「1981年の空気感、スワンプでレイドバックしながらもほのかにシティ感覚、AORの香りもするJ.J.ケイルの傑作です。」Shades / J.J.Cale / シェイズ : J.J.ケイル

 1981年にリリースされたJ.J.ケイルの6枚目のアルバム「シェイズ」です。
ジャケットはどうみてもフランスのタバコ「ジタン」のデザインを真似ています。

当時はこの一見おしゃれな雰囲気が私がケイルを遠ざける一因となっていました。
ケイルの魅力に身づいたのはこのアルバムから5年以上経った時です。

もちろん今では当然ながら(?)アルバムコレクションとして、正規リリースもの全てを網羅しております。
1972年のデビュー作「ナチュラリー」から2009年の「ロール・オン」までの14枚のスタジオ録音とライブアルバム1枚、エリック・クラプトンとの共演作1枚です。(謎のマウントを取ります) 

ちなみにこの「シェイズ」のジャケットデザインはきっとケイルのアイデアではありません。
ケイルなら絶対、タバコといえばマルボロしか考えつかないと思います。(個人の感想です)

このアルバムがリリースされた頃、巷では「愛のコリーダ」とかジャーニーやデュラン・デュラン、ホール&オーツが洋楽の中心でした。
そういうのに引き換えなんとも地味な・・・じゃなかった滋味あふれるアルバムとなっております。

そういうJ.J.ケイルは一生付き合えるタイプです。
聴いているとエリック・クラプトンやマーク・ノップラーが積極的にケイルのギタースタイルや歌い方など、さらには音楽に対する姿勢までも取り入れたのがわかります。

J.J.ケイルを聴いていると、自分にとっての音楽とはなんだろうかと考えさせられます。

彼の音楽には喜怒哀楽以外の「ほのぼの」、「しみじみ」、「ぼちぼち」なんていう情感が感じられるのです。

今のスピード感あふれる情報社会だからこそ、そういうスワンプでレイドバックを体現したようなJ.J.ケイルの音楽をぜひ一度味わってみていただきたいと思います。

おおらかさや包容力、テキトーであることの素晴らしさを教えてくれます。

2013年7月26日に74歳で亡くなってからもう10年以上の年月が過ぎ去りましたが、彼のような存在感のあるミュージシャン、ギタリストは未だ他には存在していないように思えます。

そういえば、普通にケイルのアルバムで一番有名なのはアライグマジャケットのファーストアルバム「ナチュラリー」なのですが、個人的にどうも苦手な部分がありました。

それはあの初期形態のリズムボックスの音です。

なぜかといいますとその昔、私が働き始めたのは某有名国内楽器メーカーの電気、電子楽器のリペアー部門でした。

その頃から業務用のアナログミキサーやキーボードなどにメトロノームがわりに電子リズムボックスが付いていました。
アナログ回路でトランジスター、ダイオード、コンデンサー、コイル、抵抗器だけで音とリズムが作られています。
ドン・チャ・ドン・チャ・ジータタ・ジータタというあれです。
基本的なリズム、8ビートや単語、ワルツ、ボサノヴァなどがプリセットされている無機質な音でありました。

そういうのをリペア、メンテナンスしていた身としては「あつ、それ大丈夫です。もうお腹おっぱいです」という感じになってしまうのです。

なのでJ.J.ケイルもファーストだけは体質に合わないと避けてきたのです。

デモテープの音を逆手に取ったような小洒落たアイデアなんでしょうが、私に取ってはJ.J.ケイルの本質、魅力に近づくことに遠回りの結果となっていました。

でもあからさまなリズムボックスの音はファーストのみで、以降はあまり気にならなくなったものです。
というか流石にサンプリングの時代になると打ち込みリズムも細分化されて本物と違わぬ状態になりましたし。

例えば2009年にリリースされた生前最後のスタジオアルバム「ロール・オン」などでも打ち込みリズムを使っていますが、これはさほど気にならないというか、オリジナリティさえ感じます。
ここに時代の流れというか技術の進歩が身に染みるのでした。

ちなみにこの時期「シェイズ」や「グラスホッパー」では全ての曲でドラムを使っています。

JJ Cale
For JJ Cale’s 80th birthday, explore his dedicated YouTube channel and (re)discover the prolific world of JJ Cale. "Stay Around" new album available here : w...

