ロバート・ジョンソンは第2次世界大戦前、1930年代に活躍したブルーズマンです。
活躍をしたと言ってもレコーディングは1936年と1937年の2回のみ。Vocalion Records(ヴォカリオン・レコード)から78回転のシングル盤11枚がリリースされました。
翌1938年8月16日には27歳で亡くなっています。死因は毒殺とも言われています。
音楽マニアの間で「27クラブ」という言葉があります。
ジミ・ヘンドリクスやジャニス・ジョプリン、ブライアン・ジョーンズやジム・モリソンという才能あるミュージシャンは27歳で死んだということに由来していますが、発祥はロバート・ジョンソンです。
写真は永らくこのジャケットの写真ともう一枚のタバコを加えたポートレイトの2枚しかありませんでしたが、 2020年になんと3枚目が発表されました。
興味のある方はyoutube「The Confirmed Photos of Robert Johnson – All Known Pictures」投稿者 Still Livin’ the Blues 様でご確認ください。
ロバート・ジョンソンは最初はブルーズ界の大御所サン・ハウスに憧れて弟子となりました。
そしてジュークジョイントと言われる飲んだり踊ったりする飲み屋で活動を始めたのですが、ギターも歌もそれはそれは下手くそで、散々みんなから馬鹿にされたそうです。
それから一念発起、雲隠れしてどうしたわけか超短期間で歌、演奏ともに見違えるように腕を上げて、町に戻って来ました。
これにはみんなびっくりです。ただの “ひきこもり” になっただけではなかったのです。
それで「あいつはあの四辻(クロスロード)で悪魔に魂を売り渡して、引き換えにブルーズを手に入れた」というクロスロード伝説が生まれました。
こういう逸話が歴史に名を残すには必要なんですね。最も音楽がすごかったからそう言われたわけですが。
ロバート・ジョンソンの音楽は基本的には全てギターの弾き語りです。
しかも誰でも口ずさめるような美しいメロディではありません。
ではなぜ有名かというと、ロック界では英米を問わずエリック・クラプトン、ローリング ・ストーンズ、ライ・クーダー 、ジャズ界ではカサンドラ ・ウィルソンなどのビッグネームが曲をカバーし、ボブ・ディランがロック史の残る名盤「ブリング・イット・オール・バックホーム」のジャケットでチラ見せしているなど、超インフルエンサーたちによって紹介された経緯があるからです。
後世の音楽への影響力絶大でロック、リズム&ブルーズのルーツなどとも言われています。
これがファン心理をくすぐり、興味を持つなというほうが無理というものです。
一聴して聞きやすい音楽とはいえませんが、聞けば強烈な印象と共にミシシッピー・デルタ・ブルーズとモダンブルーズ 、ロックンロール、ロックの歴史、原点を知ることにはなります。
ちょっと足を伸ばせば、さらに周辺のチャーリー・パットンやブラインド・ブレイク、スキップ ・ジェイムスやブラインド・ウィリー・マクテルさんなどもいらっしゃいます。
この際、こういうブルーズの深い闇にハマってみるのもいかがでしょうか。
私がロバート・ジョンソンをまず最初に耳にしたのは1980年くらいでした。
LPレコードで1961年発売の「King Of The Delta Blues Singers Vol.1」と1970年発売の「King Of The Delta Blues Singers, Vol.2」を手に入れてスクラッチノイズの向こうに聞こえるような音を聞いていました。
もちろん1930年代の音楽というものはマスターテープなんぞ残っているはずもなく、ほとんどがSP盤を再生した音源が元になっています。
これが「板起し=いたおこし」と呼ばれます。当時は録音テープは貴重品で、ある程度レコードを作ったらテープを保存などせず使い回していました。
スクラッチノイズが大きく非常にS/Nが悪いのですが、これはこれでプレイヤーで聴いていると趣があります。
それから次にCDの時代になって1990年に「The Complete Recordings」が発表されました。
資料も豊富でありがたいのですが、いかんせん音質に関してはイタオコシなのでノイズが多い、なんか中域の飽和感がきつい、などで全部聴き通すにはかなりの集中力が必要でした。
そして2011年ついに「The Centennial Collection」というコンプリートCDが発表されます。特に何の期待もしないで買ったのですがこれには衝撃を受けました。
「あれ、ノイズがない。音がリアル、演奏している空間を感じる。ああ、素晴らしい、生きててよかった」とロバート・ジョンソンの音楽に再感動するとともに、リマスタリングの技術にも感動しました。
でも世の中には「前のコンプリート・レコーディングスの方が良い、音が好き」という人も一定数いらっしゃいます。なんとも罪深い音質の世界なのです。
演奏
ロバート・ジョンソン ヴォーカル、ギター
*参考としてyoutube音源と最後部にイメージ動画をリンクさせていただきます。
