「永遠のジャズ : “鍵盤の皇帝”と呼ばれた男」We Get Request : Oscar Peterson Trio / プリーズ・リクエスト : オスカー・ピーターソン・トリオ

(対 : キース・ジャレット)
ジャズピアノの一つの象徴というべきアルバムです。
聴くとオスカー・ピーターソンにとって音楽とはみんなが楽しんで感動できるものであるべきという強い意志を感じます。
その典型がこの「プリーズ・リクエスト」です。原題は「ウイ・ゲット・リクエスト」ですがうまく和製英語に変えてあります。
レーベルはかの有名なVerve=ヴァーヴです。このレーベルの音は柔らかくも芯があって力強く、厚い低音と綺麗な高音が再生されます。
これぞジャズを象徴する音だと聴くたびいつも思います。
1970年代、アナログオーディオもピークとなり、オーディオマニアが大量出現して世の中を食い荒らしていた時、このアルバムがリファレンス音源として重宝されていました。

そしてこのアルバムの主役、トリオの中心となるのがもちろんオスカー・ピーターソンです。
ジャズの、いやもっとわかりやすく狭めてジャズピアノというジャンルの両極にいるのがオスカー・ピーターソンとキース・ジャレットという気がしています。

この二人について今、同時に書き綴っています。それが可能なのです。できれば対で見ていただきたいと思います。
二人の共通点はピアノを弾きながら声を出すことくらいです。ジャレットさんは特に顕著です。「あれさえなければ」と思っている人を何人か知っているので、世界規模だと結構な数になると思われます。

アルバムはピアノトリオでのものですが、ここではオスカー・ピーターソンに絞って解説させていただきます。
他のお二人は改めて別の機会にご紹介いたします。

オスカー・ピーターソンの奏でる音楽には「俺はハッピーでいたいんだ。あんたがハッピーじゃないと俺もハッピーになれないんだよ。だから俺はあんたをハッピーにして見せるさ」というエンターテイナーの一番基本かつ重要、普遍的要素が根底にありそうな気がします。
しかもピアノ演奏のテクニックがとてつもなく華麗で、ヘラヘラしながらとんでもない難しいことをいとも簡単にやってのけてます。相当な腕前、テクニシャンです。
そしてその表現力は人柄も合わせて音楽の奥行きを感じ、定期的に聴きたくなります。

オスカー・ピーターソンは楽譜を読めなかったという話がありますがにわかに信じられません。
でも耳、音感が鋭いのは事実で心で思った音を即座に弾ける、メロディを聴いてコード進行なども即座に理解できるなどの人一倍高い能力はあるのは確実です。
そしてその技術は音楽を通して楽しい、悲しい、優しい、などの感情をつけながらブルージーで歌心を持った素晴らしい形で表現されます。

しかも生まれつきのエンターテイナーなのでサービス精神が旺盛です。
周りからどういうことを望まれているかをすぐに理解して最高に満足できるように振る舞えます。
ここが評論家あたりから芸術性がない云々と言われることもある証左でしょうが「結局のところハッピーな人生を送ったものが最終勝者さ」という根源的な人間の価値観からすると素直にこういうのもありだなと素直に納得する次第です。

来歴

オスカー・ピーターソンは1925年8月15日 カナダのケベック州、モントリオールで移民の子として生まれました。
5歳の時からピアノとトランペットを始めましたが7歳の時に結核を患い、ピアノに絞りました。
20歳くらいからプロとしての活動を始めて長く高い評価を受け続け、数々の名録音を残しました。
2007年12月23日 カナダのオンタリオ州ミシサガで82歳でなくなりました。

他のミュージシャンからは尊敬と親しみを込めて「鍵盤の皇帝」と呼ばれました。また、なんだかんだ言ってもデューク・エリントンから「キーボードのマハラジャ」と言われたほどの超絶天才でした。

アルバム「プリーズ・リクエスト」のご紹介です。

演奏

オスカー・ピーターソン  ピアノ
レイ・ブラウン  ベース
エド・シグペン  ドラムス

ジム・デイヴィス  プロデューサー
ボブ・シンプソン  レコーディング・エンジニア
Val Valentin  エンジニアリング担当ディレクター


曲目
*参考までにyoutube音源を、最後部にトリオのライブ動画をリンクさせていただきます。


1,   Corcovado (Quiet Nights of Quiets Stars) コルコバード
(作 Antonio Carlos Jobim)

このアルバムを凝縮したような曲です。全てにおいて完璧だと思います。


2,   The Days of Wine and Roses 酒とバラの日々
(作 Henry Mancini,  Johnny Mercer)

20代の頃からこういう雰囲気が大人の嗜みかと思っていました。今となってはオスカー・ピーターソン以外は似合わない曲です。


3,   My One and Only Love マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ
(作 Robert Mellin,  Guy Wood)

個人的にとてもノスタルジックな気持ちになります。


4,   People (From Broadway Musical 「Funny Girl」) ピープル ミュージカル「ファニーガール」より
(作 Bob Merrill,  Jule Styne)

雰囲気のある洒落たいい曲だと思います。ピアノもドラムももちろんですが、メロディを押したり弾いたりするベースに味を感じます。


5,   Have You Met Miss Jones? ジョーンズ嬢に会ったかい?
(作 Lorenz Hart,  Richard Rodgers)

タイトルに似合わず気怠い感じで始まり徐々にアクセントをつけてきます。何かを語りかけてくるような曲です。


6,   You Look Good to Me ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー
(作 Saymore Lefco,  Clement Wells)

このアルバムで一番いいと思う曲です。ベースがアルコ奏法やったりと大活躍です。


7,   The Girl From Ipanema イパネマの娘
(作 Antonio CarlosJobim,  Vinicious de Moraes,  Norman Gimbel)

ボサノヴァのスタンダード、超有名曲です。


8,   D&E
(作 John Lewis)

ジョン・ルイスはオスカー・ピーターソンの兄貴格のジャズピアニストです。余裕のブルーズ演奏です。


9,   Time and Again タイム・アンド・アゲイン
(作 Stuff Smith)

リズム隊含めてみんなかなり抑えて音数を少なくして雰囲気を出してます。全員かなりの演奏力が求められ、また気の合ったチームワークを感じます。


10,  Goodbye J.D. グッドバイJD
(作 Oscar Peterson)

最後はピーターソンのオリジナルです。リズムを聴く曲です。

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