「追悼、モダンジャズの巨匠ソニー・ロリンズ、1950年代のピーク時にリバーサイドよりリリースされたロリンズ珠玉のミュージカル曲集です。」The Sound Of Sonny : Sonny Rollins / ザ・サウンド・オブ・ソニー : ソニー・ロリンズ

  今年2026年5月26日、ジャズの巨匠ソニー・ロリンズの訃報が届きました。
ニューヨーク州ウッドストックの自宅で95歳という大往生でした。

ロリンズは2012年からもう公の場で演奏するのはやめており、2014年には引退宣言をしています。

ロリンズのサックスの音は豪放磊落(ごうほうらいらく)と表現されました。

インタビューで「あなたの最高傑作はどれだと思いますか?」との質問に「Next Album = 次に出すアルバムさ」と答えた、ということを聞いた記憶があります。
そんなロリンズでした。
(実際そのタイトルのアルバムもあります。ロリンズ流のジョークかも知れません)

そういう豪快な性格かと思えばキャリアの中で2度ほど引きこもりをしています。

最初は1950年代の終わり頃、音楽的な限界を感じてのことでした。

マンハッタンのロウアー・イーストに住んでいましたが、隣に妊婦の人がいたので迷惑にならないように近くのウィリアムズバーグ橋の歩道でひたすらサックスの練習をしていたそうです。

1959年の夏から1961年の終わりまでほぼ毎日、季節に関係なく1日に15、6時間練習することもよくあったそうです。
(すいません、これでは引きこもりとは言えません)

2度目は1969年から約2年間、公の場所で演奏するのをやめています。

この時はジャマイカを訪れたり、インドに行ってヨガ、瞑想、東洋哲学を学んだそうです。
(すいません、これも引きこもりではありません)

そういうことを考えるとキャリアと実績の上にあぐらをかいて大物面をするような人ではなく、常に音楽を探求して自分に厳しい人であったということがわかります。

そういうこともサウンドに現れるものかもしれません。
いやきっと表れています。

ここ数日ロリンズのアルバムを繰り返し聴いていて、やっぱりすごい人だったなあと改めて感じている次第です。

ということでソニー・ロリンズのアルバムをご紹介させていただこうかと思います。

何せ天下のサキソフォーン・コロッサスですから言ってしまえば彼のアルバムはすべてが名演、名盤です。

特に1950年代のデビューから1960年代にかけては目がくらむほどの超絶名盤が目白押しです。

一般的に知名度の高いブルー・ノートやプレスティッジのアルバムは置いといて、今回ご紹介するのはリバーサイドより1957年リリースの「ザ・サウンド・オブ・ソニー」です。

ロリンズの1956年から1957年にかけての活躍はすごいものがありました。
「サキコロ」もブルーノートの諸策もコンテンポラリーの「ウェイ・アウト・ウエスト」もこの時代です。

1957年3月ブルーノートで「ソニー・ロリンズ・Vol.1」「ウェイ・アウト・ウエスト」をリリース、
10月にはまたブルーノートで「ソニー・ロリンズ・Vol.2」をリリースして
11月にはこの「ザ・サウンド・オブ・ソニー」をリリースしました。

またリリースは1959年3月ですがブルーノートの「ニュークス・タイム」も1957年11月にレコーディングしています。
さらにはあのヴィレッジ・ヴァンガードのライブも11月のレコーディングです。

この波いる名作群の中でリバーサイドの「ザ・サウンド・オブ・ソニー」は若干控えめな存在に思えますが、そんなことはありません。

この時期ロリンズはレーベル関係なしに取り憑かれたようにレコーディングしていました。
そしてどのレーベルでも後世に残るジャズ名盤を立て続けにリリースしていました。
(粗製濫造とは次元が違います) 

そこの目をつけたのがリバーサイドのプロデューサー、ジャズオタクとかジャズサイコと言われる(言われてません)オリン・キープニュースです。

「ロリンズくん、最近頑張ってるねえ。
ここらでひとつモダンジャズやハードバップの名作になりそうなオールスターキャストは他に任せといて、うちで肩の力を抜いたやつを作ってみない?。
好きにやらせてあげるよ」

