

2026年10月2日、ついにビートルズの新規リミックスシリーズ最新版が出ました。
オリジナルは1965年12月3日リリースの「ラバー・ソウル」です。
長いこと待ったかいがありました。
直近で言えば「アンソロジー・シリーズ」のリマスターがありましたが、やはりオリジナル・アルバム群の魅力には及びません。
よって2023年の「赤盤」「青盤」以来の快挙となります。
(私の中では最初のビートルズ体験でもあり、この二つはもうオリジナルです)
音楽遺産としてのビートルズは異常に価値が高いものがあります。
そして2017年「サージャント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」から始まるビートルズ・リミックスシリーズは今までのリマスターとは全く違う様相を見せています。
オリジナルのレコーディング時、1960年代ではまだできなかった、というかそもそもステレオサウンドの標準仕様というものが確立されていませんでした。
その1965年レコーディング当時の音源を、最新技術によって現在2026年の音楽と同じように体験できることを目的とリミックス、リマスターしたものです。
とは言ってもまんま今風にゴリゴリにエフェクト処理したりとか、ピッチを触ったりとかして無理くり今風に改変するのではありません。
ノイズをとってハイファイでリアルなサウンドにしたり、今の感覚では首を傾げるようなステレオ音源の定位を補正したりしたものとなっています。
今回はアルバムに先駆けて7月29日に「ミッシェル(テイク1)」がリリースされました。
聴くと妙に生々しいポールの歌声です。
これを聴いただけで今回のリミックス・リマスターの凄さがわかるというものです。
ここ数年のビートルズ後期のアルバムは、より緻密に本来の音を損ねることなく愛情を持ってリミックス、リマスターされた音になっていました。
今回はまた全曲が最新2026MIXで、赤盤の2023MIXとカブる曲も新たにリマスターされています。
またまた微妙に音の遠近感などの違いも楽しめるオタク仕様となっております。
一番の貢献は2021年に新たに蘇ったドキュメンタリー映画「ビートルズ : Get Back」から始まった技術によって、マスターテープにある各コーラスや楽器をセパレートする技術が格段に進歩しました。
それは MAL という技術です。
元はフィルムを修復するための技術でした。Machine Asisted Learnning の略です。
ついでに言っておくと、ビートルズのロードマネージャーであったマル・エヴァンスから関連つけられたということです。
さらにいうと、映画「2001年宇宙の旅」に登場するコンピューター、HAL 9000をもじったものでもあるそうです。
もっというと、その反乱を起こすコンピューター HAL は現存のコンピューターメーカーである IBM の一つ前のアルファベットを繋いだものと言われています。(もういいか)
この技術によって一つのトラックに重ねられた音さえも分離できるようです。
ということはかなり細かなところから再構築が可能となります。
ユニヴァーサル・ミュージック・ジャパンの発表は次のとおり
ザ・ビートルズの1965年発売アルバム『ラバー・ソウル』の拡張版スペシャル・エディションの発売が決定。プロデューサーのジャイルズ・マーティンとエンジニアのサム・オケルによるニュー・ミックスを収録した本作は、見事なニュー・ステレオ・ミックスおよびドルビーアトモス・ミックスに加え、オリジナルのモノラル・ミックス、オリジナルのキャピトル・USアルバム・ヴァージョンを収録。さらに、未発表のセッション録音やホーム・デモ、当時のダブルA面シングル『デイ・トリッパー / 恋を抱きしめよう』も追加収録。
『ラバー・ソウル』のすべての新フォーマットには、オリジナルの4トラック・マスターテープから直接抽出した、アルバムのニュー・ステレオ・ミックスが収録されている。ピーター・ジャクソンのウィングナット・フィルムズ・プロダクションに所属し、エミール・デ・ラ・レイが率いるサウンドチームが開発した最先端のデミキシング技術により、オリジナル録音の精神を忠実に保ちつつ、音源は驚くほど鮮明に際立っている。
ということです。

早速、2026リミックス聴いてみたところ、流石に期待を外すものではありませんでした。
やはり全体の音が生々しくなっています。違いはまずベースサウンドです。
このアルバムからポール・マッカートニーはレコーディングにおいて、リッケンバッカー4001というベースを使用し始めます。
