ブリティッシュ.ハードロックの代表格、レッド・ツェッペリンの1969年初頭にリリースされたファーストアルバムです。
母体となったのはヤードバーズというブルースロックのバンドですが、最終的にはそのバンドのメンバーはジミー・ペイジしか残っていません。
最初はニュー・ヤードバーズと名乗っていましたが、レッド・ツェッペリンに改名します。
当初はジェフ・ベックと2人ギター体制で、ザ・フーで活躍していたキース・ムーンとジョン・エントウィッスルもひこ込もうという計画もあったようですが、これは企画倒れになります。
一応はそのメンツでスタジオ入りはしたらしく「ベックス・ボレロ」という曲を録音しています。
のちにジェフ・ベック・グループで日に目を見ます。
両方の説があり、どちらかはっきりしませんが、キース・ムーンかジョン・エントウィッスルのどちらかの案で「最大の失敗者」という意味でレッド・ツェッペリンというバンド名になりました。悲惨な結果という意味の「鉛の風船」が「Lead Zepperinn」になり、aを取って「Led Zeppelin」にしたそうです。
1st、2ndのアルバムジャケットにはツェッペリン博士が設計したヒンデンブルク号のデザインが使用されました。
ハードロック、へヴィーメタルの出発点と言われるレッド・ツェッペリンの始動です。
エリック・クラプトンのいたスリーピースバンド、クリームはブルーズをベースにハードにドライヴさせるサウンドでしたが、ツェッペリンはさらにダイナミックに、より重量級のサウンドを目指します。
比較されるのは同じヤードバーズにいたジェフ・ベックのバンド、ジェフ・ベック・グループです。
ファースト・アルバム「トゥルース」がツェッペリンより早く1968年7月29日にリリースされています。
これもハードロック登場時の名盤です。
当然ながらジミー・ペイジはこれに相当影響を受けたとと思われます。
両グループともにブルーズをベースにハードなリズムと大音量でぶちかますというスタイルです。
ジェフ・ベック・グループは色々とあって長続きしませんでしたが、ツェッペリンはジミー・ペイジの商才あるプロデュースによって戦略的に発展していきます。
そして最終的にツェッペリンは世界的に大成功しました。音楽的にも幅を広げてトラディショナルとかワールドミュージック的なものを取り入れてより進化していくことになります。
今から見るとこのファーストアルバムのツェッペリンはまだそんなに音が太く、厚い感じはしません。
音楽は今までのロックにはなかったダイナミックさを持っていますが、ギターサウンドはテレキャスター中心のシンプルなものです。
後のアルバムで見られるギターオーケストレーションみたいな物は見られません。
それはまだマルチトラックが当たり前の時代ではありませんでしたのでそこはしょうがないことでした。
そういうことを差し引いても素晴らしい楽曲とアレンジが満載で、すでにツェッペリンの音楽観は出来上がっています。
このアルバムは不思議なことにオリジナルよりも2014年リマスター盤の方がヒットチャートの上位に食い込むというまさに時代を超えた名盤となっています。
1969年 最高位10位、2014年 最高位7位です。
余談ですがいつも感じることがあります。ヤードバーズ時代のジミー・ペイジの写真を見ると妙にナルシストでオタクっぽい感じが出ていて思わずニヤけてしまうのです。
いつもほか全員がマッシュルームカットの中で一人長髪横分けなんです。やはりアーティストと言われる人というのは、特に音楽の世界ではですが、相当にナルシストで意思の強さを持っていないと革新的なことはできないのではと改めて思う次第です。(個人の感想です)
アルバム「レッド・ツェッペリン 1」のご紹介です。
演奏
ロバート・プラント リードヴォーカル、ハーモニカ
ジミー・ペイジ ギター、ペダルスティールギター、バッキングヴォーカル
ジョン・ポール・ジョーンズ ベースギター、オルガン、バッキングヴォーカル
ジョンボーナム ドラムス、ティンパニ、バッキングヴォーカル
ヴィラム・ジャサーニー タブラー (ブラック・マウンテン・サイド)
プロデューサー ピーター・グラント
グリン・ジョーンズ ミキシング・エンジニア
ジョージ・ハーディ カバーデザイン
クリス・ドレア バックカバーデザイン
ジョージ・マリノ CDリマスタリング
ジョン・デイヴィス 2014年リマスタリング
曲目
*参考までに最後部にyoutube音源をリンクさせていただきます。
01, Good Times Bad Times グッド・タイムズ・バッド・タイムズ
インパクトあるドラムの音で始まります。ヴォーカルもベースもギターもハードロックのお手本のようです。
・ドラムのイントロだけでつかみはOK
・今までになかった力強いハイトーンヴォーカル
