「ブルーズ入門 : ミシシッピ・デルタ・ブルーズの開祖」Rough Guide to Charley Patton : Charley Patton / ラフ・ガイド・トゥ・チャーリー・パットン : チャーリー・パットン

 ブルーズを知る上で絶対に押さえておきたい偉大なるブルーズマン、チャーリーパットンについてご紹介します。

「Father of the Delta Blues : デルタブルーズの父」と言われます。
この人がいなければブルーズ が今の形態になることもなく、後輩ロバート・ジョンソンも音楽をやらず、マディ・ウォーターズもいません。
ということはチャック・ベリーも出てこない、そしてローリング・ストーンズも結成されなかった。ということでロックンロールもロックも無かったかもしれません。

さらに小柄で音楽家で演奏して歌う最初のスターだったと思うと、マイルスもプリンスもスモール・フェイセズもエアロスミスもいなかったでしょう。

と、それは言い過ぎです。

そう思えるくらいに後世への影響力絶大です。

(思いっきり雑ですが)
ブルーズの起源については、アフリカから住民が船で運ばれて、アメリカ大陸のニューオリンズに上陸します。
そこから奴隷として買われてアメリカ各地の綿花農場と製材所(プランテーション)などで働かされていました。
そういう人たちが地域ごとに夜に集まって酒を飲んだり、ダンスをしたりする社交場ができました。
そこで楽器を演奏したり、歌ったりすることが得意な人も現れて人気者になっていきます。
その中でも突出して表現がうまい人は伝説として語られ、人伝(ひとづて)に有名になりました。

その最初期の人がチャーリー・パットンです。写真が1枚のみ残されています。

来歴

チャーリー・パットンは1891年(1887年、1894年説あり)ミシシッピ 州、エドワーズに近いハインズ群で生まれ、生涯をほとんどミシシッピ ・デルタのサンフラワー群で過ごしました。
12人兄弟だっとそうです。1897年からドッケリー・プランテーションに引っ越します。
この農場はチャーリーパットンとセットでデルタブルーズ 発祥の地として有名です。

パットンは黒人ですが、インディアンのチョクトー族とのハーフかクォーターだったらしく、(チェロキーとの説もあります)また身長は165cmと小柄でしたが、それに見合わず低い大きな声を持っていました。
最初はヘンリー・スローンという人からギターを習ったとのことです。

1929年6月14日、インディアネ州リッチモンドのゲネット・レコードのスタジオで14曲録音され、パラマウントからリリースされました。
その後、グラフトンのパラマウントのスタジオで2回、レコーディングが行われます。
最後はニューヨークで1934年1月にレコーディングしました。
残っている音源はそれが全てです。

体調不良により最後の録音の1ヶ月後、4月28日にサンフラワー群、インディアノーラ近くのプランテーションで心臓発作のため亡くなりました。
40代前半でした。

シカゴブルーズの重鎮、ハウリン・ウルフことチェスター・バーネットは子供の頃、チャーリー・パットンに憧れて直接音楽の手ほどきを受けたと伝えられています。

チャーリー・パットンの作った、歌った音楽はブルーズ に限定されず、労働歌や宗教歌、フォークソングに至るまで幅広くあります。
ブルーズ も12小節の定型的なもの、スライドギターを使ったもの、「悪い星の下に」風、「フロム・フォー・アンティル・レイト」風、などかなりの原型が見て取れます。

チャーリー・パットンのレコーディングした1930年代は長時間録音など方法が無い時代ですので、音源は全てSP盤を集めたものです。

いろんなアルバムがありますが、内容はあまり変わらず、メリットとしては最近のリリースされたものの方が流石にS/Nが良くなっており、聞きやすい音になっています。

Rough Guide To Charley Patton

アルバム「ザ・ラフ・ガイド・トゥ・チャーリー・パットン・ファーザー・オブ・ザ・デルタ・ブルーズ」のご紹介


曲目
*参考までに最下部に本編とは内容が違いますが、Youtube音源をリンクさせていただきます。

01,   Mississsippi Boweavil Blues ミシシッピ・ボーウィーヴィル・ブルーズ
スライドギターで歌います。ボーウィーヴィルとは綿花につく虫のことだそうです。
すでにビートはロックを感じます。

02,   Down the Dirt Road Blues ダウン・ザ・ダート・ロード・ブルーズ
ブルーズスタンダード「ローリン・アンド・タンブリン」の元祖です。
ボブ・ディランもアルバム「タイム・アウト・オブ・マインド」で「ダート・ロード・ブルーズ」という同じ傾向の曲を演っています。

03,   Pony Blues ポニー・ブルーズ
ブルーズではよく使われるのですが、男女のことを歌っています。

04,   A Spoonful Blues ア・スプーンフル・ブルーズ
スライドギターで歌います。このタイトルはハウリン・ウルフなどへ繋がっていきますが曲調は違います。
このスライド演奏も味わい深いものがあります。

