「ミック・テイラー期の快進撃が味わえます」Sticky Fingers : The Rolling Stones / スティッキー・フィンガーズ : ザ・ローリング・ストーンズ

 ザ ・ローリング・ストーンズの一番油が乗っていた時期の1971年リリースの「スティッキー ・フィンガーズ」です。
1963年デビューしてから常に第一線で活動してきましたが、特に1970年代までの展開はロックを時代の最前線で引っ張っているという素晴らしいものでした。
まさにそれを象徴しているかのようなアルバムです。

ローリング・ストーンズはブラックミュージックやカントリーなどの音楽をかっこよくアレンジしてティーンエイジャーへの紹介しました。その意味でも貢献度が高いロックバンドです。
まだ現役なのでまだ過去形で語るものでもないですが、ロック、ポップスファンにもわかりやすくブラックミュージックのノリやカントリー、ソウルの良さを教えてくれたのでした。

また、ローリング・ストーンズは1970年代後半のパンクロック出現前まで不良ミュージシャン代表という役割もありました。
今からするとそれは演出の部分も大きかったと自他共に認めいている状態ですが、普通に60年間もバンドを維持して音楽活動するなんて本当のワルやジャンキーだったら到底できません。
ということでイメージ戦力含め、非常に計算高い策略家たちなのです。その点はボブ・ディランと同じ匂いを感じます。

さて本アルバム「スティッキー ・フィンガーズ」は歴史的大傑作とされる1969年の「レット ・イット・ブリード」の次に、そして今ではストーンズの中ではここ最近一番評価の高い1972年の「メインストリートのならず者」の前にリリースされました。
そういうとなんとなく居心地の悪い感じですが、まず「ヤギの頭のスープ」ほど低評価ではありません。(私はそれも好きですけど)
この時期、70年代のストーンズのアルバムは全てハズレなく名盤です。

ソウル、ブルーズ、カントリーを彼らなりにうまく取り入れた最高にアメリカ音楽リスペクトなアルバムとなっています。
リリース時には各国でヒットチャートを駆け上がりました。

オリジナルジャケットは数あるLPレコードの歴史の中でも芸術点が高く、屈指の出来栄えです。
芸術家アンディ・ウォーホールのデザインにより、ジーンズのアップ写真に本物のジッパーが付けられました。
すごい発想で面白いのですが、純日本人的で貧乏性の私は「棚に並べたら隣のジャケットがジッパーの突起部分で傷ついてしまう。しょうがないから一番右端においておこう」などと真剣に考えていたものです。
今やCD、ダウンロード、ストリーミングの時代となっては何も関係ありません。

ローリング・ストーンズほどの大物になるとまず廃盤となって、正規のカタログにあるアルバムが手に入らないことなどありません。
音質についてはもともとイギリスのデッカ・レコードからデビューしたので昔から定評がありました。
(クラシック録音の世界ではドイツのグラモフォンと並び有名です)
そして今でも名盤で需要があるため、新しい音楽メディアやリマスター対応が丁寧にされています。
唯一残念なのはドラム、ベースなどの低音の質感が時代によって違うので、そこには時代を感じてしまいます。
でもヴィンテージな音を歴史を踏まえて楽しむことも音楽マニアの正しい姿勢です。

そういえばストーンズの来日公演に行って感じたのは、チャーリーのドラムのバスドラ音がズドーンと地を這うような重い音で鳴っていたことです。
これは現代のロックの音とかSRテクノロジーとかを考えれば、アップデートされて今あるべき音なのですが、素直に「なんか、らしくないなぁ」とも思ったものでした。

アルバム「スティッキー・フィンガーズ」のご紹介です。

演奏

ミック・ジャガー  ヴォーカル 、ギター、パーカッション
キース・リチャーズ  ギター、バッキングヴォーカル
ミック・テイラー  ギター
チャーリー・ワッツ  ドラムス
ビル・ワイマン  ベース

*ゲスト・ミュージシャン
イアン・スチュワート  ピアノ Tr. 1,9
ニッキー・ホプキンス  ピアノ Tr. 2,4
ジム・ディッキンソン  ピアノ Tr. 3
ジャック・ニッチェ  ピアノ Tr. 8
ビリー・プレストン  オルガン Tr. 4,7
ボビー・キーズ  サキソフォン
ライ・クーダー  ギター Tr. 8
ジム・プライス・トランペット  ピアノ Tr. 10
ジミー・ミラー  パーカッション   Tr. 4
ロッキー・ディジョン  コンガ Tr. 4
ポール・バックマスター  ストリングスアレンジ Tr. 2,10

その他 
コーラス  ピート・タウンゼント、ロニー・レイン、ビリー・ニコルズ


曲目
*参考までにyoutube音源とストーンズは動画も豊富なので、曲毎に近い時代のものをリンクさせていただきます。


1,   Brown Sugar  ブラウン・シュガー

キース・リチャーズが新しい発想のもと、5弦ギターでリフを作りました。
今の時代ではフェミニズムやコンプライアンスの観点からこういう歌は絶対作れません、歌えません。
そういえばジョン・レノンもちょっと視点が違いますが「Woman is the Niggar of the World : 女は世界の奴隷か」というすごい歌を歌っていました。(これも名曲です)


2,    Sway  スウェイ

なぜか引きずるようなグルーブのこの曲が一番好きなのです。

3,    Wild Horses  ワイルド・ホース

名曲です。中期までのストーンズにはいいバラードがいっぱいあります。


4,    Can’t Hear Me Knocking  キャント・ヒア・ミー・ノッキング

これも大好きです。なぜかこれとトラック2の「Sway」を合わせてビートルズのアルバム「レット・イット・ビー」の「ディグ・ア ・ポニー」と「アイヴ・ガッタ・フィーリング」雰囲気を思い出します。(個人の感想です)

5,    You Gotta Move  ユー・ガッタ・ムーヴ

元々はゴスペルの曲ですが、ミシシッピー・フレッド ・マクダウェルというブルーズマンが取り上げ、さらにそれをもとにストーンズも取り上げました。泥臭くやっていてこの頃は本当にいいバンドだなと感じます。

6,    Bitch  ビッチ

これもすごい直球のタイトルです。リフ、テンポといいノリノリのまさにストーンズです。これが全然いいと思わない、つまらないという人はローリング・ストーンズとは縁がなかったと思ってください。


7,    I Got The Blues   アイ・ガット・ザ・ブルーズ

ブルーズ 形式の曲ではありませんがメチャ、ソウルフルに歌い上げます。もちろんオーティス ・レディングとかもろに意識していますがストーンズなりの味が出ていて、これがなんともそこら辺のイギリス勢とは違うところです。

8,   Sister Morphine   シスター・モーフィン

高校生の時は気持ち悪い曲だと思っていましたが、歳と共に普通に聴けます。やはりアメリカ人のライ・クーダー 出ないとこのスライドギターの音は出せません。

9,    Dead Flowers  デッド・フラワーズ

カントリー風の曲で、大好きです。単純な歌詞と単純なコードと普通のアレンジなのに全体がひねって聞こえるのはミックのヴォーカルのせいでしょう。そこに奥行きが出ています。


10,   Moonlight Mile  ムーンライト・マイル

日本を意識した曲だそうです。それを置いておいても、アルバム最後を飾る見事なサスティーンというか余韻を残す必殺のストーンズバラードです。

Bitly

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