「これぞ最強アメリカン・あおはるサウンド」Sounds of Summer : The Very Best of The Beach Boys / サウンズ オブ サマー : ザ ビーチボーイズ

 アメリカン・ウエスト・コースト・サウンドのビーチボーイズはソフト・ロックの王道です。
素晴らしい楽曲の数々はメロディの宝庫でまさにポップロックの魅力を凝縮したようなサウンドでできています。
そうありながらも実は音楽的に大変深いものがあり、制作する側からも研究対象としてよく取り上げられます。
日本でも大瀧詠一さんや山下達郎さんなどの超がつく大物アーティスト、コンポーザーからも賞賛の声が聞かれます。

本当はすごく計算されているのですが、表面的には大衆迎合したポップスにしか聞こえません。
よってハードコアなジャズファンやロックファンからは敬遠される向きがあります。
まあそりゃあジョン・コルトレーンやAC/DCなどとは真逆の立ち位置ですから。

かくいう私もビーチボーイズを聴き始めたのは割と年を重ねてからです。ビートルズやサイモン&ガーファンクルから洋楽に入り、70年代ロック、ブルーズに興味を持って、黒人音楽が好きになっていった、というような人にはカリフォルニアの青い空と、サーフィン、ホットロッド、恋のスクールライフという世界は近寄りがたいものがありました。(偏見です)

しかし、評論家やミュージシャンの方々でもビーチボーイズを評価する人が多いのです。
上部だけのイメージではなさそうだと思い、とりあえず必ずロック史の重要アルバムとされる「ペット・サウンズ」とベストアルバムとして評価の高い「エンドレス・サマー」を聞いてみました。

「ペット・サウンズ」は暗いとか難解という評価もありますが、私的には普通に良い曲がいっぱいあって、とっても聴きやすいアルバムだなと思ったものです。
「エンドレス ・サマー」は一聴して名曲のオンパレードです。
聞いているだけでポジティブな生活になり、掃除、片付けなどがはかどります。
本当に上質なポップスとはこういうものです。

で、それから「スマイル」「サンフラワー」「サーフズ・アップ」「ブライアン・ウィルソン関連」に広がっていきました。

やっとわかりました。ビーチ・ボーイズは薄っぺらいアメリカの遊び人の音楽ではなく、上質で素晴らしいアレンジのポップスの最高峰でした。
そしてブライアン・ウィルソンの苦悩の歴史でもありました。

というところで本題に入ります。2022年6月に「Sounds Of Summer : The Very Best Of The Beach Boys」のリマスター が出ました。
このオリジナルは持っていませんが初期のベストアルバムである「Endless Summer」のCD (30年以上前に手に入れたもの)と比較すると明らかに音質が違います。

音の分離が良くなり、楽器が楽器らしくリアルに聞こえます。
というのはドラムはドラムらしく、ギターはギター らしくということですが、一番驚いたのはくっきりとベースラインが聞こえるということです。
「アイ・ゲット・アラウンド」のベースラインなんてとにかく感動的なまでにかっこいいのです。ボーカル、コーラスも太くハリがあります。
まさにこういうリマスター効果を感じながら聴くのも正しい音楽鑑賞のあり方です。(勝手な解釈です)

そこで思ったこと

私は基本的にリマスター盤は音質が向上していて好きです。
最近のビートルズやピンク・フロイド のリミックス、リマスターも楽しんでいます。ジョン・レノンの「ギミ・サム ・トゥルース」というやりすぎ一歩手前も結構面白く楽しめました。
惜しむらくはリミックス、リマスターというのはある程度売れる見込みのある名盤しか候補にならず、個人的に好きでリマスターして欲しいものがあっても絶望的だったりします。

で、ビーチボーイズのリマスターです。本当にいいです。
確かにいいのですが、音が今風(細かくはそうではありませんが)になった分だけ、あれほど強烈だった「時代性」は希薄になりました。
それはなぜかというとビーチ・ボーイズ はラジオから流れてくるチープな音がすごく合っているサウンドでもあるんです。1960年代はまさにそれを戦略的に狙っていたのだと思います。

そういうことを思いながら聴くのも楽しいものです。

これ1枚であらかたビーチ・ボーイズの流れがわかります。
例えるならビートルズの「赤盤」+「青盤」みたいな感じです。
ビーチボーイズ初心者と音に興味のある方に超おすすめです。

アルバム「サウンズ・オブ・サマー」のご紹介です。

演奏
ブライアン・ウィルソン ヴォーカル、ベース、キーボード 
デニス・ウィルソン  ヴォーカル、ドラムス、キーボード
カール・ウィルソン  ヴォーカル、ベース、キーボード
マイク・ラブ   ヴォーカル
アル・ジャーディーン  ヴォーカル、ギター、ベース