・縦横無尽に駆けずり回るベースギター
・ドライブするギターリフと、ブレイクの後の瞬発力あるギターソロ
など何度聴いても鳥肌ものです。
3分に満たない演奏ですが、短いながらも完璧です。なんかもう実家にいるような安心感です。(ちょっと使い方が違っていますね)
「コミュニケーション・ブレイクダウン」をB面にしてでシングルカットされましたが、アメリカではビルボードで80位と大ヒットにはなりませんでした。
やっぱりツェッペリンはアルバム単位で聴くバンドです。
02, Babe I’m Gonna Leave You ベイブ・アイム・ゴンナ・リーヴ・ユー
原曲は1950年代にアン・レナード・ブレドンによって書かれた曲と言われています。1962年にフォーク歌手のジョーン・バエズによって広がりました。もちろんツェッペリンはアコースティックギター主体ながらハードアレンジで演奏します。
こういうアコースティックでトラディショナルな雰囲気もツェッペリンは最後まで持っていました。でも個性が強いため普通のフォークソングにはなりません。
03, You Shook Me ユー・シュック・ミー
シカゴブルーズのウィリー・ディクソン作、マディ・ウォーターズの歌で有名なブルーズスタンダードです。ジェフ・ベック・グループもカバーしています。
もちろんブルーズが好きということもあるのでしょうが、半年前にリリースされたジェフ・ベック・グループと敢えて同じ曲をやって、バンドカラーの違いを見せたかったのだと思います。
比べると荒々しくヴォーカルのロッド・ステュアートと対決するようなベックに対して、ツェッペリンの方はよりまとまっておりシンプルで重いサウンドです。
04, Dazed and Confused デイズド・アンド・コンフューズド
1967年にアメリカのシンガーソングライター、ジェイク・ホームズによって作られた曲のカバーです。ヤードバーズでも演奏されました。ジミー・ペイジはボウイング奏法(ヴァイオリンの弓でギターを弾くやつね)をやってます。
重々しく半音下降していく印象的なフレーズで始まり、途中で叩きつけるような展開と全員でドライヴする展開が待っています。ライブ向きの曲です。
05, Your Time is Gonna Come ユア・タイム・イズ・ゴンナ・カム
冒頭1分を超える荘厳なパイプオルガンで始まります。改めてジョンジーのアレンジの才能を感じさせます。まるで雲の間から日光が差し込むような雰囲気を味わえる癒しチューンです。
リマスターによって2分40秒あたりのギターの弦を叩く雰囲気がはっきりわかるようになりました。
ツェッペリンならではの名曲です。
06, Black Mountain Side ブラック・マウンテン・サイド
「ダウン・バイ・ブラックウォーター・サイド」というアイルランド民謡をアレンジしたインストナンバーです。
オリジナルは歌があります。
07, Communication Breakdown コミュニケーション・ブレイクダウン
如何にもなハードロックリフを使った有名曲です。今の音楽と比較すると軽いギターの音です。
テレキャスターだしね。
この単調とも言えるリフでメロディーをつけて歌えるロバート・プラントはすごいなあと昔から思っていました。
トラック1と同様、タメていきなり全力疾走という瞬発力のあるギターソロもいいです。うねるベースもすごいと思います。
08, I Can’t Quit You Baby アイ・キャント・クイット・ユー・ベイビー
これもシカゴブルーズのウィリー・ディクソン作、オーティス・ラッシュの演奏で有名なブルーズスタンダードです。
ジミー・ペイジの特徴はブルーズのギターソロでも歌うようなフレーズでメロディアスなところです。
聞いているとやはりみなさん、こういうのがお好きなんですねえ。と思わずにいられません。
それとレッド・ツェッペリンの手にかかると泥臭いブルーズにはならないのです。
09, How Many More Times ハウ・メニ・モア・タイムズ
さらにブルーズナンバーが続きます。今度はリフ主体で迫ります。
ブルーズスタンダードでハウリン・ウルフで有名な「ハウ・メニ・モア・イヤーズ」という曲があります。それにインスピレーションされていると思われます。
またサウンドのベースはアルバート・キングの「ザ・ハンター」に基づきます。またまたジミー・ペイジのボウイング奏法が登場します。
曲中7分前後のロバート・プラントのシャウトがまさにハードロックです。
ジミー・ペイジはキャラの強い、優秀なメンバーに恵まれて、この後10年以上「レッド・ツェッペリン」をうまくプロデュースしてハードロックの帝王として君臨することになります。
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