ビートルズ解散後に作ったバンド、ウイングスではこれがトレードマークとなっていました。
これを使って全編ベースがやたらと大きいミックスなのに全く違和感が無い、という魔法のような天才ぶりを発揮していました。
それまで、ビートルズ初期から使用していたヘフナーのヴァイオリン・ベースはコンパクトで取り回しがいいのですが、ヴァイオリンタイプのボディではいかんせん様々な意味で限界があります。
この頃ポールが意識していたスタックスの(MGズの)ドナルド・ダック・ダンやモータウンのジェームス・ジェマーソンのような深く厚い低音を出すには、やはり両者が使っているようなフェンダー・プレシジョン・ベースみたいなサウンドが不可欠です。
リッケンバッカー4001はある意味もっと強力とも攻撃的とも言えるサウンドを持っていました。
リッケンのベースといえば、1970年代にプログレ・バンド、イエスのクリス・スクワイヤがリッケンバッカー1999(4001と同型)にラウンドワウンド弦を張ってあのイエスのとんでもないベースサウンドを作りました。
有名どころではカナダのバンド、ラッシュのゲディ・リーなども使用して一躍トップセールス商品となっていきます。
「ラバー・ソウル」ではいきなり「ドライヴ・マイ・カー」で、今までのベースとは一味違いまっせ感を出してます。
この音がなければ同セッションでシングルカットされたギターとベースのリフで引っ張っていく「デイ・トリッパー」なんて発想はなかったのでは、と思ってしまいます。
「ラバー・ソウル」は1965年の10月12日にスタジオに入り、翌月11月15日には最終的な政策、ミックスダウンが行われました。スタジオに入った時点では半分ほどしか曲ができていなかったそうです。
アルバムタイトルの「ラバー・ソウル」というのはソウル・ミュージックのソウルと靴底のソールを掛けたものです。
ジョン・レノンはポール・マッカートニーのアイデアで「イギリスの魂(ソウル)」を表していると語っています。
ポール・マッカートニーはアメリカ人のミュージシャンがミック・ジャガー(ローリング・ストーンズ)のミック・ジャガーのことを「プラスティック・ソウル」と言っていたのを聞いて思いる痛そうです。
リンゴ」・スターに至ってはアメリカのソウル・ミュージシャンと比較して「僕たちは白人で、彼らが持っているものを持っていない」ことを認めるためにアルバムをラバーソウルと名付けたと答えています。
ここでわかるのはローリング・ストーンズと同様にビートルズもブラック・ミュージックをとことん意識していたということです。
この時期はモータウンやスタックスといったソウルミュージックとボブ・ディランやザ・バーズなどにインスピレーションを得ていたようです。
このアルバムは前作「ヘルプ」から比べるとサウンド、詩の内容が大きく変わってきています。
「ヘルプ」までは何だかんだと独創性を持ちながらもアイドルとしても十分な要素を維持していました。
しかし幸か不幸か(?)アメリカでボブ・ディランと出会ってしまいます。
ディランは当たり前のようにビートルズの連中に(マリファナより強烈な)ドラッグを教えてしまいました。
ディランの影響は大きく、ジョンは「ヘルプ」でも「悲しみをぶっ飛ばせ」など、もろディランに影響されたような曲を書き始めます。
さらに幸か不幸か(?)ジョンがこの時期、前衛芸術家オノ・ヨーコとも出会ってしまいます・・・・・。
ということで「ラバー・ソウル」ではもう普通の愛の歌はありません。
アルバム・ジャケットはジョンの家の庭で写真家ロバート・フリーマンが撮影しちゃものです。
LPサイズに引き伸ばしているときに台紙が曲がって写真が歪んでしまいました。
しかしいつものアイドル風ショットに飽き飽きしていたメンバーが面白いから、これで行こうと言ってきまったそうです。
アルバムの制作は1965年の10月12日にスタジオに入り、翌月11月15日には最終的な政策、ミックスダウンが行われました。
スタジオに入った時点では半分ほどしか曲ができていなかったそうです。
しかもその期間中にバッキンガム宮殿でエリザベス女王からMBE勲章を授与されるなどのイベントもありました。
収録されている曲のほとんどは1965年8月のアメリカツアーの後に書かれています。
アメリカツアーの滞在中に有名なシェア・スタジアムのライブやニューヨークでボブ・ディランに、ロサンゼルスでエルヴィス・プレスリーにあったりしています。
しかもこの月に「ヘルプ」をリリースしていますが、さらに12月にもう一枚「ラバー・ソウル」をリリースするということになりました。
