さて、ライトニン・ホプキンスと並んで超個性的、40年代から活躍し60年代以降のブルーズシーンの中心人物として活躍し、ロック界からも多大なるリスペクトを受けたブルーズマン、ジョン・リー・フッカーについて語らないわけにはいきません。
彼のスタイルもまた追随を許さないほど強力でした。
特に初期の頃はギター1本での弾き語りです。
しかもストンプと言われる足でリズムをとりながら歌います。
それに曲の構成が12小説AAB形式などの起承転結があるものではなく、ワンコードブギと言われる1つのコードで延々と歌をたたみかけます。
一人なので演奏はぶ厚くはないですがリズミカルというかファンキーなのでブギと名付けられました。
きっと聴衆は酒場では酔って踊りながら集団トランス状態になっていったことでしょう。
そういうところでも大人気だっと思われます。
なのでジョン ・リーの生み出すブギのノリはロックとも非常に親和性が高く、ロックンロールとも近いものがあります。
長生きできたこともあってライ・クーダー、ヴァン・モリソン、キャンド・ヒート、ピート・タウンゼントなどとコラボレーションしました。
来歴
生年月日は諸説あり、それによると1912年から1923年までの間、公式のは1917年と記載されますが、本人は1920年生まれと語っています。
ミシシッピ 州で生まれていますが詳細はこれまた諸説あります。
兄弟も9人説、11人説と多様です。
フッカー兄弟はホームスクーリングという制度で、自宅で(多分)教会の神父さんから教育を受け、宗教的な歌だけ聞くことを許されたそうです。
ジョン・リーはそういう中で母親の再婚相手である歌手ウィリアム・ムーアという人物から音楽を知りました。
またトニー・ホリンズという妹の彼氏からギターを貰ってブルーズ を習いました。
その中にはブルーズとロックンロールの架け橋となるべく曲、「キャットフィッシュ・ブルーズ」「クロウルキングスネーク・ブルーズ」などがあったようです。
14歳の時に家出をして、その後は戻ることはありませんでした。
最初はテネシー州メンフィス に住み演奏活動をして、1943年にはフォードの工場で働くため、デトロイトに移ります。
デトロイトのクラブで演奏するうちに評判となり、より大きな音を求めてエレキギター を購入します。
工場で働いていた時期、モダーン レコードからヒット曲「ブギ・チレン」をリリースしますがこの時代のブルーズ界あるあるで、不平等契約が当たり前のためミュージシャンの手元にはほとんど入りません。
そこでジョン・リーは生活のため前払金をもらっていろんな名前を使っていろんなレーベルでレコーディングしちゃいます
1950年代はジョン・リー、ジョン・リー・クッカー、テキサス・スリム、バーミンガム・サム、ブギー・マンなどの名前で録音しました。
しかも一晩でアルバム1枚分くらいレコーディングするなどやっつけ仕事が多いのですが、中にはそれでも評価の高い優れているものもあります。
1960年代に入ってからはアメリカン・フォーク・ブルーズ・フェスティバルの参加で表舞台に立ち、アルバム「ディンプルズ」などで成功し、キャンド・ヒートとの「フッカー・アンド・ヒート」などでロックミュージシャンとの付き合いも多くなりました。
80年代には映画「ブルーズ・ブラザーズ」にも出演し注目を集めます。
カルロス・サンタナ、ボニー ・レイットなどと「ヒーラー」というアルバムをヒットさせています。
このように後期は順調な音楽活動をして2001年6月21日、カリフォルニア州ロスアルトスの自宅で永眠されました。
紹介するのは1949年デビュー曲「ブギ・チレン」から始まるモダーン ・レコードの1954年までのヒット曲を集めた「ザ ・グレート・ジョン・リー・フッカー」です。
2008年12月にP-Vine Recordからリリースされました。
音源は古いのですが、最近のリマスターということもあり、音質がかなり改善されています。
かるく泥沼に浸れます。
アルバム「ザ・グレイト・ジョン・リー・フッカー」のご紹介です。
私の持っているCDは上記のものですが、オーディオソフトだと下記のジャケットになっています。
曲目
*同じ内容ではありませんが参考までにyoutube音源と最後部に初期のジョン・リー・フッカーの動画をリンクさせていただきます。
