親
<ケイト・ブッシュのコメント>
「この曲を歌っている人物像は、ある意味でとても無感情なんです。
シンセサイザーや機械の冷たい響きが、この曲にはぴったりでした。
愛には様々な形がありますが、この曲は母親の愛について歌っています。
この場合、母親は殺人犯の母親で、息子を何からでも守ろうとする覚悟を持っています。
ある意味、母親が息子を守っているのと同じくらい、息子も母親を利用しているとも言えるでしょう。
ちょっと奇妙な話ですよね?」(笑)
5, Cloudbusting クラウドバスティング
<ケイト・ブッシュのコメント>
「これは私にとってとても特別なものでした。
なぜなら、何年も前に見つけた本からインスピレーションを得たからです。
よく通っていた書店に入ったとき、この本を見つけました。タイトルが気に入って、「夢の本」と書いてあったので、棚から手に取りました。
それまでそんなことをしたことがなかったので、知らない本でした。それはピーター・ライヒという人の美しい物語でした。
すべては彼の父親に対する見方についてですが、子供の目を通して描かれているので、彼の子供時代と、彼が父親を信じられないほど魔法のような存在として見ていたことについて書かれています。
彼の父親はヴィルヘルム・ライヒで、非常に尊敬されていた精神分析医だったと思いますが、彼の仕事は非常に物議を醸し、最終的に逮捕され、獄中で亡くなりました。
しかし、この本で取り上げられていることの1つは、彼が父親と一緒に雲を飛ばしに行ったことです。
彼の父親は、空に向けると雲を散らしたり集めたりできる機械を持っていて、雲を集めると雨が降るのです。
そして、この機械はオルゴンエネルギーに基づいており、それはライヒの教えの根幹の一つです。
そして、この本は本当に素晴らしい。とても悲しい物語ですが、同時に子供時代特有の、美しく幸せな無邪気さも感じられます。
物語の中で主人公が成長するにつれて、彼が子供時代にしがみついているのが伝わってきて、どんどん悲しくなっていくのです。
この本は私に大きな感動を与え、この歌はまさにその物語を伝えようとしているのです。」
【曲が流れる】
「あれは10小節くらいの間に完全に崩れ落ちました。ちゃんと終わらなかったから、すべてが崩れ始めたんです。
ドラマーが止まって、弦がただ揺れ動いて喋り出すような感じだった。
終わりが必要だと感じたんだけど、どうすればいいのか分からなかった。
それで、おとり作戦がいいんじゃないかと思って、蒸気機関車が減速する音で全体を覆い隠して、旅が終わるという感覚を出したんだ。
うまくいって、崩れ落ちた部分を隠して、ある意味でとても完成された感じになりました。
蒸気機関車の効果音を出すのにすごく苦労したから、色々な音を組み合わせて効果音を作ったんです。
デルが蒸気でしたよ。[笑]
フェアライトの汽笛で「プープー」って音を出したんです」
6, And Dream of Sheep 羊の夢
ここからLPレコードのB面、7曲からなる組曲「The Ninth Wave」が始まります。
ケイト・ブッシュによる解説です。
「一晩中水の中に一人でいる人のことを歌った曲です。
過去、現在、未来がやってきて、その人を眠らせないように、溺れないように、朝が来るまで眠らせないようにするのです」
この曲のバックはピアノとアコースティック・ギターのみで構成され海で遭難した語り手が登場します。
7, Under Ice 氷の下
主人公が見る夢を描いているそうです。
主人公は氷の上をスケートしています。
凍った川で、あたり一面真っ白。周りには誰もいないようで、主人公は一人ぼっち。
スケートをしながら氷を見下ろすと、その下で何かが動いているのが見えます。
氷の下を動く物体と一緒に滑っていくと、氷に亀裂が入りました。
その物体が亀裂の下を通り抜けると、水中で溺れている自分自身が見えてきます。
そしてその瞬間、主人公は目を覚まし、次の曲へと移るのです。
わたくし的にはこのシチュエーションはよく恐怖映画で出てくるやつだ。と思ってしまうのでした。
次の曲は、溺れそうになっている主人公を目覚めさせ、助けようとする友人や思い出について歌っています。
8, Waking the Witch 魔女
女性が徐々に凍りつき、酸素が尽きていく中で経験する幻覚を描いた3部作の最初の曲です。
3曲は過去、現在、未来というパターンに従っているようで、「Waking the Witch」は過去を表しているようです。
この曲は、 『ブラックバード・ポンドの魔女』という本を部分的に基にしており、主人公はセイラム魔女裁判のような魔女裁判と火刑を目撃します。
曲中の主人公は、検察官が自白を強要しようとする中、被告人として裁判を体験しているように見えました。
陪審員が評決を下す間も、彼女は無罪を主張し続けます。
曲の最後では、救助隊がヘリコプターから「波から出ろ、水から出ろ」と叫ぶ声が聞こえ、彼女の妄想が現実に突き抜けるのです。
9, Watching You Without Me ウォッチング・ユー・ウイズアウト・ミー
それは、意識を失った難破した女性の幽霊、あるいは精霊が、彼女の家に戻ってくる物語です。
誰も彼女を見ることも、話しかけることもできませんが、彼女はそう試みます。