その間、4ヶ月という中でこの進化は奇跡です。
しかも粗製濫造で質を落とすどころか、より芸術的な高みに登っていくのでした。
サンフランシスコ・クロニクルの音楽評論家ラルフ・J・グリーソンが1966年2月の記事で
「これまでリリースされたアルバムの中で最も普遍的に魅力的なアルバムの一つ」であり、バンドの支持層を10代の若者だけでなく『あらゆる年齢、あらゆる人種、あらゆる性別、あらゆる社会的・経済的階層』にまで広げた」
と書いています。
ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンがこの「ラバー・ソウル」を聴いて衝撃を受け、「ペットサウンズ」に取りかかることになるのは有名な話です。

個人的な思い出を一つ
ビートルズに関しては後追い世代なのですが、高校生くらいの頃、イギリスのオリジナルトラックのアルバムを聴きながらこれはストーリーを持ったトータル・アルバムと信じていました。
ポール死亡説などに触れ、ビートルズには絶対裏の意味がある、といった厨二病の真っ最中だったのです。
私の中ではストーリーは次のとおりでした。
・ドライヴ・マイ・カー
免許をとって親父の車を借りた(多分ジョン)が早速女の子をナンパします。
・ノルウェーの森
うまくいって一晩をともにしますが、朝起きたらそこにもう彼女はいなくて
・ユー・ウオント・シー・ミー
街であっても無視されるようになります。
・ひとりぼっちのあいつ
結局オレは誰にも受け入れてもらえず、ひとりぼっちで生きていくしかないんだ、と落ち込み、それでも開き直ります。
・嘘つき女
悪態の一つもつきたくなるのでした。
・愛の言葉
今までの自分を反省して、自分勝手なことばかりではなくもっと心を込めて犠牲的精神で付き合ってみようとします。
・ミッシェル
こんなふうに告白してみるのでした。
などと物語は進んでいきます。
「ガール」でまた別の女性を好きになったりしますが、結局またフラれてしまいます。
「浮気娘」という悪態をつきながら、未練たらしく忘れられないのでした。
所詮、男の人生はこういうものです。(泣)
そう考えると、なかなか洒落た曲順でございますが、もちろんそんなことを唱える人は誰もいません。

アルバム「ラバー・ソウル」のご紹介です。

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。
1, Drive My Car ドライヴ・マイ・カー
今までとは音もメロディも全く違う感覚です。
ポールの書いた曲ですが、歌詞の面ではジョンがサポートし、サウンドはジョージがオーティス・レディングの「リスペクト」を参考にサポートしたそうです。
2, Norwegian Wood ノルウェーの森
「ノルウェー産の木材を使った家具」という意味です。
副題は彼女が黙っていきなりいなくなったことを指しているようです。
なんといってもジョージのシタールが今までと違う雰囲気を醸し出しています。
約半年後にローリング・ストーンズの「ペイント・イット・ブラック」でブライアン・ジョーンズがこれまた印象的にシタールを使います。
3, You Won’t See Me ユー・ウオント・シー・ミー
ポールによるとこの曲はモータウンのベーシスト、ジェームス・ジェマーソンを意識したもので、この曲のヴァースはフォー・トップスのヒット曲「イッツ・ア・セイム・オールド・ソング」のコード進行を拝借しているそうです。
個人的に大好きな曲で聴くたびに学生の頃、片思いの人を思いながら1日中この歌を口ずさんでたことを思い出します。
4, Nowhere Man ひとりぼっちのあいつ
個人的には何故かこの曲だけ、「ヘルプ」から続いているように感じてしまうのです。
実際には今までと違った新しい視点で恋愛ソングとは違うものになっています。
ここで聞かれるギターソロはジョージ・ハリソンのフェンダー・ストラトキャスターによるものです。
ここらの時期からエレクトリック・ギターといえばギブソン、フェンダーという2大巨頭の時代になったのでした。
5, Think for Yourself 嘘つき女
ジョージ・ハリソン作です。
通常のベースの数せてビービービービー、ビャービャービャーとファズをかけたベースが入れてあります。
ここにもディランの影響が出ていて、人を非難していることから「Positevily 4th Street =寂しき4番街」の影響という人もいます。
6, The Word 愛の言葉
ある意味ジョン・レノンらしい曲調です。
