ハンク・モブレーは1950年代から1960年代にかけてのハードバップ期に活躍したテナーサックス奏者です。
ブルーノートのアルバムが人気です。1950年代から60年代にかけて数々の質の高いアルバムをリリースしました。
私は個人的にブルーノートといえばハンク・モブレーとグラント ・グリーン、スリー・サウンズあたりを思い出したりします。
日本のジャズ界では1980年代くらいまでモブレー(というよりまとめて上記3者とも)の評価は高くなく、1.5流、2流に近い扱いをされている感がありました。
なぜかというとマイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンなどとは違って、ジャズの歴史の中でも画期的な音楽を編み出したり、時代のリーダーとして周りを牽引していったなどの巨匠では無いからです。
どちらかと言えばもっと身近で、親近感が持ててお友達になりたいというイメージです。
いろんな人たちから愛聴盤としては出てきますが、重要人物とか歴史的名盤とは言われません。
というふうに小物感ある存在でしたが、それでも今日まで残り続け、再発、リマスターされ続けています。そして近年はまたまた大きく評価されるようになり、一回りして今の時代にはあっているのかもしれません。
来歴
ハンク・モブレーは1930年7月7日、ジョージア州イーストマンで生まれ、ニュージャージー州エリザベスで育ちました。
音楽一家で幼少の頃からピアノを弾いていたそうです。
16歳の時、病気で数ヶ月間家で療養します。その時に祖母からサックスを買ってもらいました。
本を読み、独学で練習して19歳の時に地元のバンドで音楽活動を始めます。
数ヶ月後にはディジー・ガレスピーやマックス・ローチとも共演できるようになりました。
チャーリー・パーカーはまだ若いモブレーの演奏を聴いた時、もっとブルーズ音楽から影響を受けるようにアドバイスしたそうです。
その後順調に活動を続けブルーノート以外にもサヴォイやプレスティッジなどのレーベルにリーダー作だけで30枚以上のアルバムをリリースしました。
1986年5月30日にペンシルヴァニア州フィラデルフィアで肺炎で亡くなりました。まだ55歳でした。
モブレーは時にこってりとした巨匠の音楽からちょっと離れて、フッと安らぎたい時に聴くと良い音楽なのです。癒されます。
演奏は丁寧で、滲み出るファンクネスとかブルーズフィーリングを感じます。そこが好きになったらもう離れられなくなるのです。
いつでもモブレーのサックス大先輩のアドバイスに従ってブルーズを歌っています。また作曲能力も相当で、メロディアスな曲をいっぱい残しています。
ちなみにモブレーをWIKIで見てみると(以下引用)
レーナード・フェザーより「テナー・サクソフォーンのミドル級チャンピオン」と呼ばれたことで知られ、ジョン・コルトレーンほど鋭くもなければスタン・ゲッツほど円やかでもない音色を指している。付け加えると、モブレーの音楽様式は、とりわけソニー・ロリンズやコルトレーンと比較すると明らかなように、落ち着きがあって精妙かつ歌謡的であり・・・ (引用終了)
うわぁ これって遠回しにディスってませんか。
で、本題の「ソウル・ステーション」についてです。
私にとっても定期的に聴きたくなる愛聴盤です。そういう人もいっぱいいると思います。ブルーノートでの作品で、1960年にリリースされました。
モブレーのワンホーンカルテットの代表作とされます。
テナーサックスのモブレーの他にピアノのウイントン・ケリー、ベースのポール・チェンバース、ドラムのアート・ブレイキー というちゃんと周りに気を配れる「おとな」のバックメンバーを揃えたことがここで勝因となりました。
こういう人たちが良いアルバム誕生時には不可欠です。バックはみんな自分の主張はとりあえず押さえて、主役のモブレーを盛り上げていやろうとしている様子がありありです。
反対にデューク・エリントン 、チャールズ・ミンガス、マックス・ローチでセッションした「マネー ジャングル」というアルバムがあるのですが、全員超一流なのにいまいち売れる名盤とならない理由もなんとなく判ります。(これはこれですごいアルバムですけどね。でも一般受けしません。)
「ソウル・ステーション」は何回か聞くと全てのメロディー、フレーズを憶えてしまい、一緒に口ずさめるようになります。しかしここで “飽きた!” とはならず、いつも新たに気分のリセットができるのです。(個人の感想です)
もう一つの特徴として録音状態がすごく良いことが挙げられます。ブルーノートレーベルはほぼ全てルディ・ヴァン・ゲルだーというエンジニアによって録音されました。
彼を持ってして「ブルーノートレーベルはもとより、あらゆるレーベルに残された最も上質のプログラムの一つ」と言っています。
これ以上ないくらい賛美です。音質内容ともに保証付です。
ということでモブレーの紹介のところで書いた
テナー・サクソフォーンのミドル級チャンピオン
→ パウンド フォー パウンドで考えましょう。ヘビー級だけでは世の中ダメなんです。
ジョン・コルトレーンより鋭くもなければスタン・ゲッツほど柔らかでもない音質
→ 一番テナーサックスらしい、楽器のおいしいところを押さえた音質ということですね。
ソニー・ロリンズやコルトレーンと比較すると明らかなように、落ち着きがあって精妙かつ歌謡的
→ はいはい、ロリンズやコルトレーンよりブルージーで歌心があるんですね。
と理解していただきたい。
アルバム「ソウル・ステーション」のご紹介です。
演奏
ハンク・モブレー テナーサックス
ウイントン・ケリー ピアノ
ポール・チェンバース ベース
アート・ブレイキー ドラムス
曲目
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。
1, Remember リメンバー
これです。この出だしは何回聴いても癒されます。テナーサックス の艶のる太い音がたまりません。時々アクセントでドラムのブレイキー がフィル・インを入れてきます。それもまたかっこいい。
2, This I Dig of You ディス・アイ・ディグ・オブ・ユー
続いて同じような感じでテナーで歌います。後半ブレイキー のソロも出てきます。このアルバムでブレイキー の存在は大きいものです。全体を締めています。
3, Dig Dis ディグ・ディス
前2曲はモブレーのテナーがいきなり歌い出しましたが、ウイントン・ケリー ピアノのイントロから始まります。ちょっと気怠い感じのメロディですが全員、気持ちが入っているのでだらだらしません。
4, Spirit Feelin’s スピリット・フィーリンズ
ブルージーな曲です。唯一アルバムでジャムセッション的な感じのナンバーです。
5, Soul Station ソウル・ステーション
名曲です。ちょっと違いますがルー・ドナルドソンを彷彿します。タイトルに偽りなしです。
6, If I Should Loose You イフ・アイ・シュッド・ルーズ・ユー
最後にふさわしい、ではまた、と言って終わるような感じです。リメンバーに始まりこれで終わるところが完璧です。
以上、捨て曲なしの名演です。
コメント