1, Boogie Chiren ブギ・チレン
ジョン・リー・フッカーといえばこの曲です。音楽的な起承転結など無視してひたすらワンコードで突っ走ります。
2, Sally Mae サリー・メイ
12小節形式ですがコード感がありません。独特です。
3, Hoogie Boogie フーギー・ブギ
得意のワンコードブギ炸裂です。完全にジョン・リーの世界です。「ブギ・チレン」よりツッコミが激しいのです。
4, Hobo Blues ホーボー・ブルーズ
カントリーブルーズですがブラインド・ウィリー・ジョンソンも感じます。
5, Weeping Willow Boogie ウイーピング・ウィロー・ブギ
ジャズでも同じタイトルの綺麗なメロディの曲「柳よ泣いてくれ」がありますが、これは得意のブギスタイルです。もしかしたら流行っている単語を勝手につけたくらいのことかもしれません。
6, Drifting From Door To Door ドリフティング・ドア・トゥ・ドア
カントリーブルーズです。女にふられてどうしようも無くなっている歌です。
7, Crawling Kingsnake クローリング・キングスネイク
最初に教わったブルーズの曲だそうです。そうかなるほどなあ、と納得させられます。
8, Woman in My Life ウーマン・イン・マイ・ライフ
ローリン・アンド・タンブリン風の曲です。ブギ風に演ってます。
9, Howlin Wolf ハウリン・ウルフ
なかなかアバンギャルドなギターソロが聞かれます。個性的です。トーキングブルーズ風でもあります。
10, Playing The Races プレイング・ザ・レイシズ
フリーキーなブルーズでこの人しか出せない味わいです。なんか唐突に終わります。
11, Let Your Daddy Ride レット・ユア・ダディ・ライド
このようなノリがマジック・サムとかに引き継がれます。すごい曲です。
12, Queen Bee クイーン・ビー
マディ・ウォーターズにハニー・ビーとかキング・ビーとか出てきますが、これもそういう流れのブルーズだと思います。
13, Wednesday Evening ウエンズデイ・イヴニング
独特の間が味わえる曲です。
14, I’m in The Mood アイム・イン・ザ・ムード
メランコリックなタイトルですがこの声は何なのでしょうか。一人ユニゾン状態です。
15, Tease Me Baby ティーズ・ミー・ベイビー
この中にあっては珍しく、妙に明るく感じる曲です。
16, Turn Over A New Leaf ターン・オーバー・ア・ニュー・リーフ
これもまたフリーキーなブルーズです。
17, Rock House Boogie ロック・ハウス・ブギ
また出ました、一人合唱。ビートがロックです。
18, Too Much Boogie トゥー・マッチ・ブギ
ストンプビートにのせたトーキングブルーズです。エコー感がすごいです。
19, Need Somebody ニード・サムバディ
シカゴブルーズにもつながるスローブルーズです。
20, Gotta Boogie ガッタ・ブギ
はい、トレードマークのブギです。若干粗めというか雑な演奏がこの人にはまたいいのです。
21, Jump Me One More Time ジャンプ・ミー・ワン・モア・タイム
カッティングしながら単音ソロなどを弾いてますが、本当に一人か?と思ってしまいます。声が他の曲と違います。
22, Down Child ダウン・チャイルド
これはヒリヒリするスローブルーズです。個性的なツッコミギターが堪能できます。これがロック界でも受ける訳です。
23, Bad Boy バッド・ボーイ
おどろおどろしく始まります。しばらくするとギターと声のユニゾンによる自由すぎる展開が待ってます。
24, Please Take Me Back プリーズ・テイク・ミー・バック
ロックンロール全開のバックにトーキングブルーズが絡みます。
以上、無二の個性を放つブルーズマン、ジョン・リー・フッカーでした。
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