人々は彼女を待ち、心配しますが、彼女は衰弱していくのでした。
10, Jig of Life ジグ・オブ・ライフ
3部作の3曲目で、女性が徐々に凍りつき、酸素が尽きていく中で経験する幻覚を描いています。
この3曲は過去、現在、未来というパターンに従っているようで、「Jig of Life」は未来を表しているそうです。
溺れている女性は、未来の自分自身と対面し、未来の自分自身は彼女に、二人の命を守るために戦うよう説得しようとします。
11, Hellow Earth こんにちわ地球
この歌は、溺れかけた女性の最後の力が尽きようとしている時に歌われています。
救助隊(「波から出ろ、水から出ろ」)と彼女自身の潜在意識(「殺人者、静寂の殺人者」)は依然として彼女に語りかけようとしますが、彼女にはそれらは遠くから聞こえる声としてしか聞こえません。
彼女は引きこもり、自分の体から切り離されたような感覚に陥り、自分自身のことさえ忘れてしまい、ただ地球だけを見て、眠りのことだけを考えているようです。
作品全体を通してグレゴリオ聖歌が演奏され、葬列のような雰囲気を醸し出しています。
でもケイト・ブッシュは「ナインス・ウェイブ」の登場人物は死なないと述べており、最後のトラック「ザ・モーニング・フォッグ」はそのことを裏付けています。
たとえ登場人物が死なないとしても、明らかに死の淵に立たされているようです。
12, The Morning Fog 朝靄の中で
この曲は「ナインス・ウェーブ」の最終章で、女性は臨死体験から生還し、意識を取り戻す。死の淵をさまよった彼女は、人生をより深く感謝し、共に生きる人々をより大切にすることを誓います。
ケイト・ブッシュは「ナインス・ウェイブ」の登場人物は死なないと明言していますが、多くのファン、リスナーは彼女は死ぬと感じます。
彼らにとって、この曲は輪廻転生、そして前世から受け継いだ教訓について歌っていると思うのです。
組曲終盤の「こんにちわ地球」とか「朝霧の中で」などタイトルを見ると一見とっても爽やかなイメージですが、とんでもございません。内容は真逆なんですね。
演奏
- ケイト・ブッシュ
ボーカル、フェアライト・シンセサイザー、ヤマハCS-80、アコースティックピアノ、キーボード - ケビン・マカレア
シンセサイザーシーケンス(Tr.8)、シンセサイザー(Tr.12) - アラン・マーフィー
ギター(Tr.1、3、8) - ジョン・ウィリアムズ
ギター(Tr.12) - ドナル・ラニー
ブズーキ(Tr.6, 10, 11)、ボドラン(Tr.10) - デル・パーマー
LinnDrumプログラミング、ベースギター(Tr.1、10、12)、手拍子(Tr.3)、バッキングボーカル(Tr.5)、Fairlightベース(8) - マーティン・グローバー
ベースギター (Tr.3) - エバーハルト・ウェーバー
コントラバス (Tr.4, 11) - ダニー・トンプソン
コントラバス (Tr.9) - スチュアート・エリオット
ドラム(Tr.1、2、4、5、9~11) - チャーリー・モーガン
ドラム(Tr.2、3、5、8、10)、手拍子(Tr.3) - モリス・パート
パーカッション (Tr.3) - Paddy Bush
バラライカ(Tr.1)、ディジュリドゥ(Tr.3)、バックコーラス (Tr.5)、ハーモニーコーラス (Tr.7)、フジャラ(Tr.12)、バイオリン (Tr.12) - ジョナサン・ウィリアムズ
チェロ (Tr.2) - ジョン・シーハン
ホイッスル(Tr.6、10)、フィドル(Tr.10) - リアム・オフリン
イリアン・パイプ(Tr.10、11) - マイケル・ケイメン
オーケストラ編曲 - ビル・ウィーラン
アイルランド風アレンジ - メディチ家の六重奏曲
弦楽(Tr.5) - デイブ・ローソン
ストリングスアレンジメント(Tr.5) - ブライアン・バス
バックボーカル(Tr.5)、ギター(Tr.11) - ジョン・カーダー・ブッシュ
バックコーラス(Tr.5)、ナレーション(Tr.10) - リチャード・ヒコックス・シンガーズ
合唱団 (Tr.11) - リチャード・ヒコックス
合唱指揮者 (Tr.11) - マイケル・バークレー
ボーカルアレンジ(Tr.11)
プロダクション
- ケイト・ブッシュ
プロデューサー - ブライアン・テンチ
エンジニア、ミキシング担当(Tr.1、3、5~12) - デル・パーマー
エンジニア - ヘイデン・ベンダル
エンジニア - ポール・ハーディマン
エンジニア - ナイジェル・ウォーカー
エンジニア - ジェームズ・ガスリー
エンジニア - ビル・サマービル=ラージ
ウィンドミル・レーン・スタジオのエンジニア - ピアース・ダン
アシスタントエンジニア - ジュリアン・メンデルゾーン
ミキシング (Tr.2, 4) - イアン・クーパー
カッティング・エンジニア - クリス・ブレア
デジタルリマスタリング
• • ジャケット写真
ケイトの兄であるジョン・カーダー・ブッシュが撮影し、ジャケットのデザインはビル・スミス・スタジオとケイト・ブッシュが担当した。
コメント