「楽曲と演奏と高音質サウンドが高い次元で融合したLAの職人集団TOTOの代表作」TOTO Ⅳ : TOTO / TOTO Ⅳ~聖なる剣~ : TOTO

 1982年、グラミー賞でレコード・オブ・ザ・イヤーなど6部門獲得という快挙を達成したアメリカのロックバンド、TOTOの四枚目のアルバムです。
邦題は「TOTO Ⅳ〜聖なる剣剣〜」です。

TOTOのキャリアでも1番のヒットアルバムであり、1200万枚以上を売り上げることになりました。

TOTOは1978年に「宇宙の騎士」でデビューしました。
同アルバムからシングルカットした「ホールド・ザ・ライン」がトップ5にチャートインするなどいきなりアルバムともにヒットに恵まれました。

当時のTOTOのイメージはハードロックにプログレッシブ・ロックを追加して、さらにアメリカンな感覚を追加したバンド、というものでした。
情報ではロサンゼルスのスタジオミュージシャンが集まって結成されたバンドというふうに言われておりました。

そういうバンドは演奏は安定しており、わかりやすく誰でも聞きやすい反面、コアなロックファン(パンク、ニューウェイヴとかメタルとかプログレにかぶれて・・・じゃなかった嗜好している人たちです)からは敬遠されている向きもありました。

特に若い子は思い込みが強くてそういう傾向に走りやすいものです。
(すいません、私です)
見方を変えてロサンゼルスの同じ高校の同級生を中心に組んだバンドといえばまた違うイメージになるんですけどね。

快調な出だしだったTOTOですが、続く2枚目、3枚目のアルバムはデビューアルバムほどの売り上げはなく、ファンや周囲の期待には応えられませんでした。
四枚目の結果次第では存続も危ぶまれる状態だったそうです。
(個人的なイメージではかなり売れていたような気もするのですが)

しかしそこは百戦錬磨のレコーディング・セッションをこなしている強者どもです。
窮地に立てば立つほどに余裕を見せたがる男の子のグループみたいに「しゃあねえな、ぼちぼち本気出してみようぜ」みたいなノリで一致団結したのかもしれません。
(テキトーな憶測です)

ここで私的なことを白状しますと、実のところわたくしがTOTOを真面目に聴くようになったのはデビューしてから20年以上経ってからでした。

思い込みの激しいロックファンの例に漏れずスティクスやREOスピードワゴン、ジャーニーと同じようにアメリカの売れ線狙いの大量消費、金儲け目的のビジネスロックバンドだろうと思っていました。
(若気の至りでございます)

とは言いつつも学生の頃、TOTOが大好きな友達がいてデビューアルバムやセカンドアルバムを貸してもらったり、TOTOの初来日には今は無き中野サンプラザに見に行ったりもしたものです。

でも当時はのめり込めませんでした。
「やっぱりローリング・ストーンズとかオールマン・ブラザーズの方が・・・」などと思っていました

そんなこんなでだいぶ時間がすぎてしまった時です。

あるレコーディング・スタジオのモニタースピーカーで聴く機会がありました。

最初、CDジャケットを見ながら思いました。
「タイトルからしてスターウォーズにでもあやかろうとでもしているんだろうか、実のところ言われているほどプログレなイメージもないし、アメリカン産業ロックの真っ只中という感じだよな。なんか優等生すぎてロックの精神性というか、屈折したパワーというか、そういうロック魂が感じられんし」

そして1曲目「ロザーナ」を聴いた瞬間、認識が変わりました。

圧倒的なパワー感と寸分狂わずまとまっているリズムは力強く、音の厚みとパンチ力のコンビネーションは他では感じられないほどの次元でした。

「こ、これが・・・プロのミュージシャンが出す音なんだ」

と再認識させられたたものです。

はい、素晴らしいと思ったのは実にこのアルバムがリリースされて20年近く経った頃でした。
以後スティーリー・ダンやボブ・マーリーなどと共にスピーカー評価のリファレンス音源となっております。

時代が変わり世の中の音楽が熟成されてくるとTOTOのイメージも変化していきます。
卓越した技量の音楽職人集団というものになってきました。

1960年代のボブ・ディランやビートルズみたいな個性に軸を置いた魅力からスティーリー・ダンやこのTOTOみたいな技巧の魅力も認められるようになったのだと感じます。

聴いているとバンドメンバー全員の腕の確かさには敬服しますが、まずなんといってもドラムとベース、このリズム隊の圧倒的な素晴らしさです。

ベースのデヴィッド・ハンゲイトはこのアルバムを最後にTOTOを脱退しますが、ドラムのジェフ・ポーカロは1992年8月5日に38歳で心臓発作で亡くなるまでTOTOのリーダーとして、また凄腕のセッションミュージシャンとして記憶に残る演奏を続けました。

(長らくジェフ・ポーカロはドラッグ(コカイン)が原因で亡くなったという噂が広がっていましたが、バンドのメンバーをはじめ彼の周囲には「彼はクリーンだった」と証言する人が多いようです)

