「永遠のキング・オブ・ラグタイムギター」Rough Guide To Blind Blake : Blind Blake /  ラフ・ガイド・トゥ・ブラインド・ブレイク : ブラインド・ブレイク

 ザ・キング・オブ・ラグタイム・ギターと称される巨匠、ブラインド・ブレイクは盲目のブルーズマンです。基本的にはギター1本で弾き語り、もしくはインストゥルメンタルです。
後世に残した影響はすごいもので、アコースティック・ギターを弾く人からしたら教典です。
ライ・クーダーなども相当深く研究したようで何曲もカバーしています。

ブラインド・ブレイクの生涯は謎に包まれています。出生地もいくつか説があり、フロリダ州ジャクソンビルだったりヴァージニア州ニューポートニューズだったりします。
生涯は生まれつき盲目だったこと以外あまり知られておらず経歴もほとんどわかっておりません。
数年前までは永らく本名はアーサー・フェルプスと言われていましたが、最近の研究で実はそうではなさそうということになってしまいました。

1896年生まれで1934年12月1日ウィスコンシン州ミルウォーキーにてご逝去されました。推定年齢は37歳か38歳です。

写真も1枚しか残っていなくて、大体どのアルバムでも足を組んでギターを抱えた “性格が穏やかになったマイク・タイソン” みたいな表情の写真が使われています。

ブラインド・ブレイクを象徴しているスタイルがラグタイム・ブルース・ギターです。
まずラグタイムと言われるのは、リズムのシンコペーションが強い、軽快なリズムのことです。

歴史的に有名なのはピアニストのスコット・ジョップリンなどです。ラグタイム = 時間のズレという意味もあるので、ピアノでいうと左手のリズムと右手のメロディがずれている、左手がバックビートで裏打ちになるという意味もありそうです。
それをギターに置き換えてピアノのように弾くのがラグタイム・ブルーズになるわけですが、ギターの場合、右手の親指でベースラインをひいてその他の4本で和音やメロディを紡ぎます。

一聴すると軽快な曲が多く、名刺がわりの「ブラインド・アーサーズ・ブレイクダウン」などとても一人で弾いているとは思えないくらいで  “ちょっと何弾いてるかわかんない”  とサンドウィッチマン風にツッコミを入れたくなるほどの鮮やかさです。
軽快でメロディアスな曲を奏でるギターは誰でも “こういう風に弾いてみたい、弾けるるようになりたい” と思わせます。
そして私も含め、世界中のギタリスト志望の無垢な若者を何人も挫折させたことでしょう。
まったく罪な人です。(個人の経験です)

そういうリズミカルな演奏が基本ですので、ブラインド・ブレイクはさほどブルース特有の悲壮感や悲哀などは感じません。スローな曲も多いのですが、夕暮れのしみじみとした切なさみたいな感じで味わい深いものがあります。これは他のカントリーブルーズマンにはあまりない特徴です。

ブレイクはラグタイム・ブルーズを始めた人でもあるのですが、いきなり完成させた大師匠です。
フォロワーはイーストコースト・ピードモントスタイルで有名になるブラインド・ボーイ・フラーやゴスペルに近いゲイリー・ディヴィス、ロックの時代になるとライ・クーダーや元ジェファーソン・エアプレーンでホット・ツナのヨーマ・コーコネンなどがいます。

スーパースターではなく趣味的な、知る人ぞ知るミュージシャンが多いというのもマニア心をくすぐります。

昔から有名で定番のアルバムは「キング・オブ・ザ・ブルース・エントリー2」ですが、手に入りにくくなっています。
最近の技術革新によりS/Nの向上したラフ・ガイドシリーズの「Rough Guide To Blind Blake」もおすすめです。

