「1960年代ロック、これで特大スケールの終焉を迎えました」Let It Bleed : The Rolling Stones / レット・イット・ブリード / ザ・ローリング・ストーンズ

 ザ ・ローリング・ストーンズの歴史、といえばロックの歴史ということにもなります。その中で1、2を争う重要作とされるのが1969年リリースの「レット・イット・ブリード」です。
半年後にはビートルズのラストアルバム「レット・イット・ビー」がリリースされました。
達観したようなビートルズの「なすがままに」に比べると、実に生々しくストーンズは「血を流せ」です。
これぞザ・ローリング・ストーンズといったところですね。

内容はあらゆるアメリカ音楽のエッセンスを取り込んで、よりかっこよく再構築したオリジナルです。
ストーンズ流のブルーズあり、カントリーあり、ソウルありの幅広い内容となってます。
この方法は70年代を通して行われますが、特に本作と自作の「スティッキー・フィンガーズ」は顕著に現れました。

ただスティッキー・フィンガーズと明らかに全体のイメージ、肌触りが違います。それは最初と最後の曲の広がりの違いで顕著です。
オープニングの「ギミー・シェルター」と「ブラウン・シュガー」ラストの「無情の世界」と「ムーンライト・マイル」の違いです。

レット・イット・ブリードの方が大作志向で芸術性を狙ってます。そう感じるのは派手なオープニングとエンディングなのです。
心の内側に大きく広がるオープニング曲と心の外側へ大きく広がるエンディング曲を持ってきました。

で、次作スティッキー・フィンガーズでは本来の音楽志向にもどり、やたらと世界を広げることはやめて泥臭く生活密着型の音楽に仕上げます。
長いストーンズの歴史で繰り返される、大きく膨らませては我に帰って足元をみるという王道パターンですね。

レット・イット・ブリードは1960年代ロックの締めくくりとしても重要な歴史的アルバムであり、50年以上経った今でも、聞いてゾクゾクさせるアルバムです。

このアルバムでもう一つ切り離せないことはライ・クーダーとの関係があります。
ソロデビュー前のライ・クーダー はストーンズのセッションに呼ばれていろいろとギターを弾いて見せてセッションしました。
後でストーンズのアルバムを聴いたら、ほとんどの曲が自分がプレイして見せたフレーズの断片を使ってできていたと言っています。
最終的にはお金で解決となったようですけど。

でもライ・クーダーのファーストアルバムを聴いても、イメージは全然違います。
ライ・クーダーはホーボー、プアホワイト、労働者などを歌ったルーツミュージック探究派ですからストーンズみたいな大袈裟な音楽にはなりません。(そこがライ・クーダーの魅力なんですけど)
比べてストーンズの「レット・イット・ブリード」の方は派手でアートです。多様な技法を使って世界観を広げます。

よりスケールはデカく、よりメロディはきれいにカッコよくです。ストーンズのパクリはいつもそうです。

アルバム「レット・イット・ブリード」のご紹介です。

演奏

ミック・ジャガー  ヴォーカル 、ギター、パーカッション
キース・リチャーズ  ギター、バッキングヴォーカル
ミック・テイラー  ギター
チャーリー・ワッツ  ドラムス
ビル・ワイマン  ベース

*ゲスト・ミュージシャン
イアン・スチュワート  ピアノ Tr. 5
ニッキー・ホプキンス  ピアノ Tr. 1,4,7,8  オルガン Tr. 7
ジミー・ミラー  パーカッション Tr. 1  ドラムス Tr.9
メリー・クレイトン  リードヴォーカル Tr. 1
バイロン・パーライン  フィドル Tr. 3
ボビー・キーズ  サキソフォン Tr.4
ライ・クーダー  マンドリン Tr. 2
レオン・ラッセル  ピアノ、ホーンアレンジ Tr. 4
アル・クーパー  ピアノ、オルガン、フレンチホルン   Tr. 9
ロッキー・ディジョン  パーカッション Tr. 9

その他 
コーラス 
マドリーヌ・ベル、ドリス・トロイ、ナネット・ニューマン、ロンドン・バッハ合唱団


曲目
*参考までにyoutube音源と曲毎に動画をリンクさせていただきます。


1,   Gimmie Shelter  ギミー・シェルター

なんと言っても主役はメリー・クレイトンの引き裂くようなヴォーカルです。この鬼気迫る曲は1曲目にしか置けません。そしてなんかすごいことになってきたぞと感じさせます。


2,    Love In Vain  むなしき愛

うってかわってロバート・ジョンソンのカントリーブルースです。メロディアスにアレンジしています。ライ・クーダーのマンドリンがなんともいい味出しています。



3,    Country Honk  カントリー・ホンク

引き続きほのぼのとしたカントリーアレンジの「ホンキー・トンク・ウイメン」です。


4,    Live With Me  リヴ・ウィズ・ミー

たたみかけるような感じがかっこいいい、この時期のストーンズらしいリフの曲です。


5,    Let It Bleed  レット・イット・ブリード

一見不思議な感じの曲ですが、名曲です。


6,    Midnight Rambler  ミッドナイト・ランブラー

この時期のライブのハイライトとなっていました。


7,    You Got The Silver   ユー・ガット・ザ・シルバー

ここから本格的にキースがヴォーカルを取り始めました。この後のアルバムでは1曲はキースのヴォーカルがフューチャーされるようになります。キースの歌も個性的で味があります。(ヘタウマとも言います)


8,   Monkey Man   モンキー・マン

なんとなく不気味に始まり、リフとともにハードにドライヴします。まんまジャンキーを歌った曲です。


9,    You Can’t Always Get What You Want  無情の世界

合唱団も加わり、スケールでっかく行きます。一大叙情詩となって大団円。さすがです。


ローリング・ストーンズは現在も音楽活動を続けています。
2021年8月24日にオリジナルメンバーのチャーリー・ワッツが80歳で亡くなられました。
オリジナルのストーンズのメンバーとしてはミック・ジャガー、キース・リチャーズ、結成当初からではないけれどミック・テイラーの後釜で入ったロン・ウッドしか残っていません。
ロック最年長バンドを最後まで見届けさせていただきます。

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