J.J.ケイルは変わり者でした。
メディア嫌いだったと言われています。
2004年の13枚目のスタジオアルバム「トゥ・タルサ・アンド・バック」まではアルバムジャケットに自分の顔写真を使いませんでした。(8枚目のアルバムにサングラス姿の白黒ポートレイトはあります)

またこの8枚目のアルバムまではアルバムタイトルが一つの単語で統一されていました。
「Naturally」「Really」「Okie」「Troubadour」「5」「Shades」「Grasshopper」「#8」と続きます。

通して聴くと再確認できるのですが、ケイルのアルバムはいつもそうそう変わることはありません。
そこがいいところでもあるのですが、個人的な感想としてはこの「Shades」と次の「Grasshopper」あたりはやや時代に合わせたように、というかAORに近い感じでシティ感覚があるように思います。

ケイルの音楽の元となっているのはカントリー、ブルーグラス、ブルーズ、フォークなどのアメリカントラディショナルなモノですが、この時期はケイルのアルバムの中ではアーシーな部分、ブルーズやカントリー風味が若干控えめになっている時期です。

といいつつも所詮は不器用なタルサ・カントリーのケイルです。
シティ感覚といってもおしゃれでハイソサエティな世界ではありません。

聴いていて思うのはバックのミュージシャンが曲毎に変わっているにも関わらず、全体的にに同じような質感が貫かれていることです。

レコーディングはナッシュビルとロサンゼルスの様々なスタジオを使ってレコーディングされています。
そしてバックはナッシュビルの腕利きミュージシャンたちとLAの職人集団、レッキング・クルーです。

そういえばここのところキャロル・ケイを筆頭に、レッキング・クルーの存在が改めて見直されてきていますね。

音楽を知れば知るほどの、なるほどな世界でございまする。

アルバム「シェイズ」のご紹介です。

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演奏と曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Carry On キャリー・オン

J.J.ケイル  ヴォーカル、エレクトリック・ギター
クリスティーン・レイクランド  ピアノ
トミー・テデスコ  リズムギター
レジー・ヤング  ギター・ソロ
キャロル・ケイ  ベース
ラス.カンケル  ドラムス

お得意の軽く走るタイプのリズムで始まります。ギターソロも快調です。人生に小さな困難はつきもの、やるしかないさと歌います。この人は力を込めて歌い上げないところがいいのです。

2,   Deep Dark Dangeon ディープ・ダーク・ダンジョン

J.J.ケイル  ヴォーカル、エレクトリック・ギター
ジョニー・クリストファー  リズムギター
トニー・コグビル  ベース
ケネス・A・バトリー  ドラムス
デイヴィッド・ブリッグス  キーボード、ピアノ

これもお得意のJ.J.ケイル流ブルーズです。歌詞の内容はハードです。シャッフルと3連のリズムはシカゴ・ブルーズの巨人エルモア・ジェイムスを軽くユルくした感じです。(褒めてます)

3,   Wish I Had Not Said That ウイッシュ・アイ・ハド・ノット・セッド・ザット

J.J.ケイル  ガット弦技ギター、エレクトリック・ギター、ピアノ
クリスティーン・レイクランド  モーグ・シンセサイザー、ピアノ、パーカッション
レジー・ヤング  ギター・ソロ
マイケル・ローズ  ベース
ヘイワード・ビショップ  ドラムス

このリズム、こういう朴訥とした感じがケイルらしいところです。時間を忘れてしまいそうです。
歌詞は「あんなこと言わなきゃよかった」、という内容です。

4,   Pack My Jack パック・マイ‘ジャック

J.J.ケイル  ヴォーカル、エレクトリック・ギター
ジェームズ・バートン  エレクトリック・ギター
エモリー・ゴーディー・ジュニア  ベース
ジム・ケルトナー  ドラムス
グレン・ハーディン  ピアノ