ロリンズは答えました。

「そうすか。そういえばこのところ気を張った仕事ばっかりだったからなあ。
ブルーノートに至ってはアルフレッド・ライオンにセロニアス・モンクやホレス・シルバー、アート・ブレイキー相手に百人組手みたいなこともさせられたからねえ。
ライブのレコーディングもあったけどお金ないから3人で演れって言われちゃった。
あのスパルタ式には俺でも死にそうだったよ。
じゃあハードワーク後のストレッチがわりにこじんまりしたのを作ってみようかな」

ということでレコーディングが始まりました。(まったく根拠のない憶測です)

レコーディングは1957年6月11日、12日、19日にニューヨークのリーヴス・サウンド・」スタジオで行われました。

ロリンズの思うように曲によってメンバーも自由に選べたようです。

メンバーは概ね(おおむね)実力があって、わがままばかり言うこともなく、調和して大人の仕事ができる人たちが呼ばれました。
(決してブルーノートの「Vol.2」のサイドメンと比較しているわけではありません)

レコーディングする曲目もミュージカルの小唄みたいなものを中心に選ばれました。

みんなが知っているスタンダードではなくこういう隠れた名曲をいかに歌えるかに挑戦したロリンズは、他のレーベルほど派手ではないけれど、地味に美味しいアルバムを作ることに成功しました。

各曲コンパクトにまとめられており、押しなべて演奏時間は5分以内、5分を超える演奏は9曲中2曲というこの時代のジャズアルバムとしては異例と言って良いほどです。

とは言いつつ今まで他のレーベルでアドレナリン出まくりの真剣勝負をしてきたため、熱が抑え切れてはいません。所々に熱い魂を感じさせる演奏になっています。

かように胃もたれするような大袈裟なものではなく、ソニー・ロリンズの歌心が充分に感じられるとっても良い作品ができました。


でもひとつ残念な面があります。

そうです。アルバムジャケットのデザインです。
LPレコードで見るのとCDで見るのではあまりに印象が違ってくるのです。

きっとCDしか知らない世界中のロリンズ・ファンは「ソニー・ロリンズにしてはダサすぎねえか」と思っていると思います。(勝手な推測です)

CDを買った時に思いました。
ノイマンのマイクに向かってサックスを吹くという構図は基本的には良いのですが、
1、おでこで不自然にキレています。

2、「The Sound of Sonny Rollins」というロゴがあまりにもダサいです。

3、全体が明るくてジャズっぽくない。 

4、ロリンズの表情がへん、遠目に見ると焦点が定まってなくバカっぽい、なんかハナとかヨダレとか垂らしてそう。(言い過ぎです) 

5、全体の構図と色合い、ロリンズの衣装に至るまでジャズっぽく無い。

などとキリがありません。

そしてデザイナーを見て2度ビックリです。

名ジャケの宝庫と言われるブルーノートの名コンビ、リード・マイルスとフランシス・ウルフの名があるではありませんか。

フランシス・ウルフのレコーディング風景を撮った写真をリード・マイルスが切り取理、タイポグラフィーと呼ばれる文字のデザインを組み合わせて惚れ惚れするようなジャケとデザインを大量に作ってきました。

ブルーノートのジャケットには普通では考えられない顔をおでこで切り取っているデザインは結構な頻度で登場します。

ウエイン・ショーター、デイジー・リース、アート・ブレイキー、マッコイ・タイナーなど実に多いのですが、こんな変なのはありません。

きっとフランシス・ウルフとリード・マイルスが冗談で
「アルフレッド・ライオンが一番拒否反応を起こしそうなデザインをつくってみようぜ」
と言って遊んでいたら、間違えてオリン・キープニュースのオーダーに載せて送ってしまったようです。

おかげでのちにジョー・ジャクソンが敬意を込めて模倣したほど有名な「ソニー・ロリンズ・Vol.2」のデザインはリード・マイルスではなくハロルド・ファンスタインになってしまいました。