基本、このメンバーで始まったみたいです。1962年にデビューして、60年代中期からほとんどの曲をブライアン・ウィルソンが手がけるようになります。知れば知るほど才能のある人です。
レコーディングは敢えてスタジオミュージシャンを使ったりもしていました。

曲目
*参考としてyoutube音源をリンクさせていただきます。

01,  California Girls      カリフォルニア・ガールズ

1965年アルバム「サマーデイズ」収録、シングルはB面「レット・ヒム・ラン・ワイルド」でリリース。
1980年代に一時ヴァン・ヘイレンを抜けたデイヴィッド・リー・ロスがソロでお下劣にカバーしていました。
ブライアン・ウィルソンによるとバッハの手法を用いているとのことです。
オープニングにそんなに高速テンポの曲を持ってこないところに腰が入っているベストアルバムだと感じます。

02,  I Get Around      アイ・ゲット・アラウンド

メロディもハーモニーも完璧な曲だと思います。1964年アルバム 「オール・サマー・ロング」収録、 シングルはB面「ドント・ウォリー・ベイビー」でリリース。ビーチボーイズ初のNo1ヒットです。

03,  Surfin’ Safari      サーフィン・サファリ

2枚目のシングルでサーフィンUSAと同じくチャック・ベリーが原曲です。
この曲で初めてお得意の対位法コーラスが使われました。この鼻詰まり感のある声がいいと思います。

04,  Surfin’ USA      サーフィン・USA

ビーチボーイズの一番有名なキラーチューンで、チャック・ベリーの「スウィート・リトル・シックスティーン」が原曲です。
著名なサーフィンスポットが歌詞に出てきます。揉めたので、クレジットにはチャック・ベリーも記載されています。

05,  Fun, Fun, Fun       ファン・ファン・ファン

1964年のアルバム「シャット・ダウン・ヴォリューム2」に収録、B面「Why Does It Fools Fall In Love]」でシングルでシングルカットされました。
アメリカでは5位まで上がりました。ホットロッドがテーマです。
イントロはモロにチャック・ベリーです。

06,  Surfer Girl      サーファー・ガール

1963年アルバム「サーファーガール」に収録、シングルは「リトル・デュース・クーペ」とカップリングでトップ10ヒットとなりました。
「星に願いを」とほぼ同じ構成です。名曲なわけです。

07,  Don’t Worry Baby      ドント・ウォリー・ベイビー

Tr.2「アイ・ゲット・アラウンド」と同じ。フィル・スペクタープロデュースのロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」にインスパイアされた曲です。そう思って聴くとなるほどと思います。

08,  Little Deuce Coupe      リトル・デュース・クーペ

Tr.6「サーファー・ガール」と同じ。タイトルはフォード モデル18のことです。
ここからブライアン・ウィルソンは公式にプロデューサーとなります。

09,  Shut Down      シャット・ダウン

シングル「サーフィンUSA」のB面でアルバムとしては4枚目の「リトル・デュース・クーペ」に収録されました。
ドラッグレースを歌っています。雰囲気がいかにもアメリカの青春です。

10,  Help Me Rhonda      ヘルプ・ミー・ロンダ

1965年アルバム「ビーチボーイズ・トゥデイ」に収録され、シングルはB面「キス・ミー・ベイビー」でNo1ヒットになりました。
「マック・ザ・ナイフ」にインスピレーションされたそうです。
評価の高い曲です。

11,  Be True to Your School      ビー・トゥルー・トゥ・ユア・スクール

アルバム「リトル・デュース・クーペ」に収録され、シングルは「イン・マイ・ルーム」とカップリングでした。
トップ10ヒットになっています。アレンジが素晴らしいと思います。

12,  When i Grow Up      ホウェン・アイ・グロウ・アップ

1965年アルバム「ビーチボーイズ・トゥデイ」に収録され、シングルはB面「シー・ノウズ・ミー・トゥー・ウエル」でトップ10ヒットとなりました。
ジャズ的なコードを意識したそうです。
ブライアン・ウィルソンはフォー・フレッシュメンを意識して歌ったのですが出来上がりを聞いて愕然としたそうです。

13,  In My Room      イン・マイ・ルーム

Tr.11「ビー・トゥルー・トゥ・ユア・スクール」と同様。シンプルなアレンジですが聴き入ってしまいます。

14,  God Only Knows      神のみぞ知る

1966年のアルバム「ペット・サウンズ」収録、シングルは「素敵じゃないか」とカップリングです。
ここから本格的にビーチ・ボーイズの、ブライアン・ウィルソンの音楽的な評価が爆上がりします。ポール・マッカートニーも才能に脅威を感じたそうです。

