2022年、1970年公開の映画「レット・イット・ビー」を再編集した「ゲット・バック」が公開されました。
合わせて、嬉しいことに映画のハイライトとなったアップルビルの屋上でのライブ、伝説のルーフトップ・コンサートの全貌がまとまった形で聴けるようになったのです。
なぜ君は今頃になって、と思われる貴兄もいらっしゃるかと思いますが、実はHD TRACKSで最近、上がってきたからでございます。
これはCD、レコードなどのメディアでは販売されず配信のみです。
当時はディズニーのアコギな高額配信(?)に馴染めなくて映像版は深入りしなかったのですが、これは個人的になかなか価値のある配信です。
自分でも非常に珍しい種類の人間だと自覚しているのですが、私のビートルズ感は独特です。
そりゃあ「ヘイ・ジュード」とか「イエスタディ」とか「サムシング」とかはもちろん名曲だと思います。
万人が認めているものに異論はありません。
しかし実のところ好きな曲というのは別のところにあるのです。
日ごとに好きな曲は変わるものの、個人的ビートルズ・ベスト20くらいになるとそんなに入れ替わりはありません。
その中には「イエス・イット・イズ」とか「セクシー・セディ」「フォー・ノー・ワン」は必ず入っています。
もっというと「アイヴ・ガッタ・フィーリング」と「ディグ・ア・ポニー」「ドント・レット・ミー・ダウン」というアルバム「レット・イット・ビー」の収録曲もかなりの高位置につけているのです。
何が好きかというとこの3曲、ジョンとポールのブラック・ミュージックの影響、いやというよりロックからのブラック・ミュージックへの感謝を込めたご返礼みたいなものが感じられるのです。
ビートルズの後期においては「オー・ダーリン」「カム・トゥゲザー」「アイ・ウォント・ユー」などある意味黒っぽさ全開なナンバーが多いのも素敵なところです。
映画「レット・イット・ビー」制作時のここでも「ビリー・プレストンもいるし、一丁好きなことやったろうぜ」、という感じが伺えるのです。
以前からルーフトップ・コンサートなどと言われていましたが、「ゲット・バック」を3テイク演奏してたりするので、コンサートというよりオープン・リハーサルという感じですね。
しかもこのシンプルな音、特にギターなんかはマーシャルのアンプとかを使った歪系ではなくナチュラル・オーバー・ドライブです。
それでもこれだけまとまった演奏を聴かせてくれるのですから「ビートルズはヘタ」というのは違うと思います。
時は1969年1月30日、酷寒のロンドンです。
雪ではないにしろ、それらしく鉛色の空に覆われていました。
小雨も降っていたようです。
ジョンはヨーコの上着を、リンゴは妻モーリンのレインコートを着て演奏に臨みました。
資料によるとジョージとリンゴは当初、このパフォーマンスには乗り気ではなかったようです。
確かにジョージの曲は演奏されていませんし、ジョージは張り切ってソロを取る感じでもありません。
この時、ビートルズの核となっているのはポール・マッカートニーです。
ポールはライブバンドに戻るべきと思っていました。
ビートルズを続けたかったのです。
ジョンと監督のマイケル・リンゼイ・ホッグがポールにこの企画を持ちかけると、ポールは俄然乗り気になったそうです。
ビートルズの初期にジョンと作って没にした曲「ワン・アフター・909」もあらためて演ることにしました。
多分、ポールとしてはバンドがギスギスしているのは、初期の頃のようにライブ漬けで一緒に行動していないからだと思っていたようです。
にしても映画「レット・イット・ビー」の中では一番やりたいようにやっているポールです。
アタリもきついと感じるところがあります。
これで “自分が一番みんなに気を遣っている” と思っているところが、さすがに天才ならではの感覚でございます。
アルバム「ゲット・バック(ザ・ルーフトップ・パフォーマンス)」のご紹介です。
曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。
(トラック7以外は全てレノンーマッカートニーの作品です。
- Get Back (Take 1) ゲット・バック(テイク1)
サウンドチェックの後に始まります。床を踏んで状態を確認したりしています。ビリー・プレストンのエレピもいい感じです。このアルバムではビリー・プレストンの存在が欠かせません。 - Get Back (Take 2) ゲット・バック(テイク2)
テイク2はテイク1に比べるとまとまってきています。ソロも含めてジョンのギターのフレーズはほぼ変わっていないのでかなり練ったフレーズだったのですね。サビのところでアルペジオとコードをかき鳴らすフレーズを律儀に演ってくれています。 - Don’t Let Me Down (Take 1) ドント・レット・ミー・ダウン(テイク1)
これもジョン・レノン流のソウル・ミュージックです。ポールのベースも良くて、改めてヘフナーはこういう音も出せるんだと思います。個人的にも好きな曲なんですが、贅沢を言わせてもらうとサビから始まらない方が展開がドラマチックでいいかなと思ったりしていました。 - I’ve Got a Feeling (Take 1) アイヴ・ガッタ・フィーリング(テイク1)
ポール・マッカートニーの歌が素晴らしいのです。この人、ベースを弾きながらよくこんなに歌えるもんだと思います。音の分離が良くなったことで「やっぱり自分が歌っている時はベース演奏は荒くなってるなあ」とか瑣末なことまで楽しめます。 - One After 909 ワン・アフター909
ビートルズがまだデビューする前にできていた曲だそうです。曲が終わるとジョンが「ダニー・ボーイ」の1節を口ずさむのです。 - Dig a Pony ディグ・ア・ポニー
最初はインストで音合わせをしてから始まります。ジョンの熱唱です。アルバム「レット・イット・ビー」のバージョンが耳に染み付いていもので、「All I Want Is You」をカットしたのはわかる気もします。 - God Save the Queen ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン
(Traditional, arranged by Lennon, McCartney, Harrison, and Starkey)
ちょっとした遊び心。 - I’ve Got a Feeling (Take 2) アイヴ・ガッタ・フィーリング(テイク2)
テイク1と比較してベースがとっても安定してきました。曲の終わりにジョンが
「ア・プリティ・ガール・イズ・ライク・ア・メロディ」の歌詞を歌うのでした。 - Don’t Let Me Down (Take 2) ドント・レット・ミー・ダウン(テイク2)
「青盤」のスタジオバージョンと比較してもそんなに差がない演奏力です。改めて上手いバンドだと思います。特にポール・マッカートニーのベースが歌っています。 - Get Back (Take 3) ゲット・バック(テイク3)
ここに来ると警察が入ってきて電源を落とされたり、また入れ直したりで各楽器の音がなくなったりします。
「レット・イット・ビー」のバージョンはスタジオの演奏にルーフトップのライブでの会話ををミックスしたりしているようです。
演奏
ザ・ビートルズ
- ジョン・レノン
リードボーカル、バッキングボーカル、リズムギター。「ゲット・バック」ではリードギターを担当。 - ポール・マッカートニー
リードボーカル、バックボーカル、ベースギター - ジョージ・ハリスン
バッキングボーカル、リードギター。「ゲット・バック」ではリズムギターを担当。 - リンゴ・スター
ドラム
ゲスト・ミュージシャン
- ビリー・プレストン
フェンダー・ローズ・エレクトリックピアノ
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