ビートルズのサイケデリック期が始まったという評価でした。
またイギリスの音楽評論家、イアン・マクドナルドはブラック・ミュージックからの影響としてウィルソン・ピケットの「イン・ザ・ミッドナイト・アワー」と「ジェームス・ブラウンの「パパズ・ガット・ア・ブランド・ニュー・バッグ」を指摘しています。
7, Michelle ミッシェル
その昔、私にはビートルズの中でも大嫌いなバラードが2つありました。
「アンド・アイ・ラヴ・ハー」とこの「ミッシェル」です。
両方ともポールの作です。アマアマで歌謡曲っぽいところがどうもイヤでした。
で、今はというと、歳とともにそういうこともなくなるものです。
8, What Goes On 消えた恋
息抜きのナンバーとも言えますが、どうもアルバムの中で浮いています。
同時期にリリースされた「ウイ・キャン・ワーク・イット・アウト/デイ・トリッパー」の世界とも全く違います。
割と単調なメロディはリンゴには向いておらず、リンゴ・スターの人気を落とすのに一役買っているのでは、と思ってしまうのでした。
救いはジョージ・ハリソンのアイドルだったチェット・アトキンス風にグレッチのギターを弾いていることです。
9, Girl ガール
ジョンの書いた名曲です。
ポールとジョージの「トゥ、トゥ、トゥ、トゥ・・・・」というコーラスはビーチ・ボーイズの「アーアーアー」や「ラ、ラ、ラ」とは違ったことをしたかったかららしい。
10, I’m Looking Through You 君は何処へ
ポール・マッカートニーはどんなに時間が無くてもこれくらいの曲はかける、と思わせるような天才です。
ギターのお音が印象的です。
11, In My Life イン・マイ・ライフ
何よりすごいのはジョン・レノンという人、20代でこの境地でした。
12, Wait ウエイト
ジョンとポールがお互いに作った曲をミックスしたらしいです。
ヴォーカルも入れ替わって良いアクセントになっています。
このナンバーはレコーディングの最終日に録音されたそうです。
きっと「もう1曲、足りないからなんとか二人でひねりだそうぜ」といいながらジョンとポールがなんとか契約期間内に終わらせたものだと思われます。
天才とはそういう逆境までプラスに作用させるものなんだ!、と素直に思います。
13, If I Needed Someone 恋をするなら
ジョージ・ハリソンの12弦ギターが印象的です。
バーズ・サウンドの逆輸入という感じです。
14, Run for Your Life 浮気娘
ジョン・レノンはビートルズの中でこの曲が一番嫌いらしい。
それはこの曲のストーカー気質の男みたいな歌詞にあると思うのですが、そういうのはジョンらしくありません。
(ほら、ここにもボブ・ディランの悪影響が出ています)
ジョン・レノンによるとエルヴィス・プレスリーが初期のサン・レコードでリリースした「ベイビー・レッツ・プレイハウス」から
「I’d rather see you dead, little girl, than to be with other man」という一節を拝借したそうです。
曲調だけをいえば結構ノリノリで好きです。
演奏
ビートルズ
- ジョン・レノン
リード、ハーモニー、バッキングボーカル。リズム、アコースティック、リードギター、「Think for Yourself」のオルガン。タンバリン - ポール・マッカートニー
リード、ハーモニー、バッキングボーカル、ベース、アコースティック、リードギター、ピアノ、マラカス - ジョージ・ハリスン
リード、ハーモニー、バッキングボーカル。リード、リズム、アコースティックギター。「ノルウェーの森」のシタール。マラカス、タンバリン - リンゴ・スター
ドラム、タンバリン、マラカス、カウベル、ベル、シンバル。「I’m Looking Through You」ではハモンドオルガンを担当。「What Goes On」ではリードボーカルを担当。
プロダクションおよびゲストミュージシャン
- ジョージ・マーティン
プロデュース、ミキシング。「In My Life」でピアノ、「The Word」と「If I Needed Someone」でハーモニウムを担当。 - マル・エヴァンス
「You Won’t See Me」でのハモンドオルガン演奏 - ノーマン・スミス
エンジニアリング、ミキシング - ロバート・フリーマン
写真 - チャールズ・フロント – イラスト



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