「ニール・ヤングを代表する名曲『Heart of Gold=孤独の旅路』を含む名盤です。以降何十年も変わらない、ブレない姿勢の本質がここにあります。」Harvest : Neil Young / ハーヴェスト : ニール・ヤング

 こちらはニール・ヤングを代表する名盤の一つである1972年リリースの「ハーヴェスト」です。

アルバム的には前作「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」と同じ時代の一対になっているようなアルバムです。

アメリカ、イギリスなどでの1位を含め全世界でヒットチャートを席巻しました。

1970年代のニール・ヤングはCSN&Yの活動と相まって大変充実した時代でした。

そしてこのアルバムは2015年グラミー賞の殿堂入りをしています。音楽遺産となっている次第です。

長い音楽歴を持つニール・ヤングです。
彼の持つ音楽感は独特で他の人ではなかなか表現できないような境地も感じます。

スタイルも時代によって様々でフォークの弾き語りからカントリー、パンク、ロカビリー、グランジ的なハードロックまで、ロックのスタイルをほとんどやっています。(全て成功しているとは言いません)

そして時々、アメリカーナの原点回帰的な視線で自然や市井の人々の生活を描きます。

表に出る名曲と同時に隠れた名曲と感じるもものが時々現れるのも特徴で、そういう楽曲群はジャンルを問わずいろんな人にカバーされています。

そういうニール・ヤングが彼の気持ちを素直に音楽にしたというか、彼の人生観をまとめたような曲がこのアルバム「ハーヴェスト」に収録された「ハート・オブ・ゴールド、邦題 : 孤独の旅路」です。

大概のミュージシャンがこういう歌を歌うと「何をこの人ナルシストぶってんた・・・」などと逆に反感を覚えてしまうようなことも多いのですが、ニール・ヤングが歌うと説得力が違います。

さらにすごいことに彼の音楽歴が長くなるほどのにこの曲は重みを増して、リアリティが格段に上がってきてしまっています。

ニール・ヤングは2024年の今でも現役でオリジナルアルバムをリリースし続けています。
彼の何も飾らず、全てを曝け出したようなライブ映像を見ていると一生を賭けて「ハート・オブ・ゴールド」の探究を実践し続けているのが確認できて感慨深いものがあります。


そういう例をひとつ紹介します。
1992年にニューヨークのマジソン・スクエアー・ガーデンでボブ・ディランの30周年記念コンサートが開催されました。
参加ミュージシャンは言い出せばキリがないほど豪華です。
ハウスバンドはブッカーT& The MG’sのメンバー主体で他にドラムはジム・ケルトナー、音楽監督はG.Eスミスが仕切っていました。

コンサートの中盤、シニード・オ・コーナーが「アイ.ビリーヴ・イン・ユー」を歌う予定で登場した時、大ブーイングが発生します。
直近のテレビ番組でボブ・マーリーの「ウォー」を歌って最後にヨハネ・パウロ2世の写真を破くというパフォーマンスをしたためです。

ブーイングが止まらないため、オ・コーナーはバンドを制止してアカペラで再度「ウォー」を歌いました。
そしてクリス・クリストファーソンに抱き抱えられながら泣き崩れて退場しました。

その後出てきたのがニール・ヤングです。

彼は何事もなかったかのようにひたすら全力で「親指トムのブルーズのように」と「見張り塔からずっと」を演奏します。

若かった私は当初、シニード・オ・コーナーのパフォーマンスも感慨深かったものです。

しかしそれから30年経過した今改めて見直すと、プロのミュージシャンとは、とか音楽家は音楽で主張すべきだ、という視点でニール・ヤングはあそこに居たのだということがわかります。

何も語らず態度で示していました。

映像で鬼気迫る「見張り塔からずっと」の演奏が確認できます。
これを見ているとなぜかディランの「ユダ発言事件」の時の「ライク・ア・ローリング・ストーン」を思い出してしまうのでした。
改めてそういう人なのだと思う次第なのです。

ニール・ヤングの力技による引き戻しのおかげでディランの30周年を祝うイベントは無事続けられました。

ちなみににこの時からすでにニール・ヤングさんは頭頂の禿げかけたおっさんになっていますが、本気のおっさんは迫力が違います。
こちらでご確認ください。

シニード・オ・コーナーです。

https://www.youtube.com/results?search_query=neil+young+bob+dylan+30th+anniversary+sinead+o%27co

ニール・ヤングです。

https://www.youtube.com/results?search_query=neil+young+bob+dylan+30th+anniversary+all+along+the+watchtower


アルバム「ハーヴェスト」に戻ります。
このアルバムライブのエキサイティングとは違ってはほのぼの感が良いのです。

ただ、ほのぼのした中にも辛辣なリアルがところどころで登場します。

また音質が独特です。録音レベルは高くなく、柔らかい音質です。

個人の感想ですが、ドラムの音で始まりますがこの柔らかいドラムの音を聴いているとめちゃくちゃアナログっぽい良さを感じます。

レコードで聞くべきアルバムのような気がしてなりません。

もちろんデジタルリマスターでもそれなりにいい感じにはなっているのですが、いい音とか悪い音ではなく空気感がアナログな世界なのです。
そして古臭いものではなく不滅の音だと思ってしまいます。