05,   High Water Everywhere (Part 1) ハイ・ウォーター・エヴリフェア パート1
ギターを叩きながらダイナミックな演奏です。

06,   High Water Everywhere (Part 2) ハイ・ウォーター・エヴリフェア パート2
パート1に比べれば若干おとなしめの演奏です。

07,   34 Blues 34ブルーズ
1934年の大恐慌と生活苦を歌っています。ウィリー・ブラウンも歌詞に登場します。

08,   Pea Vine Blues ピー・ヴァイン・ブルーズ
ピー・ヴァインとはえんどう豆のツルという意味なんでしょうが、世界中のブルーズファンはレコードレーベル「P-Vine」を思い出してしまうのでした。

09,   Revenue Man Blues レヴェニュー・マン・ブルーズ
徴収されて、大変な生活の歌です。

10,   Poor Me プア・ミー
可哀想な私、という歌です。スローで味わい深いものがあります。

11,   High Sheriff Blues ハイ・シェリフ・ブルーズ
クリームでも有名な「フロム・フォー・アンティル・レイト」の原型です。

12,   Frankie & Albert フランキー・アンド・アルバート
ミシシッピ・ジョン・ハート、レッドベリー、ボブ・ディランもカバーしたスタンダードの原型です。

13,   Prayer of Death (Part 1) プレイヤー・オブ・デス パート1
信仰の歌です。

14,   Prayer of Death (Part 2) プレイヤー・オブ・デス パート2
パート1に比べるとフリーに歌っています。

15,   Shake It and Break It (But Don’t Let It Fall Mama) シェイク・イット・アンド・ブレイク・イット
こじんまりと始まりますが、徐々に盛り上がります。ノリがすごいです。

16,   Magnolia Blues マグノリア・ブルーズ
悲痛な声で思いを歌ってます。

17,   Circle Round the Moon サークル・ラウンド・ザ・ムーン
朝起きたらベッドの周りにブルーズが、というロバート・ジョンソンにつながる曲です。

18,   Screamin’ and Hollerin’ the Blues スクリーミン・アンド・ホラーリン・ザ・ブルーズ
軽快ではありませんが盛り上がっていきます。
ブルーズを歌う自身を反省するような歌詞です。

19,   Mean Black Moan ミーン・ブラック・モーン
鉄道ストライキの歌です。

20,   Jesus Is Dying Bed Maker ジーザス・イズ・ダイング・ベッド・メイカー
古くから伝わる伝承曲です。

21,   Oh Death オー・デス
タイトル通り、死について歌っています。奥さんとデュエットです。

22,   Heart Like Railroad Steel ハート・ライク・レイルロード・スティール
心が冷たいということなんです。

23,   Walkin’ Blues ウォーキン・ブルーズ
サン・ハウスも歌っていました。ロバート・ジョンソンにもつながります。

24,   M&O Blues M&O ブルーズ
調べてみましたがタイトルの意味もわかりません。ワンコード・ブギです。

25,   All night Long Blues オール・ナイト・ロング・ブルーズ 
ピアノの伴奏で奥様が歌い、チャーリーは掛け合って歌います。

26,   Be True Be True Blues ビー・トゥルー・ビー・トゥルー・ブルーズ
ヘンリー・シムズがヴァイオリンを弾いて歌います。パットンはバッキングです。カントリーの曲に似ています。

27,   Mind Reader Blues マインド・リーダー・ブルーズ
バーサ・リーが歌い、パットンが伴奏します。

28,   Saddle My Pony サドル・マイ・ポニー
これはハウリン・ウルフ様です。ここからはチャーリー・パットンの影響下にあるミュージシャンとなります。

29,   Hobo Blues ホーボー・ブルーズ
これはジョン・リー・フッカー様です。

30,   Gypsy Woman ジプシー・ウーマン
マディ・ウォーターズ様です。

31,   Big Legged Woman ビッグ・レジェンド・ウーマン
ジミー・リード様です。

32,   She Left Me a Mule to Ride シー・レフト・ミー・ア・ミュール・トゥ・ライド
ビッグ・ジョー・ウィリアムス様です。

33,   Fixin’ To Die Blues フィクシン・トゥ・ダイ・ブルーズ
ブッカ ・ホワイト様です。

34,   Canned Heat Blues キャンド・ヒート・ブルーズ
トミー・ジョンソン様です。

もうひれ伏すしかありません。

今では圧倒的にロバート・ジョンソンの方が有名となっていますが、その昔B.B.キングがインタビューでロバート・ジョンソンについて聞かれた時に、ジョンソンに敬意を評しつつもチャーリー・パットンを讃えたそうです。

Bitly
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