アルバム「TOTO Ⅳ~聖なる剣剣~」のご紹介です。

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演奏
TOTO
ボビー・キンボール – ボーカル
スティーヴ・ルカサー – ギター、ボーカル
デヴィッド・ハンゲイト – ベースギター、ギター
デヴィッド・ペイチ – キーボード、ボーカル
スティーヴ・ポーカロ – キーボード、ボーカル
ジェフ・ポーカロ – ドラム、パーカッション

ゲスト・ミュージシャン
レニー・カストロ  コンガ、パーカッション(Tr.1,4,5,7,10)
ラルグ・ディック  シンセサイザー(Tr.7)
ゲイリー・グラント  トランペット(Tr.1)
ジェリー・ヘイ  トランペット(Tr.1)
ジム・ホーン  サキソフォーン(Tr.1,7)、リコーダー(Tr.10)
ジェームス・ニュートン・ハワード  オーケストラ・アレンジ、指揮(Tr.3,5,6,7)
トム・ケリー  バックヴォーカル(Tr.1,2)
ロジャー・リン  シンセサイザー・プログラミング(Tr.4)
マーティン・フォード  オーケストラ・アレンジ(Tr.3,5,6,7)
マーティ・ペイチ  オーケストラ・アレンジ(Tr.3)
ジェームス・バンコウ  トロンボーン(Tr.1)
ジョー・ポーカロ  パーカッション(Tr.5,10)、シロフォン(Tr.6)、ティンパニ(Tr.7)、マリンバ(Tr.10)
マイク`ポーカロ  チェロ(Tr.3,8)
ティモシー・B・シュミット  ヴォーカル(Tr.3,4,10)
トム・スコット  サキソフォーン(Tr.1,7)
ジョン・スミス  サキソフォーン(Tr.2)

曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Rosanna ロザーナ
 (デヴィッド・ペイチ)

シングルヒットした曲でいきなり玄人集団ならではのサウンドが炸裂、サウンド、特にバネのあるリズムが最高です。
これはハーフタイム・シャッフルをアレンジしたロザンナ・シャッフルと呼ばれるリズムです。
元はファンクネスの塊、バーナード・“プリティ”・パーディー様の得意としていたリズムの進化系です。
ヴォーカルはスティーヴ・ルカサーでコーラスでボビー・キンボールが入ります。
最後は雰囲気を変えたデヴィッド・ペイチのピアノとルカサーの余裕のアドリブ・ジャムで終わります。

2,   Make Believe メイク・ビリーヴ
 (デヴィッド・ペイチ)

リズムを刻むペイチのピアノに始まり、ミディアムテンポのドラムとギターをバックにサックスが歌い、そしてキンボールのハイトーンヴォーカルが炸裂です。
途中の展開も凝っています。

3,   I Wan’t Hold You Back ホールド・ユー・バック
 (スティーヴ・ルカサー)

いかにもAORバラードという雰囲気です。
ルカサーが歌い、これでもかという泣きのギターソロも堪能できます。

4,   Good for You グッド・フォー・ユー
 (ボビー・キンボール、スティーヴ・ルカサー)

キンボールの歌うロックな曲です。
この人はハードな歌唱が似合います。
後半はペイチに頼んでもう一捻り加えたら・・・と思ってしまう私でした。

5,   It’s a Feeling イッツ・ア・フィーリング
 (スティーヴ・ポーカロ)

作者、スティーヴ・ポーカロのヴォーカルです。
AOR風味万歳です。
1分34秒のところでリズムが崩れたように聞こえるのですが、これは私の音源だけ?
(youtube音源でもそうでした)

6,   Afraid of Love アフレイド`オブ・ラヴ
 (スティーヴ・ルカサー、デヴィッド・ペイチ、ジェフ・ポーカロ)

いかにも、というか冗談かと思ってしまうほどの鉄壁のアメリカンロックです。
演奏が完璧だとまた違う味わいがあります。

7,   Lover’s in the Night ラヴァーズ・イン・ザ・ナイト
 (デヴィッド・ペイチ)

作者、デヴィッド・ペイチのヴォーカルです。
他のバンドでも感じることですがキーボード・プレイヤーの作った曲は一捻りを感じます。
ラストのルカサーのギターソロもいい感じです。

8,   We Made It ウイ・メイド・イット
 (デヴィッド・ペイチ、ジェフ・ポーカロ)

ヴォーカルはキンボールです。
この人の声はこういうロックな曲のお手本のような声質です。
リズムで押していく曲なので終わり方はフェイドアウトではなくスパッと終わった方が印象に残りそう・・・と思ってしまいました。

9,   Waiting for Your Love ユア・ラヴ
 (ボビー・キンボール、デヴィッド・ペイチ)

続いてまたキンボールのヴォーカルです。
この曲はシングルカットされ小ヒットとなりました。
ソウルフルな曲調はアルバムの流れで生きる曲で、TOTOのシングル向けでは無いような気もしてます。Aメロがもっとメロディアスなら別ですが。(個人の感想です)

10,  Africa アフリカ
 (デヴィッド・ペイチ、ジェフ・ポーカロ)

今やTOTOを代表する名曲です。「ロザーナ」とこの「アフリカ」が入っているだけで名盤確定です。

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