「一応ダウンホーム・ブルーズのくくりですが、スローでファンキーな癒し系ロックンロールというジミー・リードならではの世界です。」I’m Jimmy Reed : Jimmy Reed / アイム・ジミー・リード : ジミー・リード

 1950年代に活躍し、1960年代のロックに一際(ひときわ)影響を与えたブルーズマン、ジミー・リードのご紹介です。
最も有名なアルバムの一つが1958年にリリースされた「アイム・ジミー・リード」となります。

これは1953年にデビューして以降のヒットシングルを集めたものです。
この時代のアルバムはまだLPレコードが登場したばかりなので、最初はそれまでのシングルレコードをまとめたような企画が多かったのでした。
LPレコードにしても両面合わせて収録時間が30分程度と短かったため、CDの時代になると2枚のアルバムをカップリングということも珍しくありませんでした。

このアルバムも長らく「I’m Jimmy Reed / Just Jimmy Reed」のカップリングが定番でした。
今年、2024年リマスターというのがリリースされたので、思わず買ってみました。
旧CDと比較すると流石にダイナミックレンジが広くなって、ヴォーカルが生々しくなっているように感じます。
しかし元から音質がまとまっている録音のせいか、デジタル・アーカイヴに対するセンスが良かったというべきか、実はそれほどまでにはリマスターの感動には至りませんでした。
ジミー・リードに関しては聞き慣れたレンジ狭めのチープでスカスカっぽい音もいいものです。というか逆にその方が音がまとまって太く感じたりします。

ジミー・リードは1925年9月6日、ミシシッピ州ダンリースというところで生まれました。
この後ずっと一緒に活動するギタリストのエディ・テイラーとは同郷出身で幼馴染だったそうです。

エディは1923年1月の生まれなので2歳以上年上の兄貴分となります。
そのエディ・テイラーからギターとハーモニカを習いました。

1943年には一旦イリノイ州シカゴに移住して2年ほど兵役に就きます。
除隊した後、ミシシッピ州に戻りママ・リードと結婚してインディアナ州ゲーリーに移住して食肉加工工場で働いていました。
その間も音楽活動は続けており、1950年代に入る頃には人気ミュージシャンとなっていました。

チェス・レコードと契約しようとしましたが断られ、その時に一緒に活動していたジョン・ブリムのバンドのドラマー、アルバート・キング(のちにあのブルーズ界3大キングと呼ばれるようになるあのお方ですが、ドラマーでもあったようです)からヴィー・ジェイ・レコードを紹介されます。
そこで幼馴染のエディ・テイラーと組んで「ユー・ドント・ハヴ・トゥ・ゴー」を皮切りにヒット曲を連発していきます。

しかし1966年にヴィー・ジェイ・レコードは倒産、ABCブルーズウェイと契約しますが、この頃になると長年のアルコール依存症などの不摂生と1957年のてんかん発作時の誤診による誤った治療などもあり、音楽活動は順調ではなくヒット曲には恵まれませんでした。

ジミー・リードは1960年代、「アメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバル」というこれ以上望めないくらいの高名なブルーズの巨匠たちによる1962年からのヨーロッパ巡業にも参加しました。
このツアーは何度も開催されていますが、出演者はマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフ、Tボーン・ウォーカーからマット・マーフィー、スリーピー・ジョン・エステスからハウンドドッグ・テイラーまでその時存命の有名なブルーズマンはほぼ網羅しているというすごいものでした。

ミック・ジャガーやエリック・クラプトン、ジミー・ペイジからスティーヴ・ウインウッドなど特にイギリスの1960年代に活躍するミュージシャンはこぞって見にきていたそうです。

人種差別によって黒人と白人の生活圏がはっきり分かれていたアメリカと違ってイギリスではこの原液摂取体験が「ブリティッシュ・インベンション」の引き金となってロックは大きく進化することになります。

話をジミー・リードに戻します。
ジミー・リードの奏でる音楽はブルーズです。ダウンホーム・ブルーズというジャンルに分類されます。
と言ってもデルタ・ブルーズやシカゴ・ブルーズのようにいかにも人生の悲哀を歌にするという重くドロドロしたものではありません。
ゆったりほんわりとした世界です。
と言ってもニューオリンズみたいにズボンが緩んでパンツが見えているようなユルさではありません。(ごめんなさい、ニューオリンズは大好きです)
オクラホマのタルサのように一日中お昼寝しかしないナマケモノのようなユルさでもありません。(まことにすみません。タルサも大好きなんです)

歩くようなリズムにイナたいハーモニカが乗ってきて、力を抜いたジミー・リードのヴォーカルが入るともう他では味わえないジミー・リードの世界になります。
ブルーズというよりスローなロックンロールかソウルバラードに通じる世界です。

この朴訥とした歌い方にも性格というか人生経験が滲み出ているようで、それでいてファンキーなグルーヴも感じられる逸品なのです。

1955年の「ユー・ドント・ハヴ・トゥ・ゴー」からヒットしましたが超有名曲といえば1957年の「オネスト・アイ・ドゥ」です。
この曲はまさにジミー・リードらしさが詰まっており、ローリング・ストーンズもファーストアルバムでカバーしています。

