

リボルバーは1966年8月にリリースされたザ・ビートルズの7枚目のアルバムです。
ジャケットについては前作のゆがんだ写真を使った「ラバー・ソウル」からアイドル路線と決別しました。
今回はモノクロのイラストと写真を組み合わせてさらに前衛的にしています。
さらに歌詞、サウンド面ともに深く複雑になっていきます。
ビートルズの場合、なにをやっても基本的に楽曲が素晴らしいので、極端に難解にも重苦しくも感じません。
ただしこの時期は音楽界のオピニオン・リーダーを自覚し、アートと音楽の融合を明らかに意識していたので、今までと違う新しいものを創作する意欲に満ち溢れていました。
そして当然、リリースした時には世界中に衝撃を与えました。
近年、ビートルズのカタログの中で、リヴォルバーの評価は上がってきていると感じます。
1970年の解散後からの評価の変遷を見てみると、
1970年代ではビートルズの代表的作品といえば 「サージャント ・ペパーズ 」
1980年代から90年代にかけては「アビィー・ロード」
2000年以降 「リヴォルバー」と変遷してきた印象です。
ちなみに「ホワイトアルバム」の評価も昔よりも上がってきたと感じています。
ビートルズくらいの存在になると、長年のファンからすれば全てのアルバムが甲乙つけ難いものです。
私もその日によってベストソングやベストアルバムが変わります。
そうして2022年、技術の進歩に伴い「リヴォルバー」のデ ミックスが登場しました。
最近のビートルズは「リマスター」「リミックス」ときて、ついに「デ ミックス」と言われる領域に入りました。
簡単にいうとAIを利用して音を分析し、一つのトラックに入っている複数の音を分離させることです。
1970年代からはマルチトラック録音が当たり前になりました。
各楽器やヴォーカルパートを全て別々のトラックに録音してミキシングし、最終的には2チャンネルのステレオとしてリリースします。
アナログの時代、というよりビートルズの60年代はマルチトラックは発展段階で、リヴォルバーは4チャンネルで録音されたそうです。当時はそれが限界でした。
楽器、コーラス、エフェクト音、オーケストラアレンジなどの構成を考えると一つのトラックに複数の楽器とか音声を入れることになります。
リマスター なる “音質の改善” は後からなんとか可能なのですが、リミックスなる “音の定位を変えたりとか各楽器のレベルを変えたりすること” はできませんでした。
しかし、ここのところの技術の進化により去年の「レット・イット・ビー・リミックス2021」よりAIを駆使して、トラック内の複数の音を分けて取り出すことが可能になったとのことです。
例えば一つのトラックに入っている、リンゴのドラムとジョージのギターとポールのベースを3トラックに分けられるのだそうです。
驚くことに各自のコーラスもおのおの分離できるそうです。
そうして「リヴォルバー 2022 Mix」がリリースされました。

オリジナルと比べてみると、楽器の定位がかわっていたり、各レベルも微妙に変わっていたりします
そして何より音の分離が良くなり明瞭度が格段に向上しています。
ビートルズに関しては、ここ4、5年にリリースされたリミックスアルバムをみると、丁寧でオリジナルの雰囲気を残しつつ、現代風の音に近づけてあります。
個人的にはこれはこれで楽しめます。技術の発展としてみても面白いものです。
多分、否定的な意見もあると思います。
本当にその1966年の時にあった空気感も含めた音が本物であるという意見も当然あるでしょう。
そういう本物を目指すならばヴィンテージな機材でアナログレコードを楽しむべきだと思います。
それはそれで最良の趣味です。基本の音は永遠にそれなのです。
でも最近のザ ・ビートルズやザ・バンドのリミックスのように最新の技術でチャレンジして新しい魅力を引き出そうとする。
及び現代に合った音質レベルにコンバートするのも面白いと思います。
そういう意味で私はリマスター 、リミックス容認派、というか賛成派です。
作り手側も歴史に残る名盤で、何十年も再発し続けているようなアルバムとなれば、それを汚すような馬鹿なことはできません。
特にビートルズ関連をイジるとなるとそれなりに深い理解と愛情が必要ですし、責任も半端ありません。
世界中のビートルマニアを納得させるという最高難度の技術と感性を持って挑戦しなければいけないのです。
今、個人的に思っているのですが、ありがたいことにこの調子で行けば技術的に戦前ブルーズ「板起こし」音源とかのスクラッチノイズを取り去り、今そこで演奏しているようなな状態にすることも可能かもしれません。
そのうち鳥肌ものの、ハイファイでリアルなチャーリー・パットンとかブラインド・ウィリー・ジョンソンが聴ける日がやってきます。
きっときます。・・・来るといいな。


アルバム「リヴォルヴァー 2022ミックス」のご紹介です。

演奏
ヴォーカル、ギター ジョン・レノン
ギター、ヴォーカル ジョージ・ハリソン
ベース ポール・マッカートニー
ドラムス リンゴ・スター
プロデユーサー ジョージ・マーチン(1966年オリジナル)ジャイルズ・マーチン(2022年版)
2022年版エンジニア サム・オケル
曲目
*参考としてyoutube音源をリンクさせていただきます。
1, Taxman タックスマン
ジョージの曲で始まります。ギターソロはポールによるものです。
ベースもリッケンバッカー4001Sで、ヘフナーでは出ない音色です。
2, Elenor Rigby エリナー・リグビー
ポールが余裕で格調の高いところを見せます。
3, I’m Only Sleeping アイム・オンリー・スリーピング
ヒットソングに飽きて次を目指すジョンらしい曲です。
4, Love You Too ラヴ・ユー・トゥ
わりと聞きやすいインド風でジョージがこの時期数年間、インドにハマっていました。
5, Here, There, And Everywhere ヒア・ゼア・アンド・エブリウェア
こういう曲を作れる人が他にいるだろうかと思います。
6, Yellow Submarine イエロー・サブマリン
遊び心満載です。ジョンはポールが作るお伽話ソングが嫌でしょうがなかったと言われていますが、ジョンの弾き語る感傷的イエローサブマリンがスペシャル・エディションにあるそうです。
(まだ、聴いてません)
7, She Said, She Said シー・セッド・シー・セッド
今までになかった曲調です。
ポールは不参加です。ベースはジョージ。
8, Good Day Sunshine グッド・デイ・サンシャイン
ポールにしては割と単調だと思っていました。
でも2022年版を聞くと楽器の輪郭がはっきりしてこの曲の本来の面白さがわかります。
9, And Your Bird Can Sing アンド・ユア・バード・キャン・シング
コピーすると、このノリがブルーズロック・ギタリストには難しいのです。
10, For No One フォー・ノー・ワン
ポール余裕の名曲です。
11, Doctor Robert ドクター・ロバート
実在のニューヨークの医師のことと引っ掛けて、ボブ・ディランのことでもあるらしい。
ディランにクスリを教えてもらったらしい。のです。
12, I Want To Tell You アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー
不思議な感じのジョージの曲です。
13, Got To Get You Into My Life ガット・ユー・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ
ポールが黒っぽさを取り入れてきました。
14, Tomorrow Never Knows トゥモーロー・ネバー・ノウズ
一番、音楽界に影響を与えた曲だと言われています。
かもめの泣き声のような音はギターの音を録音して、逆回転で再生したものらしいです。
「ラバー・ソウル」もこの手法でいけるのでは。
次も期待してます。


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