アルバム「Rough Guide To Blind Blake (ラフ・ガイド・トゥ・ブラインド・ブレイク)」のご紹介です。


曲目
*参考までに最後部にyoutube音源をリンクさせていただきます。

01,   Blind Arthur’s Breakdown    ブラインド・アーサーズ・ブレイクダウン
02,   He’s In the Jailhouse Now ヒーズ・イン・ザ・ジェイルハウス・ナウ
03,   Police Dog Blues    ポリス・ドッグ・ブルーズ
04,   Diddie Wa Diddie    ディディー・ワ・ディディー
05,   You Gonna Quit Me Blues ユー・ゴンナ・クワイト・ミー・ブルーズ 
06,   West Coast Blues    ウエスト・コースト・ブルーズ
07,   Hey Hey Daddy Blues ヘイ・ヘイ・ダディ・ブルーズ
08,   Come On Boys Let’s Do That Messin’ Around カム・オン・ボーイズ・レッツ・ドゥ・ザット・メッシン・アラウンド
09,    I Was Afraid of That, Pt.2 アイ・ワズ・アフレイド・オブ・ザッツ パート2
10,   Georgia Bound    ジョージア・バウンド
11,   Southern Rag サザーン・ラグ
12,   Bad Feelin’ Blues バッド・フィーリン・ブルーズ
13,   That Will Never Happen No More ザット・ウィル・ハップン・ノー・モア
14,   Skeedle Loo Doo Blues    スキードル・ルー・ドゥー・ブルーズ
15,   Doing a Stretch ドゥーイング・ア・ストレッチ
16,   Too Tight Blues    トゥ・タイト・ブルース No2
17,   Sweet Jivin’ Mama スウィート・ジャイヴィン・ママ
18,   Dry Bone Shuffle    ドライ・ボーン・シャッフル
19,   Poker Woman Blues ポーカー・ウーマン・ブルーズ
20,   Righteous Blues ライチャス・ブルーズ
21,   Sweet Papa Low Down    スウィート・パパ・ロー・ダウン
22,   Sea Board Stomp    シー・ボード・ストンプ
23,   Guitar Chimes ギター・チャイムズ
24,   Wabash Rag ワバッシュ・ラグ
25,   One Time Blues    ワン・タイム・ブルーズ


以上がブラインド・ブレイクの演奏です。この後は同時代である戦前の著名カントリーブルーズマンのラグタイムやホーカム・ソングと言ったリズミカルで明るめの曲が並びます。

18,   Georgia Rag ジョージア・ラグ
 (作 Blind Willie McTel )

19,   Mama Let Me Lay It On You ママ・レット・ミー・レイ・イット・オン・ユー
 (作 Blind Boy Fuller )

20,   Cocaine Blues  コカイン・ブルーズ
 (作 Luke Jordan)

21,   Ragtime Millionaire ラグタイム・ミリオネア
 (作 William Moore)

22,   Hokum Stomp ホーカム・ストンプ
 (作 Big Bill Broonzy)

23,   Hang It On the Wall ハング・イット・オン・ザ・ウォール
 (作 Charley Patton)

24,   My Money Never Runs Out マイ・マネー・ネバー・ランズ・アウト
 (作 Banjo Joe)

25,   Old Jim Canan’s オールド・ジム・カナンズ
 (作 Robert Wilkins)

26,   South Caroline Rag (take2) サウス・キャロライン・ラグ
 (作 Willie Walker)

27,   Bow Wow Blues バウ・ワウ・ブルーズ
 (作 The Allen Brothers)

28,   How Come Mama Blues ハウ・カム・ママ・ブルーズ
 (作 Buddy Boy Hawkins)

29,   West Coast Rag ウエスト・コースト・ラグ
 (作 Will Ezel)

30,   Your Baby Win’t Sweet Like Mine ユア・ベイビー・ウイン・スウィート・ライク・マイン
 (作 Papa Charlie Jackson)

31,   Black Dog Blues    ブラック・ドッグ・ブルーズ
 (作 Bayless Rose)

32,   Papa’s ‘Bout To Get Mad パパズ・アバウト・トゥ・ゲット・マッド
 (作 Pink Anderson and Sammie Dooley)

33,   They’re Red Hot ゼイアー・レッド・ホット
 (作 Robert Johnson)

34,   Nobody Knows When You’re Down and Out ノーバディ・ノウズ・フェン・ユア・ダウン・アンド・アウト
 (作 Bessie Smith)

35,   Hokum Blues  (featuring Coley Jones) ホーカム・ブルーズ
 (作 Dallas String Band with Coley Jones)

36,   She’s Your Cook, But She Burns My Bread Sometimes シーズ・ユア・クック・バット・シー・バーンズ・マイ・ブレッド・サムタイムス
 (作 Bo Carter)

37,   Lord I Wish I Could See ロード・アイ・ウィッシュ・アイ・クッド・シー
 (作 Reverend Gary Davis)

38,   Hot Time Blues ホット・タイム・ブルーズ
 (作 William Harris)

39,   Adam and Eve In the Garden アダム・アンド・イヴ・イン・ザ・ガーデン
 (作 Bogus Ben Covington)

40,   Candy Man Blues キャンディ・マン・ブルーズ
 (作 Mississippi John Hurt)

41,   Beggin’ Back ベッギン・バック
 (作 Blind Lemon Jefferson)

みんな個性的で素晴らしい演奏です。カントリーやロックにつながるものも感じられます。興味深いのは最初にアフリカン・アメリカンの間で広まった楽器はバンジョーで、初期のブルーズではバンジョーも使われていたという話があるのですが、23トラックの「マイ・マネー・ネバー・ランズ・アウト」でバンジョー・ジョーのバンジョー・ブルーズが聴けます。

ダウンロードかレコードでしかありませんので、同じ内容ではないのですがが、CDを紹介します。

Bitly

下記、高すぎです。

Bitly

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