ジミー・リードには欠かせない相棒のギタリスト、エディ・テイラーはいぶし銀のギタリストと言われ、ヒット曲や歴史的名盤と言われるものはないもののマニアックなファンが大勢います。
ジミー・リードが亡くなってからもシカゴブルーズの重鎮として頑張っていました。
記憶が曖昧で定かではありませんが、だいぶ昔にエディ・テイラーさんの来日時のインタビュー記事を読んだときに人の手柄を全部独り占めみたいな感じで、相当なビッグマウスな人だなあと思ったことがあります。
でも今になってみるとそういう感じでは語られないので記憶違いかもしれません。

このジミー・リードのファーストアルバムのジャケットはギターと椅子が置いてあるだけのシンプルなものです。
数十年見慣れた今となってはイメージが膨らむいい感じのジャケットなんですが、冷静に考えると「なんでデビューアルバムで本人が写っていないのだ」、とか「いきなり故人の追択アルバムか」、と突っ込みを入れたくなるデザインです。

同じように本人不在で椅子とギターだけのジャケットデザインというのにハウリン・ウルフのチェスのセカンドアルバム、その名もズバリ「ハウリン・ウルフ」というタイトルのアルバムなどがあります。
これもデザインといい、タイトルといい手抜き感がハンパないものですが、これも中身はもちろん名盤です。(ただし、ジミー・リードの感覚でハウリン・ウルフを聴くと面食らいますけどね)

ジミー・リードのアルバムは押し並べてこういう感じで、軽いソウルバラードやオールディーズを聴く感覚で聴けます。
ちなみにローリング・ストーンズのキース・リチャーズはセカンド・アルバム「ロッキン・ウィズ・リード」が推しだそうです。
これも最高にジャケットがかっこいいアルバムです。

アルバム」「アイム・ジミー・リード」のご紹介です。

Bitly
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演奏

ジミー・リード  ギター、ヴォーカル、ハーモニカ
レモ・ビオンディ  ギター(Tr.2,5,11)
ジョン・ブリム  ギター(Tr.10)

エディ・テイラー  ギター(Tr.1-9,11,12)
ヴァーネル・フルニエ  ドラムス(Tr.6,9)
アルバート・キング  ドラムス(Tr.4,10,12)
アール・フィリップス  ドラムス(Tr.1,2,3,5,7,8,11)

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。ジミー・リードの公式アーティストチャンネルとしてはなぜか韓国の方の名義となっています。?とは思いますがリンクさせていただきます。

1,   Honest I Do オネスト・アイ・ドゥ

1957年リリース、R&Bチャート4位です。ジミー・リードを代表するブルーズ・スタンダードです。途中、「あ、そこ、もうちょっとブルーズハープの音を大きく・・・」などと思ったりしますが、それも含めてこれがジミー・リードの味というものです。
最後はフェイドアウトで終わります。

2,   Go on to School ゴー・オン・ザ・スクール

3連リズムで攻めるブルーム調といいたいところですが、エルモア・ジェイムスほどの推しの強さはありません。ただ、このジミー・リードならではの雰囲気も得難いものです。

3,   My First Plea マイ・ファースト・プレア

比較的ブルーズっぽい曲調です。録音レベルは低いのですが歌の合間に入るギターのフレーズが基本にして究極にかっこいいものです。

4,   Boogie in the Dark ブギ・イン・ザ・ダーク

インストナンバーです。ブギというタイトルですが、もう何ものでもないロックンロールです。ただロックンロールと違うのはジミー・リードの場合、ブルーズハープのソロはあってもギターソロはありません。

5,   You Got Me Crying ユー・ガット・ミー・クライング

ブルーズっぽい曲です。こういう曲を聴いているとやっぱりだウンホーム・ブルーズという雰囲気はありません。
イメージ的にカントリーからつながるロックンロールという感じです。このイメージはジョン・レノンの歌い方などにもつながります。

6,   Ain’t That Lovin’ You  Baby エイント・ザット・ラヴィン・ユー・ベイビー

1956年リリースの3枚目のシングルです。R&Bチャート3位まで上昇しました。あまり時代を感じさせない名曲です。

7,   You Got Me Dizzy ユー・ガット・ミー・ディジー

同じく1956年のシングルで、これもR&Bチャートの3位となっています。
基本のウォーキングベースがとっても素敵な曲です。

8,   Little Rain リトル・レイン

1957年リリー氏です。R&Bチャート7位です。スローバラードと言っても差し支えありません。足を踏み鳴らしてリズムを取るストンプの音がフューチャーされています。裏に行ったりブレイクしたりする独特のリズム感に痺れます。

9,   Can’t Stand  to See You Go キャント・スタンド・トゥ・シー・ユー・ゴー

1956年リリースでR&Bチャート10でした。ブルーズとかR&Bとかロックンロールとかを超えたような不思議な広がりを持つ曲です。1950年代の曲とは思えません。

10,  Roll and Rhumba ロール・アンド・ルンバ

タムの音が印象的なエキゾチックなインストナンバーです。当時はこいうのでみんな踊ったのでしょう。

11,  You’re Something Else ユア・サムシング・エルス

珍しく大きな音でベースがグルーヴします。シンプルで基本的なんだけどかっこいいジミー・リードならではの世界です。

12,  You Don’t Have to Go ユー・ドント・ハヴ・トゥ・ゴー

1955年のデビュー曲で、R&Bチャート5位まで登りました。雰囲気はシカゴブルーズです。流石にまだジミー・リードならではの世界ではありません。このアルバムでは珍しく3分を超える長さです。というか他のナンバーは全て2分台なんですね。

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