1965年に亡くなるまでジャズ 界を牽引して注目を集め、数々の影響を後世に残したテナーサックス 奏者のジョンコルトレーンです。
ジャズに興味がない人というでも名前くらいは知っているような超有名アーティストです。
誰でもコルトレーンについて好きな曲、たとえば「マイ・フェイバリット・シングス」とか「イン・ア・センチメンタル・ムード」、好きなアルバム「ブルー・トレイン」や「バラッズ」などあると思います。
しかし悲しいかな、そういう名曲、名演を聴くほどに本当の彼をわかったような気持ちにはなれない、というよりなってはいけない人に感じるのです。
そういうのところが普通のミュージシャンとは立ち位置が違います。
コルトレーンは音楽はバップ で始まり、民族音楽などを経由してフリー、アヴァンギャルドで終わります。
時系列で追えば音楽の変化はわからなくもないのですが、彼は終いには音楽を超えたものを求めていたとか、哲学的で常人では理解できない境地に達していたとか怖いことまで言われてます。
また一方ではシンプルに考えれば、常に自分を追い込まずにいられない人だったと、それだけかもしれません。
ということでコルトレーンについては哲学的、精神的な追求や考察などということはここではやめます。
私にとっては如何に素晴らしい音楽を残したか、それだけです。それでいいもん。
そこで一番聴いたアルバムを考えると、やっぱり「ブルー・トレイン」か「マイ・フェイヴァリット・シングス」となります。もしかしたらマイルス と演った「リラクシン」かもしれません。
ほらここで「何、そんな上っ面を撫でたような有名どころが好き、くらいでコルトレーンを語るのか」とお怒りの貴兄もいらっしゃるでしょう。
しょうがありません。個人的には後期インパルスあたりまで完全制覇するにはもうちょっと時間が必要です。はい。その前に電化マイルス もエリントン もまだまだあります。
そういうコルトレーンに関してはまだまだ発展途上、じゃなかった大いなる伸びしろのある奴が語るジョン・コルトレーンおすすめアルバムがこの「マイ・フェイヴァリット・シングス」です。
そう、この曲はコルトレーンの演奏ではありませんがJR東海の「そうだ、京都に行こう」で長らくテーマ曲として使われていましたので、ぼちぼちジャズを聴こうかなと思っている年代の方は必ずと言っていいくらい耳にしたことがあるメロディです。
リリースは1961年、アトランティック・レコードからです。前年には「ジャイアント ・ステップス」というこれまた重要作品をリリースしています。
聴いているだけではわかりませんが、「シーツ・オブ・サウンド」と言われる音の絨毯とコード解析の難しさから肉体的、理論的にとんでもない挑戦をやっているアルバムです。
いまだにいろんな演奏家の研究対象となっています。
「マイ・フェイヴァリット・シングス」はそこを通り抜けて一旦、メロディ重視に戻った安らぎのアルバムとも言えます。(緊張感はありますけどね)
この2年後にはまた力を抜いた「バラッズ」をリリースします。コルトレーンの場合は脱力して適当に手を抜いて作ったアルバムの方が売れてます。(緊張感はありますけどね)
「マイ・フェイヴァリット」はこの後、ライブには欠かせない必殺チューンとなり一生涯演奏を続けました。有名なところでは1965年に録音して1969年にリリースされた1曲スタジオ、1曲ライヴの「Selflessness featuring My Favorite Things」というアルバムです。
訳すると「無我フューチャリング物欲煩悩」というこれまた奥深いのかジョークか解らないような名盤であります。(テナーサックスでの演奏が素晴らしいということで名盤なんですよ)
アルバム「マイ・フェイヴァリット・シングス」のご紹介です。
演奏
ジョン・コルトレーン ソプラノサックス、テナーサックス
スティーヴ・デイヴィス ベース
エルヴィン・ジョーンズ ドラムス
マッコイ・タイナー ピアノ
トム・ダウド、Phil Iehie エンジニアリング
ビル・イングロット、ダン・ハーシュ デジタル・リマスタリング
曲目
*参考までにYoutube音源と動画をリンクさせていただきます。
1, My Favorite Things マイ・フェイヴァリット・シングス
言わずと知れた有名曲です。ソプラノサックスがどうとかベースがレジー・ワークマンやジミー・ギャリソンじゃないとか、一切のノイズを捨ててただただ凛とした音楽を聴いて楽しんでもらいたいと思います。
2, Every time We Say Goodbye エヴリタイム・ウイ・セイ・グッドバイ
(作曲 コール・ポーター)
とても綺麗なメロディのバラードです。ゆったりとしたリズムがたまりません。コルトレーンは主旋律しか吹きません。ソロはピアノです。マッコイ・タイナー らしいピアノソロが良いです。
3, Summertime サマータイム
気怠いイメージと違って元気よく始まるサマータイムです。コルトレーン得意のシーツ・オブ・サウンドのソロが楽しめます。ピアノ、ベース、ドラムとソロが続いて入っています。ドラムソロからコルトレーンが入るところがかっこいいのです。
4, But Not For Me バット・ノット・フォー・ミー
軽やかに演奏しています。コルトレーンのソロが最初はメロディ 重視で演っていますが途中から超絶音数になります。でもまたコード的展開に戻るんですね。ピアノソロはマッコイにしてみれば軽く流した感じです。
私の持っている音源はリマスター のモノラルとステレオの音源があります。サックスの音の太さとかはモノラルのほうが勝ちますし、音の空間を感じます。純粋に音楽を聴くという点ではモノラルは素晴らしいと思います。
でも私としてはステレオヴァージョンでの「マイ・フェイヴァリット・シングス 」の左のマッコイのピアノと右のコルトレーンのサックスが、相手の間合いを見ながら楽器で会話する瞬間とか、「サマータイム」での左のエルヴィンと右のコルトレーンの丁々発止のせめぎ合いと途中からマッコイの助太刀とかを感じられて、これがなかなか面白いのです。
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