そういうことも含め、あのもの悲しげなヴォーカルと合わせてニール・ヤングの世界であり続けています。

アルバム「ハーヴェスト」のご紹介です。


曲目と演奏
*参考までにyoutube音源をリンクさせていただきます。

1,   Out on the Weekend 週末に

ニール・ヤング  ギター、ヴォーカル
ベン・キース  ペダル・スティール・ギター
ジェームス・マクマホン  ピアノ
ティム・ドラモンド  ベース
ケニー・バトリー  ドラムス
リンダ・ロンシュタッド  ヴォーカル
ジェームス・テイラー  バンジョー、ヴォーカル

レコーディング  ナッシュビル クアドラフェニック・サウンド・スタジオ
プロデューサー  エリオット・メイザー、ニール・ヤング

ドラムの音がたまりません。ハーモニカものんびりした感じ、スティールギターがいい味出してます。

2,   Harvest ハーヴェスト

ニール・ヤング  ギター、ヴォーカル
ベン・キース  ペダル・スティール・ギター
ジョン・ハリス  ピアノ
ティム・ドラモモンド  ベース
ケニー・バトリー  ドラムス

レコーディング  ナッシュビル クアドラフェニック・サウンド・スタジオ
プロデューサー  エリオット・メイザー、ニール・ヤング


サウンドは引き続きのどかな感じもしますが、歌詞を見ると暗雲が立ち込めてきています。タイトル「収穫」の意味は作物の収穫のことではありませんでした。

3,   A Man Needs a Maid 男は女が必要

ニール・ヤング  ピアノ、ヴォーカル ウィズ ロンドン・シンフィニー・オーケストラ

レコーディング  ロンドン バーキング・タウン・ホール
プロデューサー  ジャック・ニッチェ

オーケストラをバックに歌います。タイトルを直訳すると「男にはメイドが必要」、今のご時世では問題になりそうなタイトルです。

4,   Heart of Gold 孤独の旅路

ニール・ヤング  ギター、ヴォーカル
テディ・アーウィン  ギター
ベン・キース  ペダル・スティール・ギター
ジェームス・マクマホン  ピアノ
ティム・ドラモンド  ベース
ケニー・バトリー  ドラムス
リンダ・ロンシュタッド  ヴォーカル
ジェームス・テイラー  ヴォーカル


レコーディング  ナッシュビル クアドラフェニック・サウンド・スタジオ
プロデューサー  エリオット・メイザー、ニール・ヤング

私は黄金の心を探し続ける、そして歳をとっていく。という歌です。

5,   Are You Ready for the Country 国のために用意はいいか

ニール・ヤング  ピアノ、ヴォーカル
ベン・キース  ペダル・スティール・ギター
ジャック・ニッチェ  ペダル・スティール・ギター
ティム・ドラモンド  ベース
ケニー・バトリー  ドラムス
デヴィッド・クロスビー  ヴォーカル
グラハム・ナッシュ  ヴォーカル

レコーディング  ブロークン・アロー・ランチ バーン
プロデューサー  エリオット・メイザー、ニール・ヤング

Country を国と解釈するか田舎と解釈するかでだいぶ意味が違ってきます。

6,   Old Man オールド・マン

ニール・ヤング  ギター、ヴォーカル
ベン・キース  ペダル・スティール・ギター
ジェームス・マクマホン  ピアノ
ティム・ドラモンド  ベース
ケニー・バトリー  ドラムス
リンダ・ロンシュタッド  ヴォーカル
ジェームス・テイラー  バンジョー、ヴォーカル

レコーディング  ナッシュビル クアドラフェニック・サウンド・スタジオ
プロデューサー  エリオット・メイザー、ニール・ヤング

この曲も名曲です。シングルカットしてヒットしました。老人へ「私の人生を見てください、あなたと同じだ」という歌詞はなかなか深いものがあります。

7,   There’s a World 世界がある

ニール・ヤング  ピアノ、ヴォーカル ウィズ ロンドン・シンフィニー・オーケストラ

レコーディング  ロンドン バーキング・タウン・ホール
プロデューサー  ジャック・ニッチェ

これもオーケストラをバックに歌う曲です。最初は重苦しい感じもしますが途中から爽やかな方向へ展開します。でも・・・

8,   Alabama アラバマ

ニール・ヤング  ギター、ヴォーカル
ベン・キース  ペダル・スティール・ギター
ジャック・ニッチェ  ピアノ
ティム・ドラモンド  ベース
ケニー・バトリー  ドラムス
ステファン・スティルス  ヴォーカル
デヴィッド・クロスビー  ヴォーカル

レコーディング  ブロークン・アロー・ランチ バーン
プロデューサー  エリオット・メイザー、ニール・ヤング

これもニール・ヤングの一面であるという歪んだギターサウンドが登場します。ロック的に隠れた名曲です。

9,   The Needle and the Damage Done ダメージ・ダン

ニール・ヤング  ギター、ヴォーカル

レコーディング  ロイス・ホール UCLA
プロデューサー  ヘンリー・ルゥイー、ニール・ヤング

ライブ音源でアコースティックギターの弾き語りです。薬物中毒についての怒りと悲しみです。

10,  Words (Between the  Lines of Age) 歌う言葉

ニール・ヤング  ギター、ヴォーカル
ベン・キース  ペダル・スティール・ギター
ジャック・ニッチェ  ピアノ
ティム・ドラモンド  ベース
ケニー・バトリー  ドラムス

レコーディング  ブロークン・アロー・ランチ バーン
プロデューサー  エリオット・メイザー、ニール・ヤング

最後はエレクトリック・セットで終わります。言葉(年齢の境界線)という暗示めいたタイトルです。ニール・ヤングのたどたどしいリードギターが返って説得力があります。余韻を残しながらフェイドアウトして終わります。

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