15,  Sloop John Bスループ・ジョン・B

元はバハマ、ナッソーの民謡です。アルバム「ペットサウンズ」に収録され、流れ的にいいアクセントになっています。

16,  Wouldn’t It Be Nice      素敵じゃないか

Tr.14「神のみぞ知る」と同様です。アルバムのオープニング曲で印象深いものがあります。
強引なタイトルの直訳が素敵です。

17,  Getcha Back      ゲッチャ・バック

1985年のアルバム「ザ・ビーチ・ボーイズ」に収録、B面「Male Ego」でシングルカットされ、全米26位になっています。
ブルース・スプリングスティーンの「ハングリー・ハート」に似ているとも言われます。そう言われれば。

18,  Come Go with Me      カム・ゴー・ウイズ・ミー

1978年、アルバム「MIUアルバム」収録、当時はシングルカットはされませんでした。
のちのコンピレーションアルバム「テン・イヤーズ・オブ・ハーモニー」リリース時にシングルカットされています。
元は1956年にドゥーワップグループ「デル・ヴァイキングス」のメンバーCEクイックのカバーです。「ライオンは寝ている」風です。

19,  Rock and Roll Music      ロック・アンド・ロール・ミュージック

1976年にシングルカットされた言わずと知れたチャック・ベリーの代表曲で、ビートルズのカバーでも有名です。
他と違うのはギターが目立つアレンジではなく、メロディ優先という感じです。
トップ10ヒットとなりました。アルバム「15 Big Ones」に収録されています。

20,  Dance, Dance, Dance      ダンス・ダンス・ダンス

1965年アルバム「ビーチボーイズ・トゥデイ」に収録され、シングルはB面「ザ・ワームス・オブ・ザ・サン」でトップ10ヒットとなりました。
ビーチボーイズにしては珍しくギターのリフとソロが目立っています。


21,  Barbara Ann      バーバラ・アン

フレッド・ファサートによって書かれた曲で1965年にビーチボーイズがカバーしました。
ヒットチャート2位まで上がり、イギリスのバンド、ザ・フーもカバーし「ザ・キッズ・アー・オールライト」てキース・ムーンが歌っています。

22,  Do You Wanna Dance      ドゥ・ユー・ウォンナ・ダンス

1958年のボビー・フリーマンの曲でビーチボーイズは1965年にB面「プリーズ・ミー・ワンダー」でリリースしてスマッシュヒットとなりました。
ジョン・レノン、マーク・ボラン、ベッド・ミドラー、ママス・アンド・パパス、ラモーンズ等もカバーしています。

23,  Heroes and Villans      英雄と悪漢

1967年のアルバム「スマイリー・スマイル」に収録されており、B面「ユーアー・ウエルカム」でシングルカットされ12位まで上がっています。
当初、ブライアン・ウィルソンはリリースしたバージョンが気に入らなくて2000年代になって自らリメイクバージョンを発表しました。
サウンド・エフェクトが凝っています。

24,  Good Timin’      グッド・タイミン

1979年アルバム「LA」に収録され、シングルとしてもB面「ラヴ・サラウンド・ミー」でリリースされました。
全米33位ですがこの時期としてはヒットしたようです。

25,  Kokomo      ココモ

1988年にシングルとしてリリスされ、(B面トゥッティ、フルッティ)1989年にアルバム「スティル・クルージン」に収録されました。
映画「カクテル」でも使用されNo1ヒットにつながりました。
当時MTVでもヘビーローテーションで流れていたことを覚えています。
リズムにレトロなリズムボックス感を敢えて出しています。ブライアン・ウィルソンは参加していません。

26,  Do It Again      恋のリバイバル

1968年にシングルとしてリリースされました。
ニール・セダカ、アバ、ホール&オーツなど他のアーティストにも影響を与えました。

27,  Wild Honey      ワイルド・ハニー

1967年のアルバム「ワイルド・ハニー」収録、同年シングル(B面「ウインド・チャイム」)でリリースされ31位のヒットとなりました。

28,  Darlin’ダーリン

1967年のアルバム「ワイルド・ハニー」収録、同年シングル(B面「ヒア・トゥデイ」)でリリースされ19位のヒットとなりました。
山下達郎さんもカバーしています。曲調も山下さんとつながります。

29,  I Can Hear Music      アイ・キャン・ヒア・ミュージック

1966年のザ・ロネッツのカバーです。
このビーチボーイズ・バージョンも世界中でスマッシュヒットとなりました。

30,  Good Vibrations      グッド・ヴァイヴレーション

1966年アルバム「スマイリー・スマイル」に収録され、シングルはB面「レッツ・ゴー・ア・ウェイ・フォー・ア・ホワイル」でリリースされました。
ビルボードホット100で34位まで上がりました。
アーティストからも評価の高い曲です。ホントに才能を感じます。

以上、怒涛の30曲、ものすごいメロディメイカーです。
これがスタンダードエディションの内容です。デラックス・エディションは80曲続いていきます。

ちなみに私は思わずデラックス・エディションに手を出しました。

じっくり聞いてもいいですが、気分転換や作業のBGMとしてもおすすめです。

Bitly
Bitly

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