オリン・キープニュースは見て唖然としましたが

「そうか、そっちがそういうつもりならせっかくだからお前らの仕事として世界にご披露してやるよ」

とあえて自分を犠牲にしてまで使ってしまったのでしょう。
(根拠のない妄想です)

CDを買った時にはそんなことまで考えさせるデザインでした。

でもLPの大迫力ジャケットを見るとイメージはまったく変わります。
自然と目に焦点がいくような迫力を感じさせるジャケットなのです。
ここら辺にCDのインパクトの無さが出てしまいます。

結果、このあまりにも脱力感あふれるCDジャケットによりモダンジャズの歴史的名盤とは言われません。

しかし内容はまさに「ロリンズの音」で固められています。

また「キープニュース・コレクション」でも有名なオリン・キープニュースもまたジャズの音にこだわるプロデューサーです。

このアルバムはリーヴス・サウンド・スタジオでのソニー・ロリンズというこれまた最高級の音が楽しめます。

モノラル録音ながら遠近感と各楽器の音像がくっきりした音です。

ちなみにこのスタジオに名を冠したハザード・E・リーヴスは音響、および音響エレクトロニクスの分野における先駆者で、映画に磁気ステレオ音声を導入とか音声のマルチチャンネル開発などでも有名です。

最後にニューヨーク・タイムズの編集者でありジャズ界では有名なリバーサイド・レーベルのオーナー、オリン・キープニュースのご子息であるピーター・キープニュースが記事を寄せています。

nytimes.com

和訳したものを添付させていただきます。

(以下、引用)

第二次世界大戦後、テナーサックスにおける力強く独創的な演奏でジャズ界を牽引したソニー・ロリンズが、月曜日、ニューヨーク州ウッドストックの自宅で死去した。享年95歳。

彼の死去は、広報担当のテリー・ヒンテ氏による声明で発表された。

個性を重んじる音楽の基準から見ても、ロリンズ氏はミュージシャンとしても、そして個性的な人物としても際立っていた。

1940年代後半、多くの若いジャズサックス奏者が軽やかな音色と最小限のビブラートを好んでいた時代に、彼はジャズ界初の偉大なテナーサックス奏者であるコールマン・ホーキンスの古き良きスタイルを彷彿とさせる、ふくよかで深みのあるサウンドを開発した。

1950年代後半、バンドリーダーとしてのキャリアがまさに軌道に乗り始めた頃、ロリンズ氏は突然2年以上にも及ぶ活動休止に入った。

後に彼自身が説明したところによると、その主な理由は、自身の演奏の質に満足できなかったからだという。

ローリンズ氏は、ビバップと呼ばれる新しいタイプのジャズが隆盛を極めていた時代に成人期を迎え、当初から彼の演奏にはビバップ特有の洗練されたハーモニーと大胆なリズムが満ち溢れていた。

しかし、彼を単なるビバップ奏者と分類するのは、あまりにも単純化しすぎだろう。

彼は長年にわたり、アヴァンギャルド、ジャズ・ロック・フュージョン、その他のスタイルに挑戦してきた。

しかし、その猛烈なエネルギー、予想外のタイミングで予想外の音を奏でる才能、そして時に荒々しく皮肉っぽく、時に豊かでロマンチックな独特のサウンドによって、彼は結局、分類不可能な存在となった。

「私が演奏する音楽は、一つのスタイルに分類するにはあまりにも壮大すぎる」と、彼は2002年のインタビューで語った。

「ホルンを手に取るたびに、何か新鮮なものを聴きたいんだ。」

その新鮮さへのこだわりこそが、ローリンズ氏のアプローチ、そして彼の魅力の鍵だった。

ジャズ評論家のフランシス・デイヴィスは2000年に、「ローリンズ氏は現存する最高のジャズ即興演奏家であり、もし私たちが技巧の定義を、楽器の巧みさだけでなく即興演奏の巧みさも含むものと再定義するならば(この音楽を論じる際にはおそらくそうすべきだろう)、彼はジャズが生み出した史上最高のヴィルトゥオーゾと言えるかもしれない」と評した。

ローリンズ氏は自身の演奏に満足することは滅多になく、演奏やレコーディングセッションの後には、もっとうまくできたはずだと必ず口にしていた。

確かに、彼には調子の悪い夜もあった。おそらく、同世代のジャズミュージシャンの中では誰よりも多かっただろう。

しかし、一部のファンはこれを好意的に捉えていた。
彼らは、たまに調子の悪い夜があるのは、リスクを恐れず、常に同じ曲を同じように演奏することを拒む彼の姿勢に対する、取るに足らない代償だと主張したのだ。

「本当の演奏は無意識のレベルで行われるもので、その時点ではありきたりな表現は出てこない」と、ローリンズ氏は1989年にニューヨーク・タイムズ紙に語った。「本当に演奏しているときは、私の心は完全に空白になるんだ。」

アルバム「ザ・サウンド・オブ・ソニー」のご紹介です。

Amazon.co.jp: ザ・サウンド・オブ・ソニー+1 - ソニー・ロリンズ: ミュージック
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演奏

  • ソニー・ロリンズ
    テナーサックス
  • ソニー・クラーク
     ピアノ(トラック1、8を除く)
  • パーシー・ヒース
    ベース(トラック2~3、5~7、9)
  • ポール・チェンバース
    ベース(トラック1、4、10)
  • ロイ・ヘインズ
    ドラム(8曲目を除く)

プロダクション

  • オリン・キープニュース
    プロデューサー
  • リード・マイルス
    デザイン
  • フランシス・ウルフ
    写真

曲目

*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

  1. The Last Time I Saw Paris 思い出のパリ
     (オスカー・ハマースタイン2世、ジェローム・カーン)

    ミュージカルの曲だそうです。サックスがゆったりと歌います。ソロはロリンズならではの独断場です。他の人にはない味を感じます。

  2. Just in Time ジャスト・イン・タイム
    (ベティ・コムデン、アドルフ・グリーン、ジュール・スタイン)

    これもミュージカルの曲です。軽やかにサックスが歌います。

  3. Toot, Toot, Tootsie, トゥート・トゥート・トゥーツィー
    (アーニー・アードマン、テッド・フィオ・リト、ガス・カーン、ロバート・A・キング)

    アメリカン・スタンダードです。私も知りませんでしたが、かの「グレート・アメリカン・ソングブック」にあるそうです。

  4. What Is There to Say? ホワット・イズ・ゼア・トゥ・セイ
    (ヴァーノン・デューク、EY・ハーバーグ、ジェローム・カーン、ジョニー・マーサー)

    珠玉のバラードです。バンド全員、こういう曲は余裕です。

  5. Dearly Beloved ディアリー・ビラヴド
    (ジェローム・カーン、ジョニー・マーサー)

    難しいことは演っていなくても素晴らしいのです。途中で出てくるリフレインのフレーズがまたロリンズらしくてホッとします。

  6. Every Time We Say Goodbye エヴリタイム・ウイ・セイ・グッドバイ
    (コール・ポーター)

    このナンバーは有名なジャズ・スタンダードです。バンド全員、こういう曲は余裕です。短いながらもピアノソロ、ドラムソロが出てきます。この時代にしてはベースの音像がくっきりしていて感動的です。

  7. Cutie キューティー

    このアルバムは古いミュージカルの曲が多いのですが、これはロリンズ も作曲に加わっているリアルタイムな曲です。リラックスした演奏でメロディもよく、スタンダードの中にあっても遜色ありません。ベースソロとピアノソロも登場します。

  8. It Could Happen to You イット・クッド・ハップン・トゥ・ユー
    (ジョニー・バーク、ジミー・ヴァン・ヒューゼン)

    この曲はロリンズのテナーサックスだけで聴かせます。
    聴きながら亡くなったことを思うと曲の終わりで涙腺が崩壊しそうになる私でした。

  9. Mangoes マンゴーズ
    (テール・リビー、シド・ウエイン)

    マンゴーのことです。しかもなんか最初の曲と出だしが似ています。でもファンキーになって行きます。

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