「ニューオリンズ・セカンドライン・ファンクの教科書」The Meters 1st / ザ・ミーターズ

 ディス イズ ニューオリンズ・ファンクの「ザ・ミーターズ」の1969年リリースのデビューアルバムです。
このアルバムは徐々に評価を高め、今ではニューオリンズのリズムを代表するアルバムとなっています。
リリース当時は歌もなく、華麗で荘厳なメロディでもないシンプルな音楽でした。それでもシングル「シシー・ストラット」がダンス・ミュージックとしてヒットし、グループの足元は固まります。
アルバムの方は他の大物ミュージシャン、プレイヤーによって称賛され、流行り廃りの激しいディスコミュージックとはちょっと違う立ち位置で時間を超えて残る名盤となりました。

このちょっと変わったインスト・グループの鍵はセカンドライン・ファンクと言われるニューオリンズ独特のリズムにあります。

セカンドラインとは冠婚葬祭時のとき、先導者と参列者の行列が行進し、その行進曲のリズムとコール アンド  レスポンスが元になっています。結婚式でも使用しますが、パレードは「遺体のないジャズ葬儀 : a jazz funeral without a body」と呼ばれるそうです。

総じてイメージとしてはバックビートが効いていて独特の間があって粘っこくユルい感じです。

解説はこちら

New Orleans Second Line History - New Orleans & Company
Dive deep into New Orleans' second line history with New Orleans & Company to gain perspective on what makes this honored tradition so special.

それをシンプルな編成(ベース、ドラム、ギター、オルガン)でインスト曲を演奏するミーターズは最初聞いた時、「うわぁ、スッカスカだ。よくこんなんで発売できたもんだなあ」と一瞬思ったぐらいですが、聴いているうちに耳に馴染んでなんとも味があり中毒性を感じます。

音の密度は少ないけれど、リズムに柔軟なバネがあってたるむことはありません。
さらに強力なバネがあると感じるのはレゲエ代表、ボブ・マーリー&ザ ・ウェイラーズの初期あたりになりますでしょうか。

ザ ・ミーターズはニューオリンズの地元バンドで大御所のプロフェッサー・ロングヘアーやアラン・トゥーサン、ドクター’ジョンなどのバックを務めていました。
彼らがバックというだけで品質保証付きです。ロック界からも信望者が多く、ポール・マッカートニーやローリング・ストーンズも絶賛でした。

この1969年発表のファーストアルバムは今となってはニューオリンズ ・ファンクの定番ものです。

私もリアルタイムで接したわけではありません。最初に聞いたのは1980年くらいです。
昔から気になっていたことはなぜかこのファーストアルバムのみギターが左チャンネルから聞こえます。セカンドアルバムの「ルッカ・パイ・パイ」を先に持っていたので、最初は思わず「配線がどこかで間違っている」と自分の機材のセッティングを疑ってしまいました。
オーディオファンの悲しい性(さが)ですな。

昔からニューオリンズのリズムについてはリトル・フィートはもとより、エリック・クラプトンからレッド・ツェッペリンまで何らかの形で参考にしていたと思います。
というかロックにニューオリンズのリズムを紹介したのは、ロサンゼルスで結成されたリトル・フィートの功績で、リトル・フィートに影響を受けたのが英国のエリック・クラプトンやレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナム等という感じです。
ブリティッシュ勢が完全にニューオリンズ・ビートをモノにしたとは思えませんが、そこかしこにヨーロッパには無いリズムへの羨望を感じます。

CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)も「プラウド・メアリー」などアメリカ南部をモチーフにした曲が多いのですが、彼らもまたカリフォルニアのサン・フランシスコの隣、オークランド出身というのも面白いところです。リトル・フィートと同じく生粋の南部人ではありませんでした。
ということはアメリカ人にとっても南部、ニューオリンズはある意味怪しげで独特な文化があって魅惑の地なのでしょう。

アルバム「ザ・ミーターズ」の解説です。

演奏
リーダー、オルガン担当 アート・ネヴィル
ドラム ジョゼフ “ジガブー” モデリステ
ベース ジョージ・ポーター Jr
ギター レオ・ノセンテリ

プロデュース  アラン・トゥーサン

曲目

*参考としてyoutube音源をリンクさせていただきます。(驚異のコンプリートものです。CDもあります。すごい時代になったものです)


1,    Cissy strut  シシー・ストラット

シングルカットされてヒットしました。


2,    Here Comes The Meter Man  ヒア・カムズ・ザ・ミーターマン

オルガンでの「ルーム335 」みたいなメロディが最初に聞こえます。


3,    Cardova  カルドヴァ

とってもシンプルなフレーズですが、これがいいのです。


4,    Live Wire  ライヴ・ワイアー

これに限らずですが、リズムが決まっています。ギターソロがユニークです。


5,    Art  アート

タイトルからして、オルガン大活躍かと思いきやどちらかというとギターのカッティングがメインです。


6,    Sophisticated Cissy  ソフィスティケイテッド・シシー

若干、ソフトになった「シシー・ストラット」です。


7,    Ease Back  イージー・バック

ちょっと変わったギターのイントロで始まりますが、すぐいつものミーターズです。


8,    6V6 LA 

これも若干アグレッシブなナンバーです。タイトルは車のエンジンかと思いきやギター、ベースアンプで使用されている真空管のことだそうです。

 
9,    Sehorns’s Farm  セホーンズ・ファーム 

オルガンメインで進行します。セホーンとはプロデューサーのマーシャル・セホーンのことでしょう。

 
10,  Ann  アン

タイトル通り、ちょっとメルヘンチックというか、なんか日本の昔の歌謡曲みたいです。


11,  Stormy  ストーミー

オルガンの嵐の音に始まり、珍しくスローなナンバーです。


12,  Sing A simple Song  シング・ア・シンプル・シング

ミーターズらしいファンキーな曲です。


デビュー時は完全インストルメンタルバンドでしたが、次第に歌も入るようになります。これはこれでいい曲がたくさんありますが、安心して聴ける初期インストものが一番聴く回数が多くなっています。

1977年解散後、ミーターズから派生してワイルド・チュピチュラスやネヴィル・ブラザーズへ繋がっていきます。
ニューオリンズものとして、アラン・トゥーサン、ドクター・ジョン、プロフェッサー ・ロングヘアは最重要人物です。さらにワイルド・マグノリアスやダーティ ・ダズン ・ブラス・バンドなどを聴き始めるとニューオリンズの泥沼にハマって一生抜けられなくなります。そういうのもいかがでしょうか。

Bitly
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