「出たぞ赤盤、MALソフト、AIアシストで生まれ変わった衝撃の初期ビートルズだ。赤盤2023年エディション」The Beatles 1962-1967 2023Edition : The Beatles

 このところのリミックス、リマスター業界はヤバい状況です。
このビートルズの最新リマスターアルバムについてなのですが、私は昨日までビートルズのベスト盤を買おうという気はありませんでした。きっとそのうちオリジナル・アルバムのリマスターが出るだろうからそれを手に入れればOK、と思っていました。
しかしここ数年のビートルズの愛情溢れるリマスター仕事はなかなかすごいものがあります。
毎年のようにAIなどの新技術を駆使したリマスターがリリースされている状況です。

今年は「ラバー・ソウル」か「マジカル・ミステリー・ツアー」かと思っていました。
でもなんとビートルズの入門版として有名な、私もここからビートルズに入って耳タコになるまで聞きかじった思い出のある、かの「赤盤」「青盤」です。

どうせならオリジナルアルバムを待つ・・・と我慢しようとしていたのですが、サンプルを聞いてしまいました。そして何より直前にボブ・ディランの「コンプリート・武道館」を聞いて改めてリマスターの成果を見せつけられた状態だったのです。

ボブ・ディランのリマスターは全く新しい音の風景が見えて、新しい体験ができたのです。

そう思うといてもたってもいられなくなり、これは絶対ビートルズの初期のリマスターを聞かなければならない、という脅迫じみた状態になりました。

青盤の方は見る限り、ここ最近のリマスター音源が使われています。「マジカル・ミステリー・ツアー」とシングルリリースのものは2023年リマスターバージョンになっています。
きっと多分そのうち、いや絶対にビートルズの全てのオリジナル・アルバムとパスト・マスターズのリマスターがリリースされるはずです。「青盤」は急ぎません。

(でも待ちきれなくて購入するかもしれません)

ここにきてリマスター分野も新しい次元に入ったかのようです。MAL(Machine Assisted Learning)とかAI Assistedという技術により音の分析が飛躍的に進歩しました。
なので限界はあるもののビートルズ初期のアルバムでの演奏は左チャンネル、リードヴォーカルは右チャンネルというなんともな音源でもマルチトラックに近い状態に分割できるようになりました。
さらにリミックスでは、そのトラックごとの音を磨き込めます。

今まで体験したことのない輪郭のすっきりした音になっています。

さらに当然とも言えるのですが、音楽の安定感を出すために最近のミックスと同様に、ベース、バスドラムなどの低音楽器とメインヴォーカルはほぼ全部のトラックで中心に配置されています。(若干右寄り、左寄りを感じるミキシングもあります)

以上が今までビートルズのレコードを買って、CD化されたら買って、リマスターされたらまた買ってきた人たち、(私も含む)でも驚きを隠せない状態になっている理由です。。
2009年のリマスターは結構衝撃的な音で思わずボックスごと買ってしまったものですが、今回はそれを凌ぐ驚きと成果があります。

いやはやビートルズを、音楽を聴き続けてきた甲斐があったというものですね。

『ザ・ビートルズ 1962年~1966年』 2023エディション (通常盤)(SHM-CD)(2枚組)
【SHM-CD仕様】 50年前に発売されて以来、これらのアルバムは世界中のあらゆる年齢層の無数のリスナーを生涯にわたるビートルズ・ファンへと導いてきた。2023エディションのリリースのために拡張されたこのコレクションは、最初のシングル「ラヴ・ミー・ドゥ」から最後の「ナウ・アンド・ゼン」まで、ザ・ビートルズの全音源から...

演奏

ジョン・レノン  ヴォーカル、ギター他 
ジョージ・ハリソン  ギター、ヴォーカル他 
ポール・マッカートニー ベース他 
リンゴ・スター  ドラムス他 

プロデユーサー ジョージ・マーチン(1966年オリジナル)ジャイルズ・マーチン(2023年版)

2023年版エンジニア サム・オケル、ジェフ・エメリック

*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

CD1:

1. Love Me Do  ラヴ・ミー・ドゥ (2023ミックス)

リンゴのドラムスのバージョンがこの座をやっと奪いました。今までと曲の印象が全く違います。ベースのキレがこんなにすごいなんて,と感涙に震えられます。

2. Please Please Me  プリーズ・プリーズ・ミー (2023ミックス)

初期の有名曲です。ステレオバージョンです。シングルヒットもしました。このミックスは若干左寄りのギターがとてもよく聞こえます。

3. I Saw Her Standing There  アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア (2023ミックス)

昔、聴き始めた頃からシングルカットするのは「ラヴ・ミー・ドゥ」じゃなくてこれにすべきだったのでは、と常々感じていました。
でも当時ファーストアルバムの時点でジョージ・マーチンはビートルズの可能性についてやや懐疑的でした。責任ある立場では冒険はしないで普通の無難な曲でいいと思ったのだと思います。当時この曲は新しすぎたのです。
2023年リマスターを聞くとみんな凝った演奏をしています。手拍子なんかもよく聞こえます。