ウォーキングベースのリズムに乗って飾り気のないギターでブルーズを奏でます。バックビートのピアノもいい感じでセッションをみんなで楽しんでいます。ピアノのグレン・ハーディンさんはカントリー畑のミュージシャンです。
内容はトラブルがついて回るという、不運な男の歌です。

5,   If You Leave Her イフ・ユー・リーヴ・ハー

J.J.ケイル  ヴォーカル、エレクトリック・ギター、ドラムアレンジ、ピアノ
ビル・ポートマン  エレクトリック・ギター(リズム)
ニック・ラザー  ベース
ジミー・カースタイン  ドラムス
ラリー・ベル  エレクトリック・ピアノ

短いながらもカッチリまとまっている曲で、ソロはケイルの微妙なピアノです。
エリック・クラプトンが歌っても違和感がなさそうです。お互い歌い方も似ています。
しかも「君は僕が彼女を愛するほど彼女を愛していない」という歌詞はまんまパティ・ボイドをめぐるクラプトンとジョージ・ハリソンの関係ではないですか。

6,   Mama Don’t ママ・ドント

J.J.ケイル  ヴォーカル、リズムギター、エレクトリック・ギターソロ(2nd)
レジー・ヤング  ギター・ソロ
ジョニー・クロストファー  リズムギター
トニ^`コグビル  ベース
ケネス・A・バトリー  ドラムス
デイヴィッド・ブリッグス  エレクトリック・ピアノ

「ママ、ここでギターを弾くのを許さないで」から始まって「ベースを弾くのを許さないで」「ドラムを叩くのを許さないで」「ピアノを弾くのを許さないで」ときて「マリファナを吸うのを許さないで」となります。ボブ・ディラン風の歌い方でもあります。
ロックンロールのロールの部分というか、ソロになった時に加速感を感じるような演奏が素晴らし過ぎます。

7,   Runaround ランアラウンド

J.J.ケイル  ヴォーカル、エレクトリック・ギター
エモリー・ゴーディー・ジュニア  ベース
ハル・ブレイン  ドラムス
ビル・ペイン  ピアノ

今度はノスタルジックなR&Bフレーバーです。もうこの辺は安定のJ.J.ケイル。
タイトルは「回りくどい」とか「たらい回し」と訳されています。

8,   What Do You Expect あんたの望むもの

J.J.ケイル  ヴォーカル、エレクトリック・ギター
ゴードン・シュライラック  エレクトリック・ギター
ニック・ラザー  ベース
ゲイリー・アレン  ドラムス
レオン・ラッセル  エレクトリック・ピアノ

伝統的な列車のリズムです。本来ならポール・バターフィールドみたいに歌いあげるところですが、ケイルはいつものようにぼそっと歌います。それでもサマになるところが素敵です。
内容は君のために全てを捨てて頑張ってきたけど、君にとって僕は・・・というよくある内容です。
邦題が「あなた」ではなく「あんた」になっているところがまた・・・。

9,   Love Has Been Gone 過ぎし日の恋

J.J.ケイル  ヴォーカル、エレクトリック・ギター
トニー・コグビル  ベース
カール・ヒンメル  ドラムス

これも短いながら(全部短めですが)キャッチーな曲です。脱力系の面目躍如というところです。

10,  Cloudy Day クラウディ・デイ

J.J.ケイル  ヴォーカル、エレクトリック・ギター
ニック・ラザー  ベース
ゲイリー・アレン  ドラムス
デニス・ソレー  サックス

最後は珍しく5分を超える(J.J.ケイルにとっては)大作です。インストでギターに始まりサックスのソロが堪能できます。なんか昭和を感じるムード歌謡というか演歌っぽいなあ、と思わず笑ってしまいそうです。終わり方まで演歌です。

テクニカル
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レス・ラッド  エンジニア
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