ハードロック史に輝かしい名声を残し、今なお燦然と輝くレッド・ツェッペリンです。
ハードロック、メタル界においても特別な存在となっております。
こうなってくると真の後継者もなかなか出てくる気配がありません。
今までもいくつかののツェッペリンの再来と言われるバンドは出現しましたが、数十年にわたって活動できているバンドはいないようです。
(1980年代にキングダムカムというバンドが出てきて面白いと思っていたのですが、コアなツェッペリン・ファンからはタコ殴り状態でした。)
不思議なことにレッド・ツェッペリンは初期において、デビューから4枚目まではアルバムタイトルにこだわるようなことはありませんでした。
もちろんツェッペリンの、というかジミー・ペイジの意向であえてそうしていたのだと思います。
ジミー・ペイジは音楽からサウンドからバンドイメージからステージアクションまで、トータルコーディネイトするのが好きなんです。
しかも絶対に完璧主義です。
アルバムタイトルはレッド・ツェッペリン1、2、3ときて無題のアルバムとなりました。
記号が四個書いて合ったので「フォー・シンボルズ」と呼ばれるかの有名な「天国への階段」が収録されているアルバムです。
次からは「聖なる館」とちゃんとタイトルをつけるようになりました。(しかし相変わらずジャケット面にタイトルなどの情報は一切表記がありません)
そして今回ご紹介するのは1970年リリースの3枚目のアルバム「Led Zeppelin Ⅲ」です。
このアルバムは華麗なるツェッペリンのカタログの中で燦然と輝いている・・かというと・・・そうではありません。
なぜかというとサウンド面にハードロックファンの期待と違ったものがあります。
「胸いっぱいの愛を」などが目玉のセカンドアルバムの後なので、普通に考えてツェッペリンには“他にはないくらいの暴力的でハードな音” が求められていました。
それにもかかわらずこのアルバムはアコースティックギターを主体としたフォーキーな曲が多いのです。
LPでいうところのA面には「移民の歌」「祭典の日」「あなたを愛し続けて」とヒット曲やライブの定番曲が並びますが、いかんせんB面がハードロックバンドとは思えない佇まいです。
ツェッペリンからしたら自分たちのスタイルである「ブルーズをハードにアレンジしたロック」でやってきました。
しかしいつまでも同じことを繰り返しているわけにもいきません。
次の段階に進まねばならないと感じていたのだと思います。
今までのブルーズにインスパイアされたハードなサウンド、これからはその先を模索してヨーロッパのフォーキーなものやアジアのテイストなどをを取り入れようとしていたのです。
収録曲のほとんどはジミー・ペイジとロバート・プラントがウェールズの田舎にあるコテージ「ブロウン・イ・アー」で書かれました。
ツアーで明け暮れ、疲労困憊の状態だったらしく、ここでちょっと引きこもりたかったようです。
この時期の写真を見るとジミー・ペイジが髭を生やしたりしていてリラックスした隠遁生活が見て取れます。
音楽的にも伝統的なフォークやケルト音楽が感じられます。
そしてそれは次作の「天国への階段」で見事に結実するのですが、リリース当時は
「何を考えてんだろう」
「どこへ向かっているんだ」
「いや、こういうCSN&Yみたいなのは誰もツェッペリンには求めてないから」
というのが大方の感想だったのだと思います。
今から見ればサードアルバムで提示したアコースティックサウンド志向もツェッペリンらしいものです。
結果としてはリリースしたこのサードアルバムはセカンドに続いて英米で1位となりました。
1st、2ndときてかなり期待されていたアルバムっだったのです。
そして手にした人は戸惑いながらも受け入れました。
評論家からは賛否両論だったようです。
実際、チャートに対する瞬間風速はすごかったものの1st、2ndほどは売れずにジミー・ペイジはかなり落ち込んだと言われています。
これは現在も同じでレッド・ツェッペリンⅢだけは他のアルバムに比べてイメージが違います。
しかしこのアルバムによって幾多のハードロックバンドとは違った幅の広さとオリジナリティを示しました。
最初は戸惑ったアルバムB面についてもガツンとくる衝撃はありませんが、最初からそういう世界を楽しむという心構えができていれば楽しめます。
緩急、強弱、剛柔混ぜ合わせたサウンドに伝統と全く新しい感覚を重ね合わせた、これもレッド・ツェッペリンでしか味わえない世界です。
売れることだけに固執して飽きられるまで同じことを繰り返すようなことは彼らは考えていませんでした。
そんなことでは本当の意味でのクリエイティヴなことはできないのだと改めて感じさせてくれます。
アルバムジャケットがまた凝っています。
見開きジャケットですが、ジャケットおもて面はところどころくり抜かれていて内側に円盤が取り付けられていて回転させると窓の部分のデザインが変わるという作りです。
ジミー・ペイジとしては自然や生命の流転などを意識して農事歴や動物の繁殖サイクルなどをイメージできるものにしたかったようです。
しかしデザイナーのウインブルドン・アート・カレッジの講師だったザクロンはそこまで汲み取っていなかったらしくポップアート的なものになってしまいました。
ジミー・ペイジは「まるでティーン・エイジのアイドルのアルバムみたいだと思った。わけがわからないし馬鹿みたいだ。とうもろこしだのなんだのってナンセンス極まりない」と酷評しています。
あれだけ傍若無人に暴れ回っていたツェッペリンです。
あれれ、どうしたんだジミー・ペイジ、完璧主義ではなかったのか?。
大人の事情で妥協したの?とひとごとながら心配になってしまいます。(以上、余計なお世話です)
わたくしの個人的な思い出としては、高校生の頃このツェッペリンのアルバムを聴いて、というか「あなたを愛し続けて」を聴いて素直に
「うわあ、かっこいい、こういうギターが弾けるようになりたい」
と思ったことです。
ブルーズのドラマチックな面とスタイリッシュさを最大限に生かした曲だと思いました。
ローリング・ストーンズ同様、ブルーズの入り口でした。
ほかにも「『祭典の日』はリフをどうやって弾いているのかさっぱりわからんわ」、などと話していたことも懐かしい思い出です。
アルバム「レッド・ツェッペリンⅢ」のご紹介です。
演奏
ジョン・ボーナム ドラムス、パーカッション
ジョン・ポール・ジョーンズ ベース、ハモンドオルガン、ムーグシンセサイザー、マンドリン、ダブルベース(Tr.9)、ストリングアレンジ(Tr.2)
ジミー・ペイジ ギターズ、ペダル・スティール・ギター、バンジョー。バッキングヴォーカル(Tr.7)、ベース(Tr.2)
ロバート・プラント ヴォーカル
プロダクション
ピーター・グラント エグゼクティヴ・プロデューサー
アンディ・ジョンズ レコーディング・エンジニア、ミキシング・エンジニア
テリー・マニング ミキシング・エンジニア、マスタリング・エンジニア
ザクロン カバーアート
曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。
1, Immigrant Song 移民の歌
(ペイジ&プラント)
今までにない疾走感あるヘヴィーなサウンドで幕を開けます。今までのようなどったんばったんなリズムをあまり感じさせない感じの曲です。北欧のヴァイキングの進出とか制服とかをイメージさせます。
2, Friends フレンズ
(ペイジ&プラント)
アコースティックギター主体の曲となりました。リアルタイムで1st、2ndと聞いてきた向きにはここで「ちょっと違うぞ」という雰囲気を感じ取ったかもしれません。ツェッペリンならではで普通のフォークソングとは違った味わいを感じます。
3, Celebration Day 祭典の日
(ジョーンズ、ペイジ&プラント)
これも疾走感のあるサウンドです。リフがあってないような曲で正当的なギターの奏法では思いつかないようなフレーズです。ギターソロといい前編駆け回るベースのドライヴが最高にかっこいい曲です。
4, Since I’ve Been Loving You 貴方を愛し続けて
(ジョーンズ、ペイジ&プラント)
個人的にはこの曲でツェッペリンが好きになりました。この曲をどう評価するかによってロックファンはメタル系に行くかブルーズ系に行くか分かれるような気もします。wikiで知ったのですがスティーヴ・ルカサーや稲葉浩志さんも一番好きな曲に挙げているそうです。
5, Out on the Tiles アウト・オン・ザ・タイルス
(ボーナム、ペイジ&プラント)
ツェッペリンの中では比較的地味な存在の曲ですが、リフといい曲の展開といいサビの開放感といい、名曲です。
6, Gallows Pole ギャロウズ・ポール
(トラディショナル・アレンジ・バイ・ペイジ&プラント)
トラディショナルですがツェッペリンはブルーズマンのレッドベリーのバージョンを元にしているようです。リズムが入ってくると面白い展開になります。
元ネタです。
7, Tangerine タンジェリン
(ペイジ)
このアルバムで一番わかりやすい美メロの曲です。泣きのギターも登場します。私個人的に昔から「ビトウィーン」で終わるところはもうちょっとうまく展開させた方がいいんじゃないかななどと思っていました。(余計なお世話です)
8, That’s the Way ザッツ・ザ・ウェイ
(ペイジ&プラント)
フォーク調の淡々と物語を進める感じの曲です。元々は「The Boy Next Door= 隣の少年」というタイトルだったそうです。
1970年代「ザッツ・ザ・ウェイ」というタイトルでKC・ アンド・サンシャイン・バンドの大ヒット曲があって、そちらの方が数百倍は有名でした。「何がアハアハじゃ、気合い入れてレッド・ツェッペリンを聞かんかい」とロックファンはイキっていたものです。(個人の見解です)
タイトル以外は全く関連がありませんがこれです。(もう個人的なトラウマです)
9, Bron-Y-Aur Stomp スノウドニアの小屋
(ジョーンズ、ペイジ&プラント)
休暇で過ごしたコテージを歌った曲です。ストンプとはブルーズマンのジョン・リー・フッカーさんで有名な椅子に座ってギターを弾きながら足で床を叩いてリズムを取ることです。
曲の元ネタはスコットランドのフォークミュージシャン、バート・ヤンシュの「ワゴナーズ・ラッド」だそうです。
元ネタです。
10, Hats Off to (Roy) Harper ハッツ・オフ・トゥ・ロイ・ハーパー
(トラディショナル・アレンジ・バイ・チャールズ・オブスキュア)
元ネタはギター・エヴァンジェリスト、ブッカ・ホワイトのブルーズナンバー「シェイク・エム・オン・ダウン」です。トレモロをかけたヴォーカルとか遊び心満載です。
言ってしまえばツェッペリンの中では大した曲でも重要な曲でもありません。ロイ・ハーパーとはイギリスのフォーク系のシンガー・ソングライターでアコースティック・ギターの達人でもあります。同世代のイギリスのロックミュージシャンなどから信望されており、有名なところではピンク・フロイドのアルバム「Wish You Were Here = あなたがここにいて欲しい」の「Have a Cigar = 葉巻はいかが」」でリードヴォーカルをとっています。
元ネタです。
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