4. Twist And Shout  ツイスト・アンド・シャウト (2023ミックス)

ジョンの喉が限界で最後の一発勝負で録音した感がよく出ています。
その昔はその時ジョンは発熱していて服を脱ぎ上半身裸で歌ったと言われていましたが、今となっては熱が出ると悪寒がするのでそれはないのでは?と思います。

5. From Me To You  フロム・ミー・トゥ・ユー (2023ミックス)

ヘフナーのベースがこんなに粒立ちよく聞こえる日が来るとは・・・
前曲に続きかなり極端に左右に振ったバックが面白いのです。

6. She Loves You  シー・ラヴズ・ユー (2023ミックス)

ステレオになっています。でも前の曲のステレオ感とは違います。ファンには有名な話でマスターテープのステレオ版は誤って消去(廃棄)され、モノラル音源しかオリジナル・マスターテープは残っていませんでした。

7. I Want To Hold Your Hand  抱きしめたい (2023ミックス)

昔はそんなに好きな曲ではありませんでしたが、改めて聞くとグルーヴ感もあっていい曲です。リズムがどっしりするとイメージが変わります。

8. This Boy  ジス・ボーイ (2023ミックス)

リンゴのテーマとしても有名です。シングルのB面でした。最初、シングルレコードを見た時の邦題はA面「抱きしめたい」とB面「こいつ」でした。中学生ながら変だと思っていました。メロディが美しくこれと似た雰囲気の「イエス・イット・イズ」というこれまた隠れた名曲があります。

9. All My Loving  オール・マイ・ラヴィング (2023ミックス)

スタジオでアルバム「ウィズ・ザ・ビートルズ」録音時に曲が足りなくなってポールが急遽この曲を作り、ジョンがアドリブで超絶3連リズムギターを入れて名曲にしたというのが有名な話です。
ソロを聴いているとジョージのギター志向はカントリーっぽいものです。

10. Roll Over Beethoven  ロール・オーバー・ベートーヴェン (2023ミックス)

ジョージのギターがくっきりしています。今だったらこのギターの音色でのリリースはないだろうという世界です。でもギターを弾いてみるとわかりますが、上手くないとこういう歪みのない音では人に聞かせられません。実力がわかります。

11. You Really Got A Hold On Me  ユー・リアリー・ゴッタ・ホールド・オン・ミー (2023ミックス)

ついにこういう場に出る曲になりました。大好きな曲でビートルズのカバーとしては「プリーズ・ミスター・ポストマン」よりいいと思っています。というか「プリーズ・ミスター・・」はカバーとしてはカーペンターズ・バージョンが素晴らしすぎます。
珍しいことにジョンとジョージで歌っています。

12. Can’t Buy Me Love  キャント・バイ・ミー・ラヴ (2023ミックス)

いきなり歌い出すノリに乗っているナンバーです。アルバムを通して言えることですが、主に右チャンネルのジョージのギターがメチャくっきり聞こえます。

13. You Can’t Do That  ユー・キャント・ドゥ・ザット (2023ミックス)

その昔、海賊盤のライブでよくよく聴きました。オープニングに演奏していたイメージがあります。
ポップスとは違うドスのきいたかっこいい曲です。

14. A Hard Day’s Night  ア・ハード・デイズ・ナイト (2023ミックス)

イントロからして今回のミックスは新鮮な気持ちで聴けます。最後にみんなで走って逃げていくようなフレーズが好きです。

15. And I Love Her  アンド・アイ・ラヴ・ハー (2023ミックス)

ビートルズを聴き始めた頃はいい曲だと思っていましたが、今では特に・・・というかいつの頃からか歌謡曲にしか聞こえなくなりました。多分作者のポールは最初から他のメンバーよりファン層を広げるとか、よりポップスのエンターテインメント性を意識していたのだと思います。