ロバートジョンソンの曲はいろんなスタイルのミックスもあり、単純に分けられるものでもありませんが、独断で分類してみました。
*スローブルーズでスタンダードとなっていくスタイル
Disc 1
01, Kind Hearted Woman Blues 心やさしい女のブルーズ
05, When You Got a Good Friend 良い友達がいるならば
08, Phonograph Blues 蓄音器ブルーズ
11, Dead Shrimp Blues デッド・シュリンプ・ブルーズ
12, Cross Road Blues クロスロード・ブルーズ
17, Kind Hearted Woman Blues2 心やさしい女のブルーズ2
19, When You Got a Good Friend2 良い友達がいるならば2
21, Phonograph Blues2 蓄音器ブルーズ 2
22, Cross Road Blues2 クロスロード・ブルーズ2
Disc 2
04, Hell Hound On My Trail 地獄の猟犬がつきまとう
05, Little Queen of Spade スペードのクイーン
07, Drunken Hearted Man ドランケン・ハーテッド・マン
08, Me and the Devil Blues ミー・アンド・デヴィル・ブルーズ
11, Honeymoon Blues ハネムーン・ブルーズ
13, Milkcow’s Calf Blues 子牛のブルーズ
14, Little Queen of Spade2 スペードのクイーン2
15, Drunken Hearted Man2 ドランケン・ハーテッド・マン2
16, Me and the Devil Blues2 ミー・アンド・ザ・デヴィル・ブルーズ2
20, Milkcow’s Calf Blues2 子牛のブルーズ2
*エルモア・ジェイムスのブルーム調などエレクトリックブルーズに発展していくスタイル
Disc 1
02, I Believe I’ll Dust My Broom ダスト・マイ・ブルーム
04, Ramblin’ On My Mind ランブリン・オン・マイ・マインド
07, Terraplane Blues テラプレイン・ブルーズ ちょっと違いますが同じ傾向です。
13, Walkin’ Blues ウォーキン・ブルーズ 最初だけそういう雰囲気です。後はちょっと違ってきます。
18, Ramblin’ On My Mind2 ランブリン・オン・マイ・マインド2
*同じくエレクトリックに取り入れられ、シャッフルのノリでたたみかけるようなスタイルに発展するもの
Disc 1
03, Sweet Home Chicago スウィート ・ホーム・シカゴ
15, Preachin’ Blues プリーチン・ブルーズ
Disc 2
02, Steady Rollin’ Man ステディ・ローリン・マン
09, Stop Break-in’ Down Blues ストップ・ブレイキング・ダウン・ブルーズ
17, Stop Breakin’ Down Blues2 ストップ・ブレイキング・ダウン・ブルーズ2
*チャーリー・パットンから続く、トップ・オブ・ザ・ワールド調
Disc 1
06, Come On in My Kitchen カモン・イン・マイ・キッチン
14, Last Fair Deal Gone Down ラスト・フェア・ディール・ゴーイン・ダウン
20, Come On In My Kitchen2 カム・オン・イン・マイ・キッチン2
*軽快なノリのカントリーブルーズ
Disc 1
09, 32-20 Blues 32-20型ブルーズ
16, If I Had Possession Over Judgement Day 審判の日を意のままにできたら
Disc 2
01, Stones In My Passway ストーンズ・イン・マイ・パスウェイ
*コマーシャルソング的なもの
10, They’re Red Hot ゼイ ・アー・レッド・ホット
*フォークソング的な割と滑らかなメロディを持つスタイル
Disc 2
03, From Four Until Late 4時からずっと遅くまで
06, Malted Milk 麦芽ミルク
12, Love in Vain Blues むなしい恋
19, Love in Vain Blues2 むなしい恋2
*チャーリー・パットンから続き、マディ・ウォーターズにつながるローリン・アンド・タンブリン調
Disc 2
10, Traveling Riverside Blues トラヴェリング・リバーサイド・ブルーズ
18, Traveling Riverside Blues2 トラヴェリング・リヴァーサイド・ブルーズ2
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