2023年の現在、1962年デビューのザ・ローリング・ストーンズを超える信じられないような長寿のバンドがいます。そしてなんと創設者がまだ現役バンドリーダーです。彼はバンド発足以前の1954年からプロ活動をしていました。そして1959年から現在も活動しています。
その名もアイズレー・ブラザーズです。
元々はヴォーカル3兄弟として1954年から有名なゴスペルグループ、ビリー・ウォード・アンド・ヒズ・ドミノスやディキシー・ハミングバーズで活動していました。1959年からアイズリー・ブラザーズとして活動していきます。
ビートルズはデビューアルバムでアイズレー・ブラザーズの1962年のヒット曲「ツイスト・アンド・シャウト」をカバーしています。
その収録時、伝えられるところではアルバム一枚分を1日で録音するスケジュールで、スタジオでジョン・レノンの喉が限界に達していました。
そして最後の気力と最大の緊張感を持って1発録りされ、最高にエネルギッシュなカバーになりました。
そう考えるとビートルズの先輩格で60年以上の歴史があります。もうそれだけで殿堂入りです。
そのアイズレー・ブラザーズは特に1960年後期から1980年くらいまで、とてつもなく素晴らしい音楽を作り続けました。
特にこのアルバム「3+3」以降、しばらくはヴォーカル3人+バックバンド3人の兄弟+クリス・ジャスパー体制となり、良質なアルバムを連発します。
またブラックミュージックのみならずポップス、ロックに大きな影響を与えました。
1980年代に流行ったブラック・コンテンポラリーとかニューソウルを聞くと影響の大きさがわかります。プリンスやマイケル・ジャクソンも相当影響されただろうと考えられます。
実際、1980年代はアイズレー・ブラザーズの評価は高かったと記憶していますが、おしゃれなブラコン路線で語られていたため、わたくし的にはその時点では興味がありませんでした。
ネヴィル・ブラザーズやプリンスなどがいいと思いはじめて、改めてアイズレーを聞くとその良さがわかりました。
元々ファルセットヴォイスなどにはあまり良さを感じていなかったのですが、ザ.バンドのリチャード・マニュエルやネヴィル・ブラザーズのアーロン・ネヴィル、カーティス・メイフィールドなどを聴いて、それからアイズレーを聴いてみると、これがなかなかいいのです。
そんなこんなでアイズレー・ブラザーズの良さ、深さがわかったものです。
アイズレーの推薦盤としてはロックやSSWをカバーした1971年リリースの「ギヴィン・イット・バック」や1972年リリースの「ブラザー、ブラザー、ブラザー」もこのところ評価が高まっており重要名盤です。
しかしここではその次の一番アイズレー・ブラザーズらしい路線に入って、初のプラチナディスクも獲得した「3+3」をご紹介します。
ここで何かを掴んだ彼らは1980年くらいまで怒涛の快進撃を続けます。
基本、アルバムはファンキーな曲とメロウなソウルで構成されています。
時期によってはロックに接近したり、ジェームス・ブラウン風になったり、ディスコを取り入れたりしますがそうそう深入りしない、味付け程度にとどめてアイズレーらしさは保っているように感じます。それが長く続けられる秘訣かも知れません。
聴いていて思うのは特にプロダクションがしっかりしているというか、アレンジ等含めてとってもよく作り込まれています。
粗さ、雑さを全く感じません。完璧なプロデュースです。
またこの時期とても上質でオリジナルなファンクグルーヴを作り出すのに、あえてなのでしょうがホーンセクションは入れません。
太いアナログシンセとオーバードライブしたジミ・ヘンみたいなギター、ぶっといベースとファンキーなドラムで勝負していきます。
そこにこだわりと限界への挑戦を感じて余計好きになってしまうのです。
メンバーのアーニー・アイズレーはインタビューで「アイズレーの特徴はあるべきものが無いサウンド」と言っていました。それで充分と感じられるのが音楽として素晴らしいところですね。
やりすぎると逆にワンパターンに陥ってしまうことも考えられます。
音質も素晴らしく、今聞いてもびっくりするくらい高音質です。1970年代の上質なアナログの音が体験できます。
兄弟同士でバンドを組んだ場合、ザ・キンクスのデイヴィス兄弟などはめちゃ仲が悪いらしいのですが、アイズレーは分裂などはありましたが、特に対立が激しいとかそういうことは聞きません。
きっと長男含め兄貴分が相当にカリスマ的立場なのか、上下関係がとっても厳しいのでしょう。(個人の見解です)
アルバム「3+3」のご紹介です。
演奏
ロナルド・アイズレー リードヴォーカル、バックグラウンドヴォーカル
ルドルフ・アイズレー バックグラウンド・ヴォーカル
オケリー・アイスレー・ジュニア バックグラウンドヴォーカル
アーニー・アイズレー アコースティックギター、エレクトリックギター、ドラム、パーカッション、バックグラウンドヴォーカル
マーヴィン・アイズレー ベース、バックグラウンドヴォーカル
クリス・ジャスパー ホーナークラヴィネット(Tr.3,5,6,7)、ムーグシンセサイザー(Tr.8,9)、ARPシンセサイザー、アコースティックピアノ、エレクトリックピアノ、バックグラウンドヴォーカル
ゲストミュージシャン
ジョージ・モアランド ドラムス(Tr.1,2,3,5,6,7)、タムタム(Tr.6)
トルーマン・トーマス オルガン(Tr.1,3,4,5,6)
ロッキー コンガ(Tr.1)
曲目
*参考までに最後部にyoutube音源をリンクさせていただきます。
1, That Lady Pt. 1&2
1969年の「フーズ・ザッツ・レディ」のセルフカバーです。ヴォーカルスタイルはノーザン・ソウルと言われるカーティス・メイフィールド率いるインプレッションズなどと同じ雰囲気を感じます。
カッティング・ギターとエンディングのファズをかけて弾きまくるギターも素晴らしいと思います。ちょっとサンタナっぽいところもいい感じです。
2, Don’t Let Me Be Lonely Tonight
メロウなラブバラードをソウルフルに歌い上げます。ジェームス・テイラーのカバーです。個人的にはバックがシンプルなのでハイハットのキザみとかがよく聞こえて楽しいのです。
3, If You Were There
ファンキーですがコテコテではありません。よく練られており素晴らしい曲だと思います。本当にいい仕事しています。
4, You Walk Your Way
ミディアムテンポで歌い上げます。この曲も完成されたアレンジで完璧です。バックもシンプルですがこれで充分、欲しい音はありません。
5, Listen to the Music
言わずと知れた1972年にトム・ジョンストンによって書かれた、ドゥービー・ブラザーズの大ヒット曲です。当然オリジナルはもろにアメリカンロックですが、こちらはこちらでこの滲み出るようなファンクネスがたまりません。
6, What It comes Down To
印象的なシンセのフレーズで始まります。ポップス的にも優れた曲だと思います。
7, Sunshine (Go Away Today)
ベースフレーズで始まります。カントリー、フォークに分類されるジョナサン・エドワースの曲です。
他の曲と違って内省的な雰囲気です。
8, Summer Breeze
この曲を聴いていると、やっぱ売れるわけだわ、オシャレにもなるわけだわ、と納得してしまいます。絶妙な歪み加減のファズギターによるイントロとソロがいい感じです。弾きまくっていますが激しい感じがあまりしません。
ロックデュオのシール&クロフツによって発表され、ソフトロックとしてヒットした曲ですが、今となってはアイズレー版の方が有名かと思われます。
シール&クロフツさんはかなりマニアックな存在です。
9, The Highway of My Life
クリス・ジャスパーのキーボードアレンジが素晴らしくピアノのイントロや、途中の牧歌的なシンセフレーズも印象的で、ラストにふさわしく余韻が残ります。
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