16. Eight Days A Week  エイト・デイズ・ア・ウィーク (2023ミックス)

フェイドインしてくるイントロが印象的です。アルバム「フォー・セール」は全体的に硬派な感じで好きでした。

17. I Feel Fine  アイ・フィール・ファイン (2023ミックス)

最初の偶然のフィードバック音が有名です。
リマスターではこの曲のみ、ギターのパワーが足りないと感じるのは私だけでしょうか。音が細くなりました。

18. Ticket To Ride  涙の乗車券(ティケット・トゥ・ライド) (2023ミックス)

カーペンターズのカバーの影響か昔はタイトルに似合わず、ヘビーな曲だと勝手に思っていました。今聞くといい感じです。
リズムに遠近感が出てきました。

19. Yesterday  イエスタデイ (2023ミックス)

バックの弦楽4重奏が若干抑えられているような気がします。しかもなんとステレオになっています。まるで弦楽4重奏をバックにギターを弾きながらそこで歌っているような感じです。この方が断然いいと思います。

CD 2:

1. Help!  ヘルプ (2023ミックス)

必殺のコーラスアレンジです。カッコ良すぎます。
「ハード・デイズ・ナイト」同様、みんなで逃げ去るようなアルペジオフレーズが出てきます。

2. You’ve Got To Hide Your Love Away  悲しみはぶっとばせ (2023ミックス)

ジョンがボブ・ディランの影響で書いた曲です。歌い方までちょっと意識しています。

3. We Can Work It Out  恋を抱きしめよう (2023ミックス)

さすがはポール・マッカートニーと思わせる珍しい曲調で、似ている曲がないような気がします。

4. Day Tripper  デイ・トリッパー (2023ミックス)

中学生の時、とてつもなくかっこいい曲だと思っていました。このリミックス盤の「アイ・フィール・ファイン」を聴いた時、この曲もそうかと不安だったのですが、安心しました。ジョンとジョージのギターは迫力が増して荒ぶっています。

5. Drive My Car  ドライヴ・マイ・カー (2023ミックス)

「ラバー・ソウル」の冒頭を飾るアイドル脱却宣言です。女性ファンは「あのポール様がナンパの歌を・・・」とびっくりしたと思います。
サウンドの迫力が増した要因はポールのリッケンバッカー、4001ベースの使用です。

6.Norwegian Wood (This Bird Has Flown)  ノルウェーの森(ノーウェジアン・ウッド) (2023ミックス)

シンプルな構成ですが、奥行きを感じさせる曲です。今ではノルウェーの森ではなく、ノルウェー製の家具のことというのが一般的です。

7. Nowhere Man  ひとりぼっちのあいつ (2023ミックス)

初めて聴いた時、「ラバー・ソウル」らしくないと思いました。「ヘルプ」あたりにある曲のイメージです。ペアでザ・フーの「ハッピー・ジャック」を思い出します。

8. Michelle  ミッシェル (2023ミックス)

アルバム「ラバー・ソウル」にはポールの「ミッシェル」とジョンの「ガール」が入っています。思うにポールは芯があって、ジョンはイメージの広がりを感じさせるナンバーです。

9. In My Life  イン・マイ・ライフ (2023ミックス)

今となってはビートルズの中でも屈指のカバー数を誇っていると思われます。名曲です。

10. If I Needed Someone  恋をするなら (2023ミックス)

昔はそんなに好きな曲ではありませんでした。ジョージが12弦ギターを使ってみたかっただけ、などと言われていました。
変わった曲調ですが、フォークロックといえばすんなり入ってきます。

11. Girl  ガール (2023ミックス)

ジョンの世界観がよく表されています。

12. Paperback Writer  ペイパーバック・ライター (2022ミックス)

ポールも甘いだけのラブソングはもういや、もうたくさんという宣言です。

13. Eleanor Rigby  エリナー・リグビー (2022ミックス)

アルバム「リヴォルヴァー」のポールは異次元の音楽家です。

14. Yellow Submarine  イエロー・サブマリン (2022ミックス)

ジョンが歌っているヴァージョンもあるようですが、やはりこの曲はリンゴでないと、と思わせます。

15. Taxman  タックスマン (2022ミックス)

アルバム「リヴォルヴァー」のオープニングを飾るナンバーです。サウンドからして、俺たちは今までのビートルズじゃねえぜ、宣言です。この後のアルバム「リヴォルヴァー」からの選曲は昨年リリースのデミックス・バージョンと同じです。

16. Got To Get You Into My Life  ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ (2022ミックス)

ポールがブラックミュージックを意識して作った曲です。

17. I’m Only Sleeping  アイム・オンリー・スリーピング (2022ミックス)

ジョンらしい曲です。皮肉った感じがザ・キンクスにも通じます。

18. Here, There And Everywhere  ヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア (2022ミックス)

ポールはすごい才能を見せつけてくれました。

19. Tomorrow Never Knows  トゥモロー・ネバー・ノウズ (2022ミックス)

ジョンが方向転換を明確にした曲です。斬新なアイデア満載で、リリース時音楽